「犀川さんが好き!」

ウソか本当か、人目も憚らず屈託のない笑みでそんなことを言う。それが西之園さんだった。

 

西之園さんとは音楽仲間。10年くらい前からの知り合いだ。年齢(自分より10ほど下)の割に若見えして可愛らしい。悪く言うと男のツボを心得た「あざとさ」を持ってる。そんな印象だったので、家庭持ちの俺はこれまで避けるでもなく近い存在・・・つまりトモダチだった。

 

 

ここ3年くらいだろうか。
冒頭の「犀川さんが好き!」を連発するようになった。飲みの席での発言が多かったし、「どうせからかってるだけだろ・・・」と僕もさほど相手にしていなかった。

 

音楽活動の後、最寄り駅まで車で送ってあげることが増えた。
ほんの5分10分の時間だけど、車内では二人っきり。。

 

「襲っちゃうかもよ」
{襲ってください」
「な~に言ってんだよ(溜息 ※本音はドキドキ嬉しい)」

 

実際、ちょっと下ネタや色っぽい話になると口を閉ざしていたように見えたし、本当に俺は「実は興味ないんでしょ?わかってるよ、自分なんてかすりもしない男って」と思っていた。

 

ところが人間、一緒にいる時間が長くなってくると愛着が湧くというのは真実のようで、徐々に西之園さんの口から「犀川さんにしか話していない話」が増えてきた。いわゆる「ふたりのヒミツ」だ。

 

つづく・・・

 



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