10年前となった2014年県境ツーリングも四国のど真ん中を跨ぐようになっています。
このステージより、これまで愛媛県との境だった舞台も徳島県との境となってきました。
愛媛県、徳島県、高知県との境がひしめくエリアで、まずは愛媛県と徳島県の境である境目峠を越えて徳島県に入ります。
■走行日2014年7~8月
いかにも県境の峠名であるような境目峠からは徳島県に入り、国道192号線をそのまま走って三好市池田で国道32号線に出て来ます。
旧道区間のJR土讃線のガード下を抜けると32号の本線に出てきます。
国道32号線は吉野川に沿っているので、大豊町で別れた吉野川と再会しますが、川幅はすっかり広くなっています。
吉野川に沿って国道32号線を高知方面へと向かいます。
左手には名所の“大歩危・小歩危”が見えてきて、V字型の谷に彫刻のような岩石が渓谷美を作っています。
この辺の吉野川は石鎚山系と剣山系の四国山脈をぶち割るように流れています。
吉野川沿いの山城町川口の集落では、赤い橋の“川口橋”を渡ります。
徳島県の橋柱には面白い事に、徳島市までの距離が表示されています。「徳島市へ87.2粁(キロ)」とあります。
川口と言う地区は西から流れてきた銅山川と吉野川の合流点に開ける町で、旧山城町の中心的な場所でもあります。
また愛媛県の新宮村への徳島県側の入口となっているため、交通の要衝ともなっているようです。
銅山川に架かる川口橋とJR土讃線の橋梁が並んでいる景色はちょっとマニアック的でもあります。
川口の集落からは吉野川の景観が眺められます。
両側には切り立った岩や崖がそそり立ち、激流が岩をかんで真っ白な水しぶきが上がっています。
「大谷通れば石ばかり、笹山通れば笹ばかり・・・」と阿波踊りのはやし詞にも読み込まれた“阿波の青石”は剣山系に多く含まれ、吉野川中域では河底が青石の場所が多く川の水に映り、きわだった青さを見せています。
JR土讃線の吉野川橋梁が川を跨いでいます。
今回は名勝のあるエリアを走る事で食事をする所も多くあり、“祖谷そば”を食べました。
山深い地方である祖谷(いや)は四国でも珍しく、昼と夜の寒暖差が激しい事と、水はけの良い急斜面では良質のそばが栽培できることから、祖谷の郷土料理となっています。
北日本のそばとは、また一味違った食感です。
色んな香辛料が並んでいますが、「高知県のゆず唐辛子」と「徳島県のすだち七味」があったことが面白かったです。
何とも美味しい祖谷ソバの昼食を済ませると、国道32号線沿いの大歩危小歩危から県境の稜線近くに向かう県道217号線に入り、再び深い山間のエリアに潜り込んで行くように、吉野川支線の“白川”にそって奥小歩危温泉方面へとバイクを走らせます。
狭い舗装林道ような道を奥へ入って行きます。
周辺は緑、緑で覆われていて、真夏にもかかわらず涼しく感じます。
国道から8キロほど走ると、これまでの木々と渓流に覆われた世界から、突然に集落が現れます。
周りは深い山々にすっぽりと囲まれた「粟山」の集落です。
三好市山城の最奥と言われる集落で、ここに奥小歩危温泉があります。
この時よりも16年前に来た時はシンシンと雪が降る季節で、体を温めるために入った事があります。
そこでアメゴ定食を食べた事がありますが、最高に美味しくて、湯上りの気持ちの良い温泉宿であったこともあり、休憩所からなかなか出られなかった記憶があります。
これはその当時の様子で、周辺は未舗装林道の宝庫でした。
愛媛県と徳島県の境に聳える塩塚峰と言う山が観光整備されてから、たちまち舗装化が進み、殆どのルートが舗装されていました。
温泉前では国道から通じる道が何本かあり、深い山中でありながら、どこを通っても国道32号線へと出れます。
この奥山と言う地区は、かつてタバコ栽培で栄えた集落のようです。
温泉前には、“根津木口橋”という白川谷川を跨ぐ大きな橋があり、そこを渡って“小川平林道”を走ります。
四国の山を流れる小さな支流は川の事を“谷”と表示するものが多いですが、この川は川を表わす文字が幾つもある面白い名です。
白川谷川(しらかわだにがわ)は、これから向かう3県の境に連なる稜線の懐を水源としていて、流路延長は13キロほどです。
道にはミヤマクワガタ(?)のメスの死骸がありました。
夜、昆虫採集をするとたくさん獲れるかも知れません。
さて、小川平林道は渓流沿いを通っていますので、この道も清々しく走ることが出来ます。
この時よりも16年前に来た時はまだ未舗装だったのに、こんな山奥までも舗装の魔の手に侵されたようです。
結局、小川平林道は全線舗装のまま、県境へと通じている県道272号線へと出てきます。
今度は同じく吉野川支流の“藤川”沿いを通るようになりますが、この渓流も綺麗な青さをしていて、小休止しながら見入ってしまいます。
この辺りは三好市山城の妖怪の里とされていて、あちこちに妖怪のオブジェが迎えてくれます。
木には目玉がたくさん!まるで、こちらの安全運転を監視しているようです。
「大丈夫ですよ、こんな山道では飛ばしませんので、呪わないで~!」という感じでおじぎをしてしまいます。
なぜ、ここに妖怪が?と思われますが、大歩危小歩危で知られる三好市(旧山城町)は、四国山地の間の険しい地にあり、危険な所がいっぱいあるという事で、人々や子供がそこに近づかない様にと、事件や事故から身を守る知恵として、妖怪の話が多く伝えられて来たと言います。
そんな山城町は妖怪の里として平成20年5月25日に、世界妖怪協会より「怪遺産」に2番目に認定されました。
ちなみにこの協会の会長は「水木しげる」さんで、認定第1号は鳥取県境港市です。
「児啼爺」もこの地の出身のようです。
舗装林道のような道沿いには白川谷川の支流がずっと流れていて、それはマイナスイオンを散布してくれているような清らかな渓流となっています。
未舗装のままでしたらいうことは無いのですが、走っていて気持ちの良いルートです。
たくさんの妖怪たちに見られる中、県境方面へとバイクを走らせると、“美馬峠隧道”を抜けます。
ここが県境のような雰囲気がありますが、そうではありません。
県境はまだ先です。
前回と今回のルート