酒食を過ごさずしてひかへば、敵となるべからず。
つよき薬を用いてわが腹中を敵味方の合戦場とするは、胃の気を
そこなひて、うらめし。
宴会などで食べ過ぎ、酒を飲みすぎ、次の日は二日酔い。
酒食による急性病でもある。
こんなときは、胃腸を休ませ絶食もよいが、おおかた食欲も湧かない。
しかし嘔吐や目まい胃痛、下痢が起ると、回復まで苦痛を長引かせる訳にも行かなくなる。
絶食、安静で間に合わない回復のため、薬の出番である。
益軒先生は薬学者でありながら薬の使用を戒めている。
薬は偏性があるのでみだりに用いてはならない。
薬の災いが大きい場合がある。
例えば嘔吐することは早く食毒を排除する生理反応でもあるし、胃痛はこれ以上食物を入れないための防衛反応と考える事もできる。
苦痛を取り除くため最低限、副作用の軽い薬を必要量、短期に服用し後は養生を心掛ける。
嘔吐を止め食物を排除できなければ、苦痛は軽減されても食毒は残る。
苦味健胃薬を使えば、胃気を低下させ胃を冷やす。
忘年会、新年宴会のシーズンになれば、胃腸薬のメーカがあの手この手、嘘も本当も取り混ぜての喧伝が始まる。
必要ないものを、必要かのように錯覚させる手法は体に関する限り犯罪的でもある。
これを信じて胃腸薬は常用すべきものと勘違いし、重曹が主成分の○○胃腸薬を服み続ける人を多く見かける。
重曹で中和された胃液はPHを回復させるため、一層強力に分泌され、それによって胃を傷めるという悪循環を繰り返す。
このことを説明しても、なお理解していただけないことがある。
テレビや新聞などの洗脳力に敬服する次第である。
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