ずいぶん時間が掛かってしまいましたがようやく完成しました。

前回も書きましたが昔、冬のヨーロッパで行われていた六日間競技のなかのマディソン(アメリカンチームレース)用の自転車をモチーフにしました。

特徴は長いステム、クリテリウムタイプハンドル、大きな歯数のチェンリング、ラージフランジハブ等でしょうか。

この自転車はオーナーの方から普段使いで一般公道を走れるようにとのリクエストで、実際に競技場等での走行は無いので、見た目の”只者では無い感”を重視しました。

ポイントはステム突き出し110mm、チェンリング53T。

ステムは100mmでは迫力不足でした。チェンリングは48T前後では「セルキュ」や「メルクス」っぽく有りません。

 

部品構成は70年代後半の国産部品を主に使いました。エベレストレコードなので普通はカンパフルセットで良いと思いますが、このフレームのエンドが8mmシャフト用なので、ハブが国産に限定されます。すると他の部品も国産でと言う事になります。この辺りは「コルサの毎日がヒルクライム」さんのブログを参考にさせて頂きました。

大まかな部品構成は

ヘッド小物

シマノ ジュラエース  初期型鉄製ピスト用

 

ハンドル 

サカエ ロイヤル978  クリテリウムタイプの国産バー。「追憶のカタログ展」で著名なGAMIさんのホームページで知りました。イタリア製なら3TのSLジモンディーを使おうかなと思いましたが国産縛りにしました。

かなり悩んだのが、端末部を15mmほどカットして、現状よりももう少し下に向けた方がすっきりとスマートに見えるのですが、迫力は減ります。結局そのままにして置いて暫く経ってからから再考することにしました。

 

ステム

日東NPⅡNJS  時代的には少し新しくなりますが形状的にはチネリ1Aタイプなので違和感は有りません。

 

ハブ

サンツアーシュパーブ  カンパラージにそっくりな楕円穴開きタイプです。NJSマークは入っていません。六日間レースの雰囲気を醸し出しています。

 

リム

スーパーチャンピオン赤ラベルパイプリム  唯一の外国部品。このポリッシュの光沢と角の丸みが国産には有りません。形の雰囲気で選びました。

 

サドル

フジタ シームレスプロフェッショナル革張り  先日ブログにUPしたものです。

 

シートピラー

スギノ マイティーNJS  国産ならこれしか無いですね。

 

クランク

スギノスーパーマイティーNJS  付けて見たらマイティーコンペより似合うと思いました。

 

BB

ハッタ R9000NJS  スプロケットにフリーを使うのでチェンラインを考慮してこれにしました。

 

チェンリング

スギノ スーパーマイティーMCVD 3/32(薄歯)  只者ではない感を演出する立役者。削り出しギヤ板の迫力でこれにしました。

 

ペダル

極東 プロエーストラック ステンレスプレート  ロードは三ヶ島も良いのですが、トラックは極東が良いと思ってしまうのは何故でしょうか?

 

トークリップ・ストラップ

三ヶ嶋製現行品

 

スプロケット

3/32フリー  110mmエンドへの取り付けは少し細工が必要でした。

 

チェーン

KCM 3/32  例の黒い奴

 

以上の様な感じです。

 

ちなみにフレーム塗り替え前の状態を少し紹介しておきます。

色は青と言うよりは紫に近い感じでした。ヘッドラグ、シートステーの蓋(二本巻き部)とエンドがメッキ出しになっていました。

シートチューブの紋章型貼マークはかなり傷んでいて、周囲に何箇所か凹みも有りました。

今回はこの状態のフレームのみの持ち込みで、全てお任せするので格好の良いトラックレーサーを組んで欲しいとのご依頼でした。

再塗装するか悩んだのですが、この色では競輪仕様しか似合わなくて、それではポジション的に街乗りには使い辛い事と、ツチヤトレィディング様がオリジナルデカールを未だお持ちとの事でしたので塗り替える事にしました。せっかくのエベレスト・レコードと言う良い素材なので出来る限りの事はやりたいと思いました。

結果的に塗り替えて大正解でした。

 

最終形状のご紹介。

街乗りですので当然ブレーキは必須です。

基本的にはダイアコンペのピスト用なのですが、下記の二点を変更しました。

1,フロントキャリパーをシマノのクラリス?クラスの銀色塗装品と交換

  ダイアコンペオリジナルは色が黒または光沢シルバーのアルマイトの二種類るのですが、取り付けてみる

  と両方とも存在を主張してしまいます。

  ピストのブレーキは本来は無い物なので見えないのがベストなのですが、そんなことは当然できないので

  今回はフレームと同色のシマノ製キャリパーにして目立たなくしました。

2,レバーをテスタッチの補助レバーと交換

  これは取り立てて言う程でも無い事ですが、ダイアコンペ附属のレバーは簡易型なので高級感のあるも

  のに変えました。いくら無い物と言っても簡易型ではちょっと・・・。

 

この自転車は少しの間当店に展示してあります。ご覧になりたい方は早めにご来店いただくと良いかもしれません。

 

以上ですが、今回の自転車はエベレストレコードと言う名車を自分の好きに組み立てる事が出来て、本当に自転車屋冥利に尽きると思いました。