始末しきれていない本棚を整理していると、昭和57年(1982年)発行の角川文庫「時にはざんげの値打ちもある」阿久悠著 が出てきました。

今では古典的番組と言っても良いかもしれませんが「スター誕生」というオーディション番組があってその審査員の一人であった阿久悠に不思議な魅力を感じていました。都倉俊一 森田公一等々の中でも辛口の批評をされていました。後に知ったのですが番組の企画も阿久悠のものだったそうです。彼は70歳で亡くなるまでに5000曲以上の作詞を手がけたほか『瀬戸内少年野球団』等の小説も書いています。

  

この本を私が手にしたのは文庫になってからですが 単行本は昭和48年(1973年)に出版されたものですから 「スター誕生」スタートから2年後のものです。目次を見ていただくとわかりますが、第2幕(章)からは彼が35歳までにしてきたことや数々のエッセイ・対談などが並んでいて、私にとってはいずれも興味深いものでした。

その内容を紹介するにはとても紙面が足りませんから第1幕(章)として書かれている「阿久悠が選んだベストテン」を紹介します。(彼が35歳までに発表したものの中で彼自身が選んだベストテンです)

 

曲名とその詩の内容に関する彼の記載の一部を紹介します。

第1位に上げたのは北原ミレイが歌った『ざんげの値打ちもない』

「ぼくは、この詩においてきわめて透明な清潔感を持った少女の肉体を借りて、(中略)涙を流さない憎悪のきびしさ、そして、生きるということのせつなさ、これらを全部表現できたと思っている」阿久悠記

第2位が和田アキ子の『あの鐘を鳴らすのはあなた』

あなたに逢えてよかった/あなたには希望の匂いがする/つまずいて 傷ついて 泣き叫んでも/さわや希望の匂いがする/町は今 眠りの中/あの鐘を鳴らすのはあなた/人はみな 悩みの中/あの鐘を鳴らすのはあなた (後略)

「希望という字は、けっして、希望校などと使われるものではないことをぼくは告げたっかったのである」

第3位藤圭子の『別れの旅』

「ぼくの親友 上村一夫が描く劇画『同棲時代』が評判をよんでいるようである。(途中長文略)この唄は『同棲時代』と同じころに書いたものだと思う。これは同棲時代の破局のストーリーである。ただし『同棲』としては大成功といえる部類に入るものである。」

第4位は尾崎紀世彦の『また逢う日まで』

「井上ひさしさんは、その頃のぼくの詩をいくつかとりあげ 共通分母を引出して“阿久悠の詩における楽観的出直し論“を展開しているのである。出直し論が当たっているかどうかは別として(中略)”昨日は昨日さ 終わった日さ“という「昨日 今日 明日」のこの一行が、その年に書いたすべての詩を代表しているということはできるようである」

(●余談ですが 若いころの私が カラオケで唄った曲のベスト3に入ります。失礼)

第5位は『ピンポンパン体操』

1972年度の日本歌謡大賞特別賞、日本レコード大賞童謡賞をもらったが、阿久悠さんとしては、実は大賞を狙っていた作品だったそうで、日本人のジャンル分けには疑問を感じているとの意見が述べられています。

第6位は『どうにも止まらない』

山本リンダというキャラクターを得て、ディズニーや手塚治虫と同様にアニメーションの楽しみを見つけようとして作ったものだそうです。

第7位は森昌子の『せんせい』

「スター誕生」の最初の年に最優秀賞を獲得した森昌子を スターとして世に送り出すまでの苦労がたっぷり語られています。

第8位『とても不幸な朝が来た』

放送倫理規定にふれてNHKで歌うことが許されなかったこの曲についての阿久さんの考え方が述べられています。

第9位『白い蝶のサンバ』

森山加代子ノカムバック曲ですが、阿久悠ご自身の売り出し作品なのだそうです。

第10位CMソング

《コカ・コーラ》《カップヌードル》《カローラ》等々

 

詳しくは 本を手に取ってお読みください。昭和生まれの方々にはきっと満足いただけます。

ごめんなさい 今日は阿久悠さんにし合わせて 自分勝手に感動してしまいました。

 

以下は時代を作った阿久悠の作品の一部です。驚きませんか‼

「津軽海峡冬景色」「宇宙戦艦ヤマト」「勝手にしやがれ」「舟歌」「UFO」「青春時代」「熱き心に」「時代おくれ」「熱き心に」「北の宿から」「学園天国」「雨の慕情」「時の過行くままに」「街の灯り」「五番街のマリーへ」「SOS」「サウスポー」「ペッパー警」「ロマンス」「もしもピアノが弾けたなら」「学園天国」「シンデレラハネムーン」「私の青い鳥」

(ライター:山口一郎)