W氏から電話。今の首相に対しての不信を、延々と聞く。山口瞳の話もした。エヴリマンと国立日記。

私は、山口瞳に会ったことがある。死ぬなと思ったなあ。

W氏の奥さんは、電話に出ない。

U子さんという。結婚する時、W氏と一緒に私の家に来た。ラブラブ、おのろけ、みんなで笑いあった。

W氏がトイレに行ったとき、U子さんが、私に、結婚してくれない? と言った。

U子さんは、私の教え子だ。学年で一番の、利口な子だった。彼女が二十代のОLだったころ、私は誘惑された。私はある程度までは拒否した。だが、タクシーで、多摩川のほとりの連れ込み旅館に行ってしまった。

結婚してくれない?

私は、W氏のために、涙が溢れそうだった。女とは、こうなのか。私は、どれほど悪いのか。彼らの挙式後も、私はU子さんと、触りあったことがある。

W氏が、どこまで知っているのか分からなかった。

U子さんに聞いたことがある。ご亭主にどこまで言った?

全部言ったわよ。知った上で、あんたとつきあってるのよ。

W氏には畏れ入る。ちょっと真似できない人格者だ。人格?



バロックに戻るか、前衛に走るか。音楽についてだけではない。私は前衛をやる。バロックは鑑賞する。



振り込め詐欺が通用する理由を、私は体験的に理解する。

高校生の時に、ヒッチハイクで旅行している最中、長く高い石の階段を上って、寺院の前に着いた。

すると、宿坊から老女が出てきて、ナオキ、帰ってきたの、という。違う、違う、といっても聞かない。孫と間違えている。そんなこといっても、やっぱり、ナオキじゃ。ばあちゃんを、ごまかすんじゃねえ。私は、ナオキになってしまった。大きな寺院に向かって、おうなは叫んだ。おーい、ナオキが帰ってきたぞな!