「クラシックはこれを聴け」、今回はモーツァルトの「レクイエム」です。
この曲を紹介するのは少し迷いました。モーツァルトとしては未完成であることが理由です。他人の手が入った曲ということで個人的にモーツァルトの天才が汚されたイメージを持っています。
しかし、聴いてみると、いつもそうですが、やっぱり感銘を受けてしまいます。
死が迫っていたモーツァルトの元に、ある日灰色のコートを着た紳士が「レクイエム」の作曲を依頼したが、彼は死の世界からの使者だった。という実しやかな逸話が有名ですが、近年の研究によって依頼主は田舎の領主で、使者に作曲の依頼をさせていたことが分かっています。田舎の領主はアマチュアの作曲家で有名な作曲家に匿名で作曲を依頼し、それを自分名義で発表するという行為を行なっていたそうです。
それはさておき、モーツァルトが死の床でこの曲を書き続けていたのは事実です。現在聴ける「レクイエム」の構成は、
イントロトゥス(入祭唱)
第1曲「レクイエム・エテルナ(永遠の安息を)」
第2曲「キリエ(憐れみの讃歌)」
セクエンツァ(続唱)
第3曲「ディエス・レイ(怒りの日)」
第4曲「トゥーバ・ミルム(奇しきラッパの響き)」
第5曲「レックス・トレメンデ(恐るべき御稜威の王)」
第6曲「レコルダーレ(思い出したまえ)」
第7曲「コンフターティス(呪われ退けられたる者達が)」
第8曲「ラクリモーサ(涙の日)」
オッフェルトリウム(奉献唱)
第9曲「ドミネ・イエス(主イエス)」
第10曲「オスティアス(賛美の生贄)」
サンクトゥス(聖なるかな)
第11曲「サンクトゥス(聖なるかな)」
第12曲「ベネディクトゥス(祝福された者)」
アニュス・デイ(神の子羊)
第13曲「アニュス・デイ(神の子羊)」
コムニオ(聖体拝領唱)
第14曲「ルックス・エテルナ(永遠の光)」
どこまでがモーツァルトの手になるものなのか、興味をそそります。
驚くことにモーツァルトが完成できたのは「第1曲」だけなのです。「第2曲」「第3曲」はほぼ完成していて、他に「第3曲」から「第7曲と「第9曲」「第10曲」は4声の合唱部分と主要な和声のスケッチが残され、あの第8曲「ラクリモーサ」はモーツァルトの手になるのは8小節まで。従って「第11曲」以降は完全に弟子のジュスマイヤーの補筆になります。
ジュスマイヤーの補筆箇所はどうなのか、「ラクリモーサ」の9小節目以降の素晴らしさ、特に最後に長く伸ばされた”アーメン”の響き。ここの頑張りだけで後は許したくなります。
それでは全曲を通してお聴き下さい。カラヤンとベルリン・フィルの旧録になりますが、対訳付きの動画で紹介します。対訳を読みながらでも、見ずに音楽だけ聴いても楽しめます。
最後までお付き合い、ありがとうございました。