The train came out of the long tunnel into the snow country.

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

この原文には主語がない。外国人は当惑する。サイデンスティッカーは、trainを主語にしたが、それでは俯瞰的になってしまうとは、中村明も、指摘している通りだ(冠詞、定冠詞の使い方にも疑問がある)。

主人公島村がここにはいない。

原文は、客観描写の後、フローベール流の間接話法に移行するなどという面倒ごとは省き、夢、別世界、への移行過程を、客観描写の振りをした独白で表現している。

では、英訳はどうするのか?

以下私訳:He,in the train,went through a long tunnel under the border ,and it was a snow country.

 

ついでに書いておく。

ヒロイン駒子が、久しぶりに、島村と交尾する場面。

袖をかみ締めながら、ああ、声なんて出すもんか、と言いながらのたうつ。

中学二年のワチキは、ここで、発射した。

 

駒子は後に実直そうなその地出身の(幼なじみだったかな)男と結婚した。

 

老年に到った駒子をインタヴューした映像記録が残っている。

その時でさえ、長身、細面、切れ長の目を持つ、色白の美女であった。若い頃は、さぞや、と思われた。ウィキペディアで見ることができる駒子のものと称される写真の人物とは明らかに異なる。昔から、この写真は、駒子のだと、伝えられてきたが、間違いだ。葉子である。

 

あの通りでした、と駒子は語る。

記者が、あれこれ尋ねても、答え方は変らない。

あの方が書かれたとおりでした。

現在の亭主が傍に坐っていた。無言。

駒子は、答えながら、昔を思い出していた。

 

あの時のこと、お書きになったとおりです。

駒子は、インタヴューの最中に、目が宙を漂う。ふらり、呆然とする。

我にかえって、またくりかえす。はい、あの通りでした。