小学五年生のとき、担任の広田先生がおっしゃったことには、

日本が戦争に負けたのは、食い物のせいだ。

欧米人はたんぱく質を大量に摂る。

日本人は炭水化物を大量に摂る。

炭水化物は毒だ。

特に白米は、体への負担を多くするばかりだ。

結局頭が悪くなる。

だーかーらー戦争にも負ける。


現代の炭水化物カットダイエットのはしりだ。


少年の私は、頭が悪くなるのはごめんこうむる、と恐怖した。


十歳から三十五歳まで、私は、米を食べなかった(正確にしておきたいので白状するが、寿司だけは許した)。麺類も、パンも食べなかった。とにかく炭水化物を摂らなかった。おかずっ食いといわれていた。広田先生の教えを四半世紀守った。つまり、二十五年間炭水化物ダイエットをし続けてきたのだ。


三十五歳段階で一緒にいた女が、ご飯を食べてくれないと困ると主張し、頑として譲らなかった。

私は泣く泣く原則を崩した。

私の身体は、炭水化物飢餓状態から脱し、反動で、待ってましたとばかり、いささかの漏れもなく、炭水化物を吸収し始めた。


三週間で10キロ太った。

ああ、美しかった私はどこへ行ったのか。


このころだ、この女と別れようと考え始めたのは。