おはようございます。
今日は読み切りのお話しを一つ載せます。
焦れったい、焦れったいなぁ〜
けどそんな二人が大好き…と思いながら書きました。
本当は画像を作ったので短文を合わせて・・・
気に入ったフレーズなどを沢山記してあったメモが、
けど、
画像は別の場所に置くことに→コチラ(別ブログへ飛びます)
先日、春の嵐で跡形も無く消えてしまった桜達。
あれからまだ一週間も経っていないのに、近所の公園では木々達が新しい葉をせっせと伸ばしています。
まるで何事も無かったように「え?桜なんて咲いてましたっけ?」と言っているようで、今年は桜の木に儚さよりも生きる強さを感じてしまいました。
新しい季節、どうぞ皆さんが健やかに過ごせますように。
掌編「かがり火に揺られて」
自分の気持ちが分からない。
ウンスは心の中で呟くと、腕組みをして首を傾げた。
『うじうじしてないで、
そう言って女友達の背中を叩いた学生時代の自分を思い出す。
この人が気になるのは確かだけど・・・好きかどうかなんて分からない。
正直「苦手だ」って思ったことは沢山ある。あるけど・・・
ウンスは巡らせる程に絡まってゆく自身の想いに戸惑いながら、
「・・・何です?もう酔いましたか」
「まだまだ。このぐらいじゃあ酔わないわよ」
ウンスがヨンの真っ直ぐな視線を避けるように足元へ目を向けると、松明と月の灯りが花壇の薬草を照らしている。
かがり火が風に吹かれるたび、
半刻程前。
夕餉の後の休息時間が終わる頃、迂達赤の兵舎に医仙が現れた。
「隊長さん、いいお酒貰ったんだけど一緒に飲まない?お酒、
その場にいる全ての男達の視線が、一斉にウンスへと集まる。
テマンから報告を受けたヨンは自室から降りてくると「
すると、撒かれた武閣氏達の「あ、居ました!」「医仙様!」
ヨンは「お送りします」
と言って、ウンスの手を掴んで歩き出した。
「じゃあ私の部屋で飲もうか」と、
ヨンは通り掛かりの薬草園の石段にウンスを座らせると、
少しだけですよ。
そう言ってヨンがウンスに酒を注いでやると「あなたも飲んで」
ヨンが「勤めの最中ですので」と指先でくるりと盃を伏せると、
「あのね、
だけどさ、
確認するけど、今の私ってあなたより身分が上なのよね?」
放っておけばいくらでも喋り出しそうなウンスを面倒そうに見遣る
ヨンが、これで良いですか。という風に一息で盃を空けると、
ウンスが「あら、お酌ぐらいするのに」
その微笑みに、ヨンは全てを許してしまいそうになり目を伏せた。
片手で顔を拭うようにして、口元が緩んでいないことを確かめる。
「お互いにね、まだまだ知らない事が多いから、こうやって
そうすれば、自分の気持ちもはっきりするような気がして。
まだまだ。と言っていた割に、医仙はあっさりと潰れてしまった。
随分と他愛の無い話しを互いに交わした気がする。
幼い頃の事、両親の事。
身内でも無い者とこんな風に気安く話したことなどあっただろうか
ヨンが宵の空を見上げながら考えていると、
見ると、
「チェヨン・・・」
口元にかかる長い髪の毛をよけてやりたいが触れることもできず、
名を呼ばれただけだというのに、
遠巻きに警護していた武閣氏が遠慮がちに近寄り、
「お部屋にお運びしましょうか」と声をかける。
「・・・いや、いい。俺が」
ヨンは固まっていた腕を下ろし、
先回りした武閣氏が医仙の自室の扉を開ける。
ヨンは梁にぶつからぬように少し体を屈めて中へ入ると、
後ろで扉の閉まる音がする。
腕の中のウンスをそっと布団の上へ寝かせてやると、
「ううん・・・」
先程から口にかかる髪の毛が気になるのか寝返りをしながら眉をひそめ、
ヨンは寝台の前に屈み、白い手を握ってウンスの動きを止めると、
起こさぬように、頬に張り付く髪の束を纏めて指の先でつまむ。
淡い光に包まれた肌に触れると、
思わず吸い寄せられそうになり、
そろそろ行かねば外の武閣氏達が部屋で何かあったのかと心配するだろう。
ヨンはもう一度肌に触れる代わりにウンスの頭をひと撫ですると、
誰かに抱かれて、ふわふわと揺れてる。
不思議ね。とても気持ちがいい。
今度は大きな手が頭を撫でた。
あったかい。安心する。
誰だろう。呼んでみたら、応えてくれるかしら。
ウンスの動く気配を背で感じ、ヨンは足を止めた。
「チェヨンの、馬鹿・・・」
(俺の夢を見てるのだろうか)
ヨンが振り向きもせずに笑みをこぼし、また歩き出そうとすると、
「やっぱり好き・・・」
心の臓が跳ねる。
ウンスの言葉に目を見張り、声のする方へ思わず振り向く。
「好きなの・・・お父さん・・・」
そう言い終わると、桜色の唇が動きを止めた。
呼吸が止まっていた自分に気付き、ヨンは、はっ。と息を吐いた。
暫く思いを巡らせたのち、
「俺が馬鹿。で、好きというのは・・・この方の父上へ向けたものだ」
ヨンは自身に言い聞かすように、
まだ何か言いたげに唇を動かし始めたウンスに再び背を向け、
扉の外で歩哨に立つ武閣氏が礼をしてヨンを見送る。
去ってゆくヨンの姿が視界の端から消えると、
「ねぇ、さっきチェ隊長、顔が赤くなかった?」
「ええ、耳まで赤い気がしたけど・・・お酒に酔ったのかしら」
「まさか。隊長が酒に酔うなんて、見た事も聞いた事も無いわ」
「そうよね・・・それに、何か部屋の中で呟いてなかった?」
「さあ、聞こえなかったけど・・・」
二人は顔を見合わせると、これ以上の私語は慎もうと口を閉じた。
頭上に広がる宵の空には、涼しげに微笑むような月が輝いていた。
やっぱり好き・・・私、あの人が好きなの・・・
お父さん、お母さん、もう少しだけここに居たいって思う私を許してくれる?・・・
終
今後も月一ペースで短文か読み切り、続き物のお話しが書けた時のみ随時更新する予定です。
よろしくお願いします(^人^)