掌編「かがり火に揺られて」 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

おはようございます。

今日は読み切りのお話しを一つ載せます。

焦れったい、焦れったいなぁ〜

けどそんな二人が大好き…おねがいと思いながら書きました。

 

本当は画像を作ったので短文を合わせて・・・と思っていたのですが、

気に入ったフレーズなどを沢山記してあったメモが、知らぬ間に誤って消去されてて(泣)

けど、ずっと使わずに仕舞ってあったということは要らないということかも。と割り切りました。

画像は別の場所に置くことに→コチラ(別ブログへ飛びます)

 

先日、春の嵐で跡形も無く消えてしまった桜達。

あれからまだ一週間も経っていないのに、近所の公園では木々達が新しい葉をせっせと伸ばしています。
まるで何事も無かったように「え?桜なんて咲いてましたっけ?」と言っているようで、今年は桜の木に儚さよりも生きる強さを感じてしまいました。

新しい季節、どうぞ皆さんが健やかに過ごせますように。

 

 

 

 

 

掌編「かがり火に揺られて」

 

 

自分の気持ちが分からない。

 

ウンスは心の中で呟くと、腕組みをして首を傾げた。

『うじうじしてないで、好きなら好きだって言っちゃえばいいのに』

そう言って女友達の背中を叩いた学生時代の自分を思い出す。

 

この人が気になるのは確かだけど・・・好きかどうかなんて分からない。
正直「苦手だ」って思ったことは沢山ある。あるけど・・・

ウンスは巡らせる程に絡まってゆく自身の想いに戸惑いながら、隣に座る高麗武士をまじまじと見つめた。

 

「・・・何です?もう酔いましたか」

 

「まだまだ。このぐらいじゃあ酔わないわよ」

 

ウンスがヨンの真っ直ぐな視線を避けるように足元へ目を向けると、松明と月の灯りが花壇の薬草を照らしている。

かがり火が風に吹かれるたび、囁き合うように揺らいで見える草花達を、ウンスは物憂げに眺めた。

 

 

半刻程前。

夕餉の後の休息時間が終わる頃、迂達赤の兵舎に医仙が現れた。

 

「隊長さん、いいお酒貰ったんだけど一緒に飲まない?お酒、強いんですって?」

 

その場にいる全ての男達の視線が、一斉にウンスへと集まる。

テマンから報告を受けたヨンは自室から降りてくると「こんな時間に何故ここへ」と、集まった視線をひと睨みで一掃し、ウンスを背中で隠すようにして外へ連れ出した。

 

すると、撒かれた武閣氏達の「あ、居ました!」「医仙様!」という声と、走り寄る足音が聞こえてくる。

ヨンは「お送りします」

と言って、ウンスの手を掴んで歩き出した。

 

 

 

「じゃあ私の部屋で飲もうか」と、如何にかして共に飲もうとするウンスに根負けして、

ヨンは通り掛かりの薬草園の石段にウンスを座らせると、自身も隣へ腰をかけた。

 

少しだけですよ。

そう言ってヨンがウンスに酒を注いでやると「あなたも飲んで」と、酌を返そうとする。

ヨンが「勤めの最中ですので」と指先でくるりと盃を伏せると、ウンスは頬を膨らませた。

 

「あのね、私だっていくら医仙様って呼ばれて崇められてるからって、何も自分中心に世界が回り出したなんて思ってないわよ?

だけどさ、一応医仙様と言われている人の言うことを少しぐらい聞いても良いんじゃないかしら。

確認するけど、今の私ってあなたより身分が上なのよね?」

 

放っておけばいくらでも喋り出しそうなウンスを面倒そうに見遣ると、ヨンは伏せた盃を戻して自ら酒を注いだ。

ヨンが、これで良いですか。という風に一息で盃を空けると、

ウンスが「あら、お酌ぐらいするのに」という声を漏らしながらも、嬉しそうに微笑んでいる。

その微笑みに、ヨンは全てを許してしまいそうになり目を伏せた。

片手で顔を拭うようにして、口元が緩んでいないことを確かめる。

 

「お互いにね、まだまだ知らない事が多いから、こうやって一度腹を割って話してみたいなって思ったの」

そうすれば、自分の気持ちもはっきりするような気がして。と語尾を濁して呟くウンスに、ヨンはもう一度視線を戻した。

 

 

 

まだまだ。と言っていた割に、医仙はあっさりと潰れてしまった。

随分と他愛の無い話しを互いに交わした気がする。

幼い頃の事、両親の事。

身内でも無い者とこんな風に気安く話したことなどあっただろうか

ヨンが宵の空を見上げながら考えていると、ふいに膝が温かくなる。

見ると、隣で前へ後ろへと揺れていたはずのウンスの頭が倒れ込み、ヨンの膝に乗っていた。

 

「チェヨン・・・」

 

口元にかかる長い髪の毛をよけてやりたいが触れることもできず、ヨンの両手は暫く宙に浮いて止まっていた。

名を呼ばれただけだというのに、身動きが出来なくなる自分に戸惑う。

 

遠巻きに警護していた武閣氏が遠慮がちに近寄り、

「お部屋にお運びしましょうか」と声をかける。

「・・・いや、いい。俺が」

ヨンは固まっていた腕を下ろし、ウンスを横抱きにすると歩き出した。

 

 

先回りした武閣氏が医仙の自室の扉を開ける。

ヨンは梁にぶつからぬように少し体を屈めて中へ入ると、そのまま寝台のある部屋へウンスを運んだ。

後ろで扉の閉まる音がする。

腕の中のウンスをそっと布団の上へ寝かせてやると、窓から漏れる月明かりが白い肌を照らす。

 

「ううん・・・」

 

先程から口にかかる髪の毛が気になるのか寝返りをしながら眉をひそめ、しきりに取ろうとしている。

ヨンは寝台の前に屈み、白い手を握ってウンスの動きを止めると、もう一方の手で髪の毛を退けてやった。

起こさぬように、頬に張り付く髪の束を纏めて指の先でつまむ。

淡い光に包まれた肌に触れると、指先に柔らかい感触が伝わってくる。

思わず吸い寄せられそうになり、ヨンは想いを断つ心地で立ち上がった。

 

そろそろ行かねば外の武閣氏達が部屋で何かあったのかと心配するだろう。

ヨンはもう一度肌に触れる代わりにウンスの頭をひと撫ですると、寝台に背を向けた。

 

 

 

誰かに抱かれて、ふわふわと揺れてる。

不思議ね。とても気持ちがいい。

今度は大きな手が頭を撫でた。

あったかい。安心する。

誰だろう。呼んでみたら、応えてくれるかしら。

 

 

 

ウンスの動く気配を背で感じ、ヨンは足を止めた。

 

「チェヨンの、馬鹿・・・」

 

(俺の夢を見てるのだろうか)

ヨンが振り向きもせずに笑みをこぼし、また歩き出そうとすると、

 

「やっぱり好き・・・」

 

心の臓が跳ねる。

ウンスの言葉に目を見張り、声のする方へ思わず振り向く。

 

「好きなの・・・お父さん・・・」

 

そう言い終わると、桜色の唇が動きを止めた。

呼吸が止まっていた自分に気付き、ヨンは、はっ。と息を吐いた。

暫く思いを巡らせたのち、

 

「俺が馬鹿。で、好きというのは・・・この方の父上へ向けたものだ」

 

ヨンは自身に言い聞かすように、敢えて声に出して心の内を言葉にすると、

まだ何か言いたげに唇を動かし始めたウンスに再び背を向け、部屋を後にした。

扉の外で歩哨に立つ武閣氏が礼をしてヨンを見送る。

去ってゆくヨンの姿が視界の端から消えると、武閣氏の一人が口を開いた。

 

「ねぇ、さっきチェ隊長、顔が赤くなかった?」

 

「ええ、耳まで赤い気がしたけど・・・お酒に酔ったのかしら」

 

「まさか。隊長が酒に酔うなんて、見た事も聞いた事も無いわ」

 

「そうよね・・・それに、何か部屋の中で呟いてなかった?」

 

「さあ、聞こえなかったけど・・・」

 

二人は顔を見合わせると、これ以上の私語は慎もうと口を閉じた。

頭上に広がる宵の空には、涼しげに微笑むような月が輝いていた。

 

 

 

やっぱり好き・・・私、あの人が好きなの・・・

お父さん、お母さん、もう少しだけここに居たいって思う私を許してくれる?・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今後も月一ペースで短文か読み切り、続き物のお話しが書けた時のみ随時更新する予定です。
よろしくお願いします(^人^)