「11月21日 小雨、気温8度。眠り浅く、手足がだるい。」
これは「夢千代日記」シリーズⅠの2話の冒頭の吉永小百合演ずる夢千代が、日記をつぶやいた場面の言葉である。
この作品の脚本家、早坂暁さんが年末になくなったことからNHKで再放送された。久しぶりに見ても泣かせる、切ない物語だった。シリーズ1の時は私は中学生だった。日本海側を「裏日本」といい、「表日本」の人たちを信用していない。ストリッパーや暴力団も出てくる。また圧倒的な反戦ドラマである。
『夢千代日記』は、NHKの『ドラマ人間模様』で放送された3部作のテレビドラマである。吉永小百合主演。作・脚本:早坂暁、音楽:武満徹。後に映画化や舞台化もされた。シリーズ1は1981年2月15日 - 3月15日放送、全5話。
主人公の夢千代は母親の胎内にいたとき、広島で被爆した「胎内被爆者」。白血病を発病しており、余命2年と宣告されている。夢千代を取り巻く人々の生き様を山陰の冬景色を背景に物悲しく描く。ストーリー展開は夢千代が毎日書き綴っている日記が軸となっており、随所に夢千代が日記の一部を読んでいるナレーションが盛り込まれている。
シリーズ1の5話での夢千代が日記をつぶやいたところところ。
「山陰に、長い、辛い冬が始まります。気温、零下5度、てんでしのぎの私たちですが、道連れがいます。12月20日、いつもより早い、大雪です。」
武満徹の哀しい単調の音楽と、ぼそぼそ語る吉永小百合のナレーションと、夜に降る雪の風景がおきまりだ。
話の筋は特にないのだが、チェーホフの芝居のようにぼそぼそとした会話が中心で、この温泉町に訪れる、いろんな過去を背負った人たちの様子を描写していくだけだ。
夢千代の置屋にいた市駒という芸者が殺人を犯したとして、川崎から山根刑事が来るのだが、この刑事も侘びしい感じで、やがて刑事をやめて、この寂れた温泉町に居着くようになる。警察署の藤森警部の役をやった中条静夫さんは葬儀の際に夢千代日記の台本を自分の棺に入れたほど、この作品に出演できたことが嬉しかったという。また、この町の木原医師(ケーシー高峯)は、実は藪医者だったりする。山倉(長門勇)の縄張りだったこの温泉町に、広島の暴力団が訪れるのだが、その組長は夢千代の母に、広島で被爆した時に、助けられた事を告白する。
私が本格的にこの夢千代シリーズを見たのは、松田優作が出た時のシリーズで、一番印象に残っている。最後に、夢千代を演じた吉永小百合が出てきて、この作品に出演したことをきっかけに、反核運動のひとつの、朗読のボランティアをすることになったことを、抑制的に話すVTRが流された。
そういえば、最近のNHKはまた少し左に舵を切ったように見える。三井物産から来た会長が交代させられたからだろうか?
夢千代(永井左千子):吉永小百合 - 置屋「はる屋」の女将
菊奴:樹木希林 - はる屋の年増芸者
金魚:秋吉久美子 - はる屋の芸者
藤森刑事:中条静夫
緑魔子 - ストリッパー
山本倉次郎(山倉):長門勇
山根刑事:林隆三
原作:早坂暁
脚本:早坂暁
演出:深町幸男・松本美彦
音楽:武満徹 TOKIO - 沢田研二他
視聴率
第1回22.3%、第2回19.2%、第3回19.6%、第4回19.0%、最終回19.7%
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