8月9日朝いちばん。

消化器内科クリニックに先日の内視鏡検査の結果を聞きに訪れた。ここ数日、喉が痛いし、検査のときの医師の一瞬驚いたあの表情が頭から離れず、なんだか空元気というか、元気がでない。

すぐに診察室に呼ばれた。

開口一番、医師からゆっくり告げられたのは、

「食道の真ん中に腫瘍があります。

生理検査で調べた結果、悪性の腫瘍。

がんです。」

(先日の短い検査の間に生検のサンプルを採取してたとは知らなかった…)

画像を見ると、そこには見るからにすごく顔つきの悪いできもの、が映っていた。

それは、食道の中央に、全周に渡って拡がるように狭窄していて、真ん中の通る部分は5mm程度しかないらしい。

「がん… ですか。 がん… ですか…」

表面上、冷静を装ってはいたが、実際にはもう冷静でいられなかった。絶句…

大きな病院を紹介しますと言われ、いくつか候補を挙げていただいたが、自分で選ぶ知識、判断材料もない。とにかく、検査や治療を早く進めてくれそうなところを教えてくれませんか。

候補にあがったのは、大阪国際がんセンターということだった。そこへの紹介状をお願いし、一旦クリニックを後にした。

頭の中が真っ白になった。

会社へ歩いて戻る足取りは覚えていない。

周りの景色がつい今までと全く変わってしまった。

全く色がない。音もない。

自分だけが置き去りにされるような不安、焦燥感。

歩きながら、家内に電話をいれた。

「食道がん と 診断されたわ… 」

「 そう … 」

戸惑って言葉にならない。

短い、静かな電話だった。

夕方、クリニックで紹介状をもらう。お盆休み明け、9日後の8月18日に大阪国際がんセンターを予約していただいた。