君子の世に在るや、その道を知りて之を行うを楽しむ。
是長生を貴ぶ所以なり。
いたずらに生を貪り、死を畏るるに非ざるなり。
君子と言わぬまでも、人として生まれたからには、人としての道を心掛け実行したい。
それを楽しみとし、そのための時間を求めるが為、長生きを求めるのである。
ただ目的もないまま生に執着しても、喜びや楽しみは得られない。
楽の過ぎる所、すなわち是憂いの生ずる所なり。
楽は憂いの根となす。
憂いの在る所、かえって是楽の生ずる所なり。
憂いは楽の根となす。
是また禍福のあい倚伏する理とあい似たり。
快楽を求めすぎ、物を持ちすぎると、たちまち色褪せ退屈なものになってしまう。
更なる強力な刺激や、より良い物を求めたくなる。
やがてそれがストレスとなり、幸福と羨むものでも不幸の種となる。
幾らかの悩みや禁欲を科して、その実現の楽しみを求める位が、最もな幸福、あるいは快楽かもしれない。
無一物、無尽蔵。
人の性おのおの分あり。
須くその性分の及ぶ所に随って、分内の事を為すべし。
悔いなき所以なり。
もし分外の事を為せば、すなわち力その任に耐えず。
悔いに抵らざる者すくなし。
教育者は大概、人には無限の能力があって、努力すれば報われるという。
そして若者を勉学、スポーツへと駆り立てる。
励ましとしては悪くはないが、努力だけで誰もが総理大臣になれるわけもなく、ノーベル賞を頂けるわけでもない。
自分の能力に応じて生き方を選ぶのも、自分又社会のためである。
より上を、より多くを望む価値観を転換し、自分は自分の周囲や社会のため一体どれほどの事をなし得るかを問いその為に生きてゆくのも、一つの人生観である。
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