「楽園は既にどこかで構想され、実現されていてもよかったはずだ」
「構想はされただろうが実現には失敗したにちがいない。あらかじめ失敗の条件が取り除かれているここだけが楽園である。楽園があるとすれば存在条件を取り除くという条件の下でのみ存在する、という秘密の逆説に誰が気づくことが出来たろうか。異常な環境圧によってであれ、天恵によってであれ、とにかく、初めてそれに気づいた者たちだけが楽園を築けたのさ。もちろん、物質的、肉体的条件、形而下の制限はあるがね。ここよりほかに楽園の在りようはない。条件のある楽園は楽園の名に値しないのだから。ついでに言うと、ここには過去がないので、未来もなく、ということは、今以外がないのだから、今も実はない。結局のところ、楽園が唯一存在して、時間が驚異の空回りをすることによって動的平衡状態、永遠のゲンザイを保っているのだ」
「あくまでも楽園至上主義、楽園中心主義に固執するのか。レトリックに酔った挙句の独断だ。僕は科学の子だからそれに与しないね」
「ら、ら、ら、が抜けたぞ。へっ、ららら科学の子だってさ! 笑える。それこそが、独断に陥っている証拠だ。科学とは、限られた現象に合うようにつじつまをつけるのに熱中する〝オタク〟らが落ち込んだ陥穽に過ぎない。そんなものの結果を拡大適用されては迷惑だ。科学的解析とは何であるか。言ってやろうか? それは、自らの無知を知るに留まるべく運命づけられている徒労だ」
「歴史的にそれは間違っている!」
「どこのどんな歴史だ? すべての悲惨をもたらしてきた歴史に、どんな言いわけがあるのか? 言ってみろ! どこのどんな歴史であれ、歴史が、間違っていたのだよ。歴史のしがらみから脱皮しえたからこそ成立した楽園は、歴史の持つ危険を鑑みて、歴史を殺したんだ。存在条件を消すことによって成立する存在の必然的な成り行きだ。
神が死に、歴史が死に、国民国家が死に、主体が死に、大衆が死に、ついに、ついに、我々だけが昇華して、この高みにまで達したのだ」
「堕ちるところまで堕ちたとも言えるぞ」
「だまれ! かつては唯一者にしか許されなかった象徴に我々すべてがなりおおせた。一者が全員の象徴となるのではなく、全員がひとつのものの象徴となった。個々の市民すべてが、唯一存在している楽園を象徴している。楽園は、帰納的にではなく演繹的に成立している現実の共同体なのだ。論理的かつ現実的にそうである。この極限的認識と最終的現状を、全市民が共有している。ポピュリズムや洗脳とは無縁だ。誰もそんなことをしない。だれもそんなことをされない。市民の、つくづくの実感に保証された、市民の、市民による、市民のための根底的民主主義の実現。壮大な実験だ。が、いまや、その実験段階を越えて、もう既に、市民は、象徴的でありながら現実的に、生まれ暮らし死ぬことによってこの根底的民主主義を実証している。享受している。市民は一生を楽園で暮らし、悔いなく死ぬ。見かけ上の、表現型上の個体差はあるし、そのせいでの小競り合いはあるだろうが、細胞の一つ一つが生命体全体を潜在的に保有するように、それぞれが、楽園全体を内包しているので、差や争いは、単なる……」
「単なる冗談に過ぎないとでも言いたいのか?」
「ああ、そうだ。言ってくれてありがとうよ。冗談だ。個々が根本のヴァージョンであるのだから、揺らぎは冗談に過ぎない」
僕は、差や争いだけでなく楽園全体が冗談だと思っている。モーゼもそう思っているはずだ。彼の発言、『冗談、冗談、みんな冗談よ』の中の、みんな、は、楽園全体を指していたのではなかったか? 何を指しているかで意味が逆転するはずだ。
「いいか、もう一度言うからよっっく聴け。個々の市民の正体は、同一の楽園自体なのだ」
僕も負けずにもう一度、ヘレンを思いながら、少なくとも一名の反例が存在する、とひとりごつ。
「立法も行政も司法もない純粋明快な昇華体、現の現在に、現世に現われた奇蹟のニルヴァーナに、一闖入者に過ぎないパラサイトである君ごときが、ケチをつけるな!」
白っ子は水面を叩いた。ケチをつけるなと怒鳴った声は、興奮のあまり震えていた。
「ケチをつけるやつは、復古主義者だ、反革命だ!」
「ケチをつけるなんぞというケチなことをする気は毛頭ない。僕はもうここで生きているのだし、これからも生きていこうと決めているのだから、僕のする批判とは、ケチをつけるなんぞのレベルの話ではない」
「どんなレベルで楯突こうと、楽園は痛くも痒くもない。万一痛い場合でも免疫と修復の力によって、痛みは飛んでいく。痒い場合は、掻いて終わりだ。なにせ、楽園は一個の生命体だからな。実体なんだよ」
「違う」
「違わない。自律的に生きているのだ」
「違う。あくまで生命体モデルだ。ひとつの理念に過ぎない。しかも悪しき理念だ」
そう言ってから、ぼくはぞっとした。もしも極めて正確な生命体のモデルだったとしたら、そしてその可能性がありそうなのだが、理念が悪である以上、生命自体もまた悪となりかねない。この帰結は考えるだに恐ろしいものだ。この星には生命が生まれるべきでなかったことになる。が、気を取り直して発言した。
「何のために、君たちを追って、ここに来たのか、今、確認したよ。根本の動機を明確にしてくれたことに感謝する」
「自惚れてはいけないぜ。君は、高々、衛生施設を変更し、火刑場を作っただけだ。全く評価しないとは言わない。特に、火刑場は戦争の際に有効だ。投石だけの場合と較べて、処理のスピードがやや増したという程度の有効性だがね、ふんっ」
「火刑場ではない。火葬場だ!」
火刑場と化したのは事実だ。それを思うと自分が火あぶりになってもかまわないほどの自責の念に駆られる。どうやって消したらいいかを日夜考えている。火をつけるのは簡単だったが、庇の架かった岩だらけの地に広がった火を消すのは難しい。しかし、どうにかして水を調達し、早く消さねばならない。本当はこうしてはいられないのだ。消した後の代替案も考えている。遺体を、鴨川の冷暗な洞窟でミイラ化するか、洞内の翼手竜によるチョウソウに供するか、それとも……、いや、これは考えたくない。
「残念だったな。意図と結果はとかく食い違うものさ。まあ、とにかく、我々の共有する真実を理解できない蒙昧ぶりにはがっかりするね。ふむ、やっぱり、殺しておいたほうがいいかもしれない」
「そういうことを平気で口にするんだな。正体が見えみえだぞ」
正体が見えたぞ、という言葉が、どこかを突いたのだろうか、ふと、白っ子1の全身から力が抜けたように見えた。体が沈んで行く。僕に落胆のあまりに?
「はいはい、冗談だよ。少なくとも私は君を殺さない。理由はね…… 
戦略的にはすべての敵を軽視すべきだが、戦術的には逆だ、と誰かが言ったそうだが、戦略は市民が立てる。いわば全であり一である楽園が立てる。というより、自動的に立つ。無視に近い軽視に基づいて。モーゼは戦略の象徴でもある。我々が戦術を受け持ってきたと言ってもいいところなんだが、どんな戦術でも実現できたので、つまりなんでもよかったのだ。ここのところで、格言は楽園には適用しなかった。だから愚かにも敵を戦術的に重視してきた我々は軽視されてもいい。もう消えてもいい。
君には或る役割はあるだろうがねえ。それが君を殺さない理由だ」
口調と態度がいやに優しげなものに変わったので気味が悪くなった。僕より少し歳が上の、施設で同期の者だと思ってきたが、見た限りではいかにも年齢不詳なので、勘違いしているのかもしれない。もしかして一世代上の生き残りかもしれない。
「僕の役割は何だろうか。僕が決めてもいいか?」
「いけないと言っても、君のことだ、耳を貸さないだろうな。我々は君を監視し続けるがね。私は、君が、ここを変えるのどうのと豪語する暇はなくなり、生活の瑣事のしがらみに捕らわれて、早々に同化、じゃなかった、同一化することに賭けているのだよ。君は早晩楽園自体の持つ生きのびる力に身を任せることになる」
僕は、アルファを抱っこし、ベータと手をつなぎ、ヘレンと笑い合っている自分の姿を想像する。
「その力はどこから生まれるのか」
「生まれるというのはどう意味かねえ」
「言い直そう。生命力は前提になっているようだからね。それが解放される仕組みはどんなであるのか?」 
「市民が現在を維持しようとする望みによって力は発現するんだ。願望が力を解放する。つかみどころのない願望一般なんぞではない。具体的な場所と時に作動する、メカニズムのための個々のスウィチなんだよ。今さっき過ぎたばかりの事象の再生を願望してスウィチを押す、体が動く、また押す、また動く。この連続が日常だ。この無限回繰返しの日常を担うのが市民だ。こりゃまあ、ほとんど市民の定義になってるなあ。生命は、市民の不断のスウィチ行動によって、有り触れ至極の日常として顕然するんだ。
まあ、いい。無力な者が生命力を語るなんて、語るに落ちるからもう止めだ。
君が白っ子と蔑称する我々は(おや? どうしてそれを知っているのか、寝言を盗み聞きでもされたのか?)、用がもうない。力がないもんなあ。ただ去り行くのみだ。
我々が去った後、速やかに我々が忘れられれば幸いだ。それこそが本来の姿だ。我々が消えることと我々に接触してきた者達の我々に関する記憶が消えることとが同時に起きるとしたら、なんとまあさっぱりしていていることか。素晴らしい。だが、我々を真似する素人が慣れない発言を続けるという可能性がわずかにある。素人とは君かもしれない。君は市民としては一番の素人だからね、別の者かもしれない。忘れる前に、既に現時点で、真似を繰り返しているので、その行動形態が記憶に残ってしまうかもしれないのだ。そういう者が、へまを続けても、それに気づかずに足踏みして、危うい鞍部に乗って均衡を保っている民主主義を揺すぶり踏み破るかもしれない。何かが起きたとき、それを統御できるかなあ」
「民主主義を統御するとは語義矛盾だろう?」
「違う。ナイーヴすぎるよ、キミー。危機の際に統御のない民主主義などどこにあるか。脳内のどこを探してもみつからないぜ。この地の究極の民主主義は、危機に面するや、極端な統御体制に一変するだろう。それは不可避なことだ」
「では、誰がどう統御するのか」
「市民と協力して君が、君流に、統御するのだ。そして闘うのだ。襲い掛かってくる危機に対して」
何でこんなところにまだ碌すっぽ市民になりえていない僕が出てくるのか分からない。白っ子1はとてもとても変なことを言い始めた。
「何かが起きるだって? 危機だって? どんな危機だ」
「それは我々にもわからない。あらかじめはわからない事象が真の危機だ。しかし……」
「しかし、なんだ?」
「しかし、矛盾するようだが、予兆は感じる」
「どんな予兆だ」
「何者かによる破壊だ、下手をすると破滅を、全滅をもたらす破壊だ。存在しないはずの他者が立ち現れるというとんでもない事が起きる気がする。戦略的に極めて重視すべき敵がやってくる気がする。君はそれに立ち向かわねばならない。同化して、しがらみにまみれつつ、個別特殊事情、喜怒哀楽、人生のその時その場の危機に悩みつつ、対応しつつ、なおかつ、立ち向かわねばならない。でっきるかなあ?」
再び想像する。僕は、アルファを抱っこし、ベータと手をつなぎ、ヘレンと笑い合っている。
「何の根拠で僕がそうしなければならなくなると言えるのか」
「それもすでに分かっているはずだと思っていたが、思い過ごしか ふん! 私の配慮がどんなものか君は分かっていない!」
「どういうことだ。あんたに配慮される筋合いはない」
「君はさっき私になんと言った? もう忘れたのか? とても市民っぽくなったなあ、ははは。よーく今までのことを思い返せばわかる」
白っ子1は深々とため息をついた。体が沈む。閉じた目が水没するほどに仰向いて顎を上げ、空気を吸った。僕は、……実は、白っ子1が言うように、ちっとも分かっていない。口悔しい。
「ああもう、君が馬鹿だから、こっちはまた、愚痴るしかないなあ。我々は無力だ。ひしひしと感じるよ。まさに滅び去ろうとしているエスニックだ。我々は全員が糖尿病患者であり、重症肺疾患患者であり、循環器障害者であり、癌患者だ。ウイルスに罹って集団ごと死にかけている。弱い生命力を持ってしまった種族の宿命であるのだよ。原因も見当はつくが確かではない。それを究明する気力もないし、そうすることにもう意味はないと思う。あのねえ、本当のところは、見当がついていた時もあったが、今となっては定かではないということさ。なにせ、忘れちまったもの。私は、自らを規定していた内容と形式を、もういつでも捨て去る気になっているのさ。この二つを忘れる前に、こちらから葬ってやろうかねえ」
僕は白っ子1を凝視してしまった。テキは空を凝視している。空のそのまた奥を、のような気もする。そして、その奥から降ってきたような不思議な言葉が聞こえてきた。
「短い時間であれ生というものを味わえたことを幸せに思う。垣間見た世界の豊饒は、とても味わいつくせるものではなかった。おぼろげな記憶を頼りに言っているのでね、とても味わいつくせるものではなかったはずだと訂正するよ。ああ、この生の奇跡の、なんと美しかったことだろうか、と言いたいところだが、残念、こう言うしかない、なんと美しかったはずだったことであろうか!」
あろうか、という詠嘆によってもたらされた油断に陥り、溜め息を長々とついたせいで、背が曲がり顎が沈んだ。浮き上がろうと大きく息を吸い込んだが、一緒に湯を飲み込んでしまった。さっきまで時々聞こえていたのとは異なり、僕が奴隷だったころ、下水溝で汚物を掻く時にしょっちゅう聞いていた音がした。白っ子1は、両腕で繰返し湯を押し付けて身を浮かそうとしたが空しく、まさか、今すぐだなんて冗談だろう、と訴えている目を、精一杯見開いたまま、沈んで行く。
湯の中からでも僕を見つめている。
ただごとではない。いかん。冗談の、あるいは、必然の、死がやってきたのか?
「おい、だいじょうぶか!」
岸辺のどこかで、呼び子ではなく、口笛が鋭く吹かれた。次々に飛び込む者がいる。空中で体を伸ばすのではなく、膝を抱え込んでボールとなり、着水した瞬間に両脚を伸ばして湯面を蹴り下げ、両手を水平に横に広げて湯面を叩く。湯煙が高速で開花する白つつじのように舞い上がり、その中心に、体の作る十字架が打ち込まれ、急ブレーキをかけられて一瞬静止する。いくつもの十字架が突き刺さった白っ子1の周辺は、まるで……まるで墓地の一隅のようだ。僕も抜き手で近寄ろうとしたが、太い腕でもって後ろからはがいじめにされた。

湯冷めした体で、前とは別のトネリに先導され、河岸段丘の裾に沿って下流に向った。右手の崖には、大小の横穴が穿たれているが、中に誰かがいる気配はしない。幾つ目になるのか、それまでのうちで最も小さな、棺のような横穴に案内された。入り口には、竹の皮の上にスポンジと木の実と乾燥させたタロイモが置いてあった。興奮の続いたせいでなのか、空腹なはずなのに食欲は湧かない。僕は以前頭から潜ってつっかえて出られなくなりパニックに陥ったのを思い出して足から入った。頭頂がわずかに外に出る程度の位置で横になった。中は暖かいので体も温かくなり弛緩してきたが、僕の脳の中はそうならない。
眼前に迫る天井の数箇所から不定期的に落ちてくる水滴のせいで寝付けない。首から下に落ちるのもあるが、それは我慢できる。顔面や頭部に落ちるしたたりが厄介で、落ちるたびに、ぎくりとする。右に左に顔を背けていると、たまたま瘤に水滴が当たった。これが気持ちよく、うとうとしたが、首筋に落ちてきた一滴で目が覚めた。外はかなり冷えているはずなので出る気にはなれない。そのうち疲労に負けて眠るだろうと思ったが、どっこい睡眠と覚醒の間を頻繁に往復する羽目となった。右足はまだかすかに痒いし……
……楽園は一個の生命体であるvs楽園は一個の生命体モデルである…… 進化が早すぎ、ショートカットを辿った痕跡がある。神の手によるマシーンとしか思われない…… あるいは、帝国は実現した夢かもしれない。ただし、仰ぎ見て望み焦がれる夢ではなく、地の底から湧き上がってくる高熱の泥土のような悪夢だ…… ヒトミの夢をみた。トネリに導かれて温泉池に向かう途中で、殺されるかもしれないという疑惑に後をつけてられている感じがしたが、はるばる紫野から確実に尾行してきたのは官能だった…… 余韻となってこちらの隙を狙い続け、湯煙がこの岩屋に忍び込むように眠りによって緩まった抑圧の扉から侵入し、ヒトミの姿となって僕を捕らえるや、纏わりついてきた。接触感の具体性は驚くべきで、表皮の外側を擦るヒトミの右掌に内側から仮想の左掌を重ねあわせ、表皮を挟んで合掌したまま追うことさえできた。背中、横腹、内腿、要するに全身、特にすべての開口部の表面すなわち鏡面を、映るものと映されるものが、触るか触らないか程の圧でもって、経巡った。一方的で遠慮会釈もない何かが止めようなく湧き上がってきて、僕はどうにも我慢が出来なくなり、ついに、嘗て取ったことがない姿勢で、男子ヒトミと、おこなってしまった。ヒトミは、あんなにいい声なのに、声を出さなかった。恥ずかしながら僕は出したかもしれない…… 夢精してしまった。夢うつつに左手で局部を触ると粘っていた…… 明日ヘレンに謝らなければ…… えっ? まったく、もう、バカじゃないか? 何で言う必要があるんだ。ヘレンだって困る…… だが、このこと以外のヒトミとのことは言っておこう。キスしたことも言うのか? さて、どうしよう…… ヒトミには、ヘレンとのいきさつを言おう。早くヒトミに会いに行かなくては。夢に出てくるほどにヒトミも僕に会いたがっているのだし…… モーゼとヘレンについて話し合おう…… やっぱりアルファとベータを育てなくては…… 浮舟にどういう態度をとっていくつもりだ? …… 三者会談……… 僕は自己批判してしまうだろう……
……白っ子1は溺れ死んだのか? 男たちが逆さに抱え上げて水を吐かせていたが…… 白っ子1の発言の、半ば以上は、以前から僕が見当をつけていたことだった。では、残りは? 僕が、これから、見当をつけるはずのこと、可能性として考慮するはずのことではなかったか? 唖然として聞いていたなどと自分を偽るな…… ぞっとするような疑惑が眠気による意識の混濁に乗じて浮かび上がってきた…… 白っ子1は、ホントウニ、あそこに浮いていたのか? 「私と今話すときにも私のように話してごらん。ためになるだろうよ」…… あいつのしゃべり方に、似ないように、似ないようにと、要らぬ努力をしてしまったが、結局感染してしまった…… もともと似ていたのだから無理はない?…… 何であいつは僕に白っ子と呼ばれているのを知っていたんだ?…… 突然、僕の体に、高圧電流もかくやと思われる戦慄が走った。冷や汗が一滴、わき腹をぎこちなく辿り下りて行くのを感じた…… 本当に感じているのか? それとも、驚愕夢なのか?…… 僕は覚醒しない。陥っているのは疲労から来る麻痺なのか? それとも、レム睡眠なのか? 金縛りになりそう…… ああ、あれは、あの時の白っ子1は、硫黄の毒に侵されて頭のおかしくなった僕がでっち上げた幻影だったのではないか?…… 僕は、自分を相手にしゃべっていたのではないか?
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やけどのような太陽が昇った。まぶしい朝だ。自己批判するにはうってつけの、まぶしい朝が来た。

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