青々とした木漏れ日が朝露を照らす。
纏わりつくように湿った風がヨンの体を包み、木々の葉を揺らした。
天女を連れ去り地の世界へ留めたのは、ちょうどこんな季節だった。
無事でいるのか
笑顔でいられる時はあるのか
募る想いは日々変わらず寧ろ大きくなるばかりだが、出会った頃の風に触れると、殊更無性に会いたくなる。
痛い程に溢れくる想いが躰を巡り、渦を巻いて突き上げる。
堪らず空を見上げる。
─ ここに、おります ─
行き場のない強い祈りが口元を歪ませ、ヨンは睨むように宙を見つめた。
焦るばかりの心を宥めるように、風が頬を撫でる。
『そんなに怖い顔しないで』
いつも言われた言葉が過ぎり、眉間に込めた力を抜く。
瞼を閉じ、深く息を吸い込む。
頭上の枝葉から顔をのぞかせていたカワセミが青い羽根を広げ、飛び立った。