23時頃、メッセージが来ました

飲み会が終わって帰り道かな

「わたしそんな高尚な人間じゃないんだよ」

「創平はわたしのこと過大評価してる」

「自分を過小評価してる、なのかもしれない」


ちょっとまだ、萌絵が何を言おうとしてるのか掴めない

「コンプレックス持ってるじゃない?」

「そんなのわたしだって死ぬほどあるんだけど」

「私に対しての線引きがある気がして」


線引き・・・驚いた

逆に僕が萌絵に言いたいと思ってたこと

萌絵から言われるとは

萌絵のメッセージはずっと「入力中...」と出てくるので

「僕が話してよくなったら言ってください」と聞くと

「いいよ」と返ってきた

「萌絵は、言うこと一通り言った?」

話途中だよね、と思ったので敢えて聞いた

「んーと、犀川さんの話たくさん聞きたい」

「わたしにできないことをしてる犀川さん、創平のことを尊敬してる」

「その気持ちずっと変わらない」


あぁ、これは酔ってる時の萌絵がいつも言うやつだ…

僕を苗字で呼ぶのも…そういえば酔った時だけだ

「今日は僕は聞き役になるね」

「なんでよ」

「酔ってるから…今ここの会話、意味なさそう…」

「意味ないならもう言わない」

「ごめんね。でも今ここで何か言っても、あまり萌絵に届かなそう」

「うん、もういいから大丈夫」

「萌絵・・・」

「はい」

僕はこの前のZOOMで顔見ながら在宅仕事を思い出してて

今は文字だけのやりとりは良くない、と思ってた

「いつ頃家に着くの」

「どうだろうね」

え…。もうそんなに怒ってるの?てか何に怒ってるの…

「言いたいこと飲み込んだ大丈夫って嫌じゃない?」

なんかちょっと言葉が足りないけど

僕が我慢する道を選んだことを言ってるっぽい

「仕返ししてるの?僕は飲み込まないと萌絵と続けられないから飲み込んでるんだよ」

「そう言うの身勝手じゃない?話をしようって言ってるのに」

「だから顔見て話したほうがいいと思っていつ帰るか聞いたの」

「つぎ、○○○(駅名)」

家まではあと50分弱か…

正直、寝ようとしてたぐらいだけど、これは起きてないとだな


本当は帰宅まで待って、顔見ながら話再開したかったんだけど

 

引き続き文字で続いてしまうその後の会話・・・

 


「一方的に我慢するのはよくない。すり合わせ・話し合いが必要」

「僕が我慢するのを選んだのは、たくさん話をして、自分の行動が「比較的間違い」、萌絵の行動が「比較的正しい」と気づいたから」

「これまでも話し合いはしてる。今の僕はその結果でもある」


「でもその結果って2人でこうしようって決めたこと?」

「ちがうね」

「話すほど考え方の違いを感じて悲しくなる。悲しくなるのは別れたくないから。2人で納得するところを目指してきたけど、それはなかなか定まらなかったよね」

「萌絵をたくさん泣かした。もうダメかもって言ったときもあった。だから僕が変わるしかないと思ったんだよ」


「創平は私といっしょにいるとつらい?」

「つらくない。僕がどういう時につらいかは…萌絵はわからないと思う。そこが大きい。これが考え方違うと言ってる点だと思う」

「じゃあいっしょにいるのは無理ってこと?」

「どうして?」

「わかってもらえない人と一緒にいられないと思うから」

「逆に萌絵は?」

「いっしょにいたいから、その方法を探してる」

「いっしょにいたい、は僕も同じ」

「創平が元気なら何もつらくないよ」


この時僕は、萌絵が泣きじゃくってたとある日を思い出していた

この日萌絵は核心を語らなかったけど

僕が既婚者であるという避けられない事実に対して

普段は蓋をして我慢している感情があるとその時改めて感じた
(わかってますよ。改めて、ね)

萌絵だって我慢して

無理して元気に振る舞ってたじゃん

そう思っていた


なげーよ
つづくー