凄い自転車をお預かりしています。
サンプレックスのフォーク式リヤディレーラーが付いています。
この変速機はCAMBIO工房さん発行の変速機データブックによると「セレクション」と言う名称で1930年代製との事です。変速機の年代=自転車の製造年では無い事もあると思いますが、80年程度は前に作られた物である可能性が高いでしょう。
もう博物館レベルの自転車ですね。先日見学したシマノ自転車博物館にも、形は若干違いますがこの変速機を装着した自転車が展示されていました。
フォーク取り付け部が異なるのと、テンションプーリーがこちらは丸です。
で、取り敢えず変速機の状態を確認した所、テンションアームの取付けがグラグラでまともにテンションが取れず変速できません。取付ナットを締め込むとアームが動かなくなります。分解した所、ワッシャーが一枚アームの反対側に入っていてしまっています。
シャフトは段付きに成っていてナット締付力を段差+ワッシャーで受けて、ナットをきつく締めてもアームは自由に動ける構造ですが、これを組み立てた人はその構造が理解できなかったようです。
私ももちろんこの変速機を弄るのは初めてですが、部品の形状の意味を考えれば割合簡単に組み立てられる変速機です。(済みません、写真は撮ってません)
アームのぐら付きは改善されたのですが、テンションプーリーもグラグラでチェーン外れ防止のガイドに当たってしまい、ガラガラとうるさい音が出ています。
プーリーを分解した所、ベアリングの径が小さくて玉押しを一杯に締め込んでもグラグラが直りません。実測直径2.84mmと規格の分からない謎の小玉です。
ダメもとで1/8インチ玉(Φ3.175mm)を入れて見た所、左右の玉押しが面一に成るまで締め込むとガタが消える締め具合でサイズ的にピッタリです。但し数が14個なのが気に成りますが、グラグラしているよりはましです。ベアリングの数は偶数の場合は同じ位置に居続けるので良くないと聞いた事が有ります。奇数だとプリ―の回転と反対向きに球が移動するのだとか。
このプーリー部は結構シビアな寸法設定で、チェーンラインを守るとクランク、プーリー取付ナット、外れ防止ガイドが隙間1mmも無い位の設定に成ります。
写真は角度の関係で当たっているように見えますが実際には隙間は有り、異音は出ていません。
使うクランクによってはもう少し隙間が出ると思いますが、このクランクはギヤとの隙間がとても狭い設定の物です。
フォーク部分も取り付け位置が悪くうまく変速できませんでしたが、なるべくスプロケットに近い位置(トップギヤに入れた時にフォークの付け根とチェーンが当たらないぎりぎり)にした所、何とか変速できるようになりました。
所でこの変速レバーは台座側にスリットがあり、レバーの板状突起が嵌まる様になっています。
調整の初期はここが嵌まった時に変速する設定に調整しようと思いましたが、それでは全く変速してくれません。フォーク式は今の時代の変速機では信じられない位のオーバーストロークを必要とします。
つまり変速時はレバーをスリットよりも大きく倒します(上の写真)
するとフォークはチェーンを強く押します。
この写真はロー側へ押しています(右から左へ)。そしてチェーンはローギヤ(写真左側)へ掛かるのですが、そのままの位置ではフォークとチェーンは接触したままでガラガラとうるさい音がします。
そこでレバーを操作してスリットにレバーを嵌めると
フォークの位置がチェーンと当らない場所に移動して止まるので異音が消えます。
レバー台座のスリットは見た目がフェラーリのシフトの様ですが、目的は変速のインデックスでは無く、チェーンに当たらないフォークの位置決めの為でした(このシフトレバーはフリクションで止まる様に出来ていないので、スリットに嵌めないと変速機に引っ張られて倒れてしまう)。
以上の整備で変速できるようになりました。変速性能は思ったよりも悪くないです。街乗りでは変速に気を取られ走行に支障をきたす(ながらスマホレベルの)かなと思っていましたがそこまで悪くは無さそうです。考えて見れば現行のフロントディレーラーもフォーク式ですから・・・。
でも、これでサイクリングをしたいとは絶対に思えません。
ブレーキを修理して外を走れるように成ったらまたUPします。