5月3日(火)

 今日は憲法記念日です。

 先月の27日に参議院憲法審査会で会派を代表して以下の通り意見表明しました。

 

 「今国会で、この審査会はこれまで3回開かれてきました。前国会まで長らく「開かずの扉」で固く閉ざされてきた当審査会において、憲法第56条第1項を中心に条文についての具体的な議論が深まったことは一定の評価をいたします。そして本日このように、具体的なテーマで総括的な意見表明が行われることは、大きな意義があると考えます。

 

 しかしながら、一つのテーマについて議論を終えようとしているのに、意見の取りまとめが行われないのは、きわめて遺憾です。議論を重ねた後、一つの結果を導き、それを新たな制度改正などにつなげていくべきです。ただ意見を述べ合っているだけでは意味がありません。意見集約をせず、言い放しで終わるなら、高い税金をかけた「大いなる井戸端会議」だ、と揶揄されてもしかたありません。

 

 この審査会に参加している多くの会派の間に、参議院選挙を前に「できれば憲法を争点化したくない」という思惑があるのなら、大変由々しきことです。選挙前だからこそ、国民の前であるべき憲法を論じ合い、それに向けてどうすべきか、真摯な議論を重ね、結論を見出していくことが重要です。

 

 そのためにも、憲法上の論点について一定の考え方を示すという機能を、この審査会が積極的に果たしていくべきです。そして、何らかの形でこれまでの議論を重ねた結果を取りまとめ、この審査会としての考え方を明らかにすべきです。必要ならば、民主主義の原則である多数決によって結論を出すという作業を厭うべきではないと考えます。

 

 今、コロナ禍に、ロシアによるウクライナ侵略も加わり、国民の生命・財産、わが国の平和と安定を脅かす、重大な国家的課題は山積しています。いずれも憲法論議と切り離すことはできません。予算成立までは審査会を開かないという悪しき国会の前例に盲従した挙げ句、また、開くにしても隔週でお茶を濁し続けている怠慢は、もはや許されません。このままでは「参議院は要らない」と指摘されても、胸を張って抗弁できないのではないでしょうか。このことをまず強く申し上げ、「出席」を中心に憲法に対する意見を以下申し上げます。

 

 今般の新型コロナウイルス感染症の蔓延は、国会議員が議場に参集できず、そのため定数に達しなければ、開会も議決もできないという深刻なリスクを包含しています。また、南海トラフ地震や首都直下型地震、そして富士山の大噴火など、これまでの自然災害をはるかに上回る巨大災害の発生が高い確率で想定されています。さらに、今般のウクライナの例を挙げるまでもなく、我が国もいつ何時他国から軍事的な攻撃を受けるかもしれません。

 

 しかし、現行憲法には、こうした国家有事となる緊急事態に対応するための規定が存在していません。特に、緊急時に国会をいかに機能させるか、立法府が平時から議論・検討し、必要な措置を準備しておくことは当然です。そういう意味でも、定足数が不足することの課題を解決するために、オンライン審議を認めることは不可欠と考えます。

 

 この審査会での参考人質疑でも、九州大学大学院の赤坂幸一教授は「本会議へのオンライン出席は緊急事態時などごく限定的にのみ認められる」と指摘されました。また、早稲田大学大学院の長谷部恭男教授は「国会機能の維持ができない極めて例外的な事情がある限り、必要最小限の範囲内で」認められるべきだと主張されました。

 

 多くの議員からも憲法第56条1項の「出席」は、原則的に物理的な出席と解すべきではあるもの、緊急事態の発生時において本会議開催が必要にもかかわらず、定足数に達しない場合には、国会機能を維持するため、例外的にオンライン出席もありうると解釈し、オンライン審議を議院自律権によって可能にすることができるという意見が表明されました。このような多数意見を踏まえ、国会は本会議でのオンライン審議実現に向けて、歩みを進めていく必要があります。さらに、常任委員会のオンライン出席についても議論を深めていくべきです。

 

 確かに、審議の公開の在り方、議員本人の確認方法、表決の公正性の確保、セキュリティ対策など、乗り越えなければならない事項は尽きません。具体的な方策については、議院運営委員会等での十分な検討が求められることは、言うまでもありません。

また、個々の議員の事情、例えば女性議員の妊娠、出産時、また病気の場合なども、議員の表決権を確保する意味でオンライン審議を認めるべきという論点も、今後の課題とすることが望ましいと考えます。

 

 一方、国会のオンライン審議が実現すれば、地方議会の本会議のオンライン開催にもつながるものと考えます。地方おいて感染爆発や大規模自然災害などが発生した場合、議員定数の少ない地方議会が本会議の定足数、「定数の半数以上」を割り込む可能性が出てきます。そうなれば、予算や条例を議決する本会議が開会できず、行政の停滞が起きてしまいます。地方議会では、委員会でオンライン審議を導入した例はあるものの、本会議では実現していません。地方自治法が定める「出席」は、現に議員が議場にいることだと国が通知しているからです。国会がオンライン審議の実現に向けてかじを切れば、この通知が見直され、地方議会の動きを加速させるものと思います。

 

 とにかく、いかなる事態においても国会の機能を止めてなりません。緊急時にこそ、議論すべき事柄は多くなります。ゆえに、この審査会での議論を踏まえ、有事の際にも国家機能を麻痺させない手立てを準備すべく作業を本格化すべきである、と強調しておきます。

 

 さて、「出席の概念」「国会のオンライン審議」といったテーマが終われば、直ちに緊急事態条項を集中的に討議すべきです。

繰り返しますがコロナ禍において様々な課題が浮き彫りになり、さらに、ロシアのウクライナへの侵攻によって、国家の有事が起きた際に国民の生命、財産を守り、社会を維持するための緊急事態条項を議論することはまさに喫緊の課題となりました。

 

 国会の機能維持の観点から、議員任期延長の問題をテーマに憲法改正の議論を進めていくことはもちろん重要ですが、特に優先すべきは、公共の福祉の制限の仕方とか、私権を制限した場合の補償の問題です。なぜなら、国民の暮らしに直結するからです。

 

 ほかにも緊急事態をめぐる課題は多岐にわたります。だからこそ、毎週定例日にきちんとこの審査会を開催し、緊急事態条項について活発な議論を行い、意見を集約していくべきです。

 

 我が党は、憲法改正の是非を問う国民投票を一日も早く実施すべきとだと一貫して訴えてきました。現憲法は、国民投票を経ていません。真に憲法を国民の手に取り戻すため、憲法改正草案を取りまとめ、国民の判断を仰ぐべきです。国民投票は、日本の民主主義を成長させる大きなエンジンになると確信します。」

 

 参議院においては、選挙近しで、我が党以外憲法論議に熱が入らない感じがします。

 しかし、コロナ禍そしてウクライナ戦争など、内外情勢が大きく変わったからこそ、また「日本は緊急時に本当に国民の生命・身体・財産を守ることができるのか」という懸念が示されているからこそ、国会は憲法についてしっかりが議論すべきです。我が党は、参議院でも議論が活発化するよう引き続き頑張ってまいります。