3月22日(火)
 本日の本会議で党を代表し「所得税法等の一部を改正する法律案」について、反対の立場から討論しました。
 反対理由の第一は、政府の提案が、小手先の対応、従来施策の延長のオンパレードだからです。
 コストプッシュ型のインフレ局面においては、賃上げを実現することも極めて有効な対策の一つです。賃上げは本来、企業間の市場競争の結果として実現されるものであり、企業が高成長分野への事業転換を進め、結果として生産性が向上し、働く人の賃上げを実現していくことこそが正しい道筋です。
 しかしながら、政府が提案している賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げ、中小企業の価格転嫁のための環境整備、最低賃金の引上げ等は、どれも小手先の対応、従来施策の延長のオンパレードであり賛同できません。
 
 第二の理由は、工夫や努力もせず、法人税を支払うことができる黒字企業のみが適用対象となる措置を少しばかり拡充するものだからです。
 2013年以降10年近く実施してきている賃上げ税制は、2020年度までに利用額が2兆円を超えていますが、持続的な賃金上昇という果実を得るには至っていません。
 新型コロナウイルス感染症との闘いが長期化し、景気が低迷する一方、昨年度の税収は過去最高を更新、法人税も見通しをはるかに上回る結果となりました。これは、飲食・サービス業をはじめ多くの中小・零細企業がコロナで大打撃を受けて喘いでいる一方、いわゆる「巣ごもり需要」の増加等で業績を大きく伸ばしている企業もあり、企業間格差が今まで以上に広がっていることを意味しています。
 こうした足許の状況に即し、ターゲットとすべき業種や職種を絞り、より効果的な手を打つといった工夫や努力もせず、今まで通り、法人税を支払うことができる黒字企業のみが適用対象となるこの措置を少しばかり拡充するという政府案では、30年にもわたり低迷・横ばいしている賃金を持続的に上昇させることができるとは到底思ません。


 第三の理由は、成長分野への労働の円滑な移行が重要であるにもかかわらず、従来型のシステムから脱却を図ろうとしていない点であります。
 持続的な賃上げを実現するためには企業が高成長分野へ事業転換を図る後押しをすることが肝要です。専門知識を有する税理士や会計士等を雇わなければ使いこなせず、専門家を雇う余力のない中小企業にとっては不公平なものになっている350以上もある税制の特別措置や複雑な補助金制度は、本来であれば市場から退場されるべき企業、いわゆる「ゾンビ企業」の温床になっている可能性を否定できません。したがって、そうしたものは可能な限り整理し、万人が使いやすくアクセスしやすい「簡素・公平」な税制を徹底的に追求することが求められています。
 同時に、企業の高成長分野への事業転換促進のためには、「簡素・公平・中立」というよりはむしろ「簡素・公平・活力」の税制への転換が必要と考えます。デジタル社会経済の進展により新たに生まれている仮想空間、トークンエコノミーなどに対応した税制を、より国際競争力を備えた税制に改めていくこと、スピードを求められる産業に対する規制を事前型から事後型に変えていくなどの発想の転換が必要です。

 とりわけ、成長分野への労働移動を推進するための環境づくりは急務であります。技術が日進月歩で進化し、新たな分野での成長産業が次々に生まれていく一方、従来の事業継続だけでは市場から淘汰されるといった分野も多く出てきています。企業が、時代の流れに合わせてフットワーク良く事業領域を転換しなければ生き残れない今の時代にあって、現在の硬直的な日本型雇用・賃金制度は、企業にとってだけでなく、何よりも労働者にとっても大きな弊害となっており、その根源にあるのが時代にあわない解雇規制です。

 企業にしてみれば、一度雇用したらずっと雇い続けなければならないのでは、なかなか賃上げに踏み切れません。また社員を雇う際にも、まずは非正規かパートを雇うことを考えてしまうことは当然の帰結であります。一方、全体の65%を占める中小企業で働く労働者が、何の補償すらなく簡単に解雇されてしまうという事態に直面しています。退職してから次の職に就くまでの間の収入を保証することや必要な職業訓練を受講できる環境を整えるなどのセーフティーネットの拡充をするとともに、解雇の際に追加支援金を受給できることをルールとして確立すれば、労働環境は大きく改善し、望まぬ非正規やパートでの就職を余儀なくされる現状も大きく変えることができます。
  コロナ禍で露呈した脆弱な日本の従来型システムから早急に脱却すべきであり、今こそ時代にあわない解雇規制は緩和していくべきであります。
 以上が、日本維新の会が「所得税法等の一部を改正する法律案」に反対する理由です。

 悪いインフレであるコストプッシュインフレへの対応の本丸は、中期的な構造改革の実施です。日本維新の会は、税制、社会保障制度について正面から大改革を図る「日本大改革プラン」を発表しています。

 「フローからストックへ」をコンセプトとする「税制改革」、セーフティーネットとしての最低所得保障制度(ベーシックインカム)の導入による抜本的「社会保障改革」、地方分権改革・労働市場改革・規制改革・デジタル改革による「成長戦略」の三位一体改革のプランで、真の意味で持続可能な社会保障システムを構築するとともに、閉塞感の強い国民生活に豊かさの実感を取り戻していこうとするものです。

 とにかく今こそ、これまでの発想や既得権益にとらわれることなく、抜本的な制度改革、規制改革を断行しなければなりません。我々日本維新の会は、その先頭に立って国民の皆様のための政策実現を今後ともめざしていきます。