私が乗っている列車が、国分寺駅で、先行しようとする特急電車を待っている時、誰かが線路に飛び込んだ。

私はその時、本を読んでいた。

特急電車が、ホームの途中で止まった。

男達の大声が聞こえてきたので、外に出ると、駅員が走ってきて、飛び込んだとき、あなた、ここにいましたか、あの人を見ませんでしたか、と訊く。いや。これが、残ってます。指差した先にあったものは、小さな、花柄のリュックサック。女の子のもの。パンパンに膨らんでいて、日常の生活用品を詰め込んでいたと思われる。家出少女かな。黒い大き目のスマフォがリュックの結び目の上においてある。直前にスマフォで誰かに連絡したのかもしれない。

ホームの一番右端に待機していて、身を投げた。

親に見限られたからか。男に捨てられたからか。

医者なんて来ない。車輪に巻き込まれて、十何両か連結の車両の末尾に出てきたのだから。二十人近い男達が、断片を拾い集めて、白衣でくるんて、ゴムベルトで巻いて、グリーンのシートで囲みながら、改札口の横から出した。

死体の足を見た。ヒールではない、ズックを履いていた。小さな足だった。