子供の頃は魚釣りではなく魚獲りに夢中だった。

大人になって開高健を読んでいる最中も、面白そうだとは感じたものの、それを実践はしなかった。

ある男が強引に私を夜釣りに誘ったことが、引きがねとなった。


特に川幅の広くなった多摩川の、岩の突き出た岸に陣取り、向こう岸を見ると、岸辺の草むらや潅木に潜む蛍の大群が、ハモって明滅していた。

真夏なのに、クリスマスの電気仕掛けみたいだ。

見ているうちに、私の呼吸が、明滅にハモってしまった。


都会を突っ切っているものの、川は、山から海へ、自然天然を保ち伝える通路なのだと悟った。


蛍の大群に向かって、練り餌を垂らした釣竿を振り、ぶち当たらないように少し手前で水面に落とす。

練り餌が水面に当たるとき、蛍たちは一瞬息をひそめる。リズムが狂う。すぐさま、ぞろぞろ立ち上がったかのように、一二度調整して、また前と同じに明滅する。


遠くの鉄橋を渡る電車の音を聞いていると、スタンドに挿しておいた棹の先の鈴が鳴った。取り上げてぐいと引くと、ドリン、ドリン、ドリン!ドリン、ドリン、ドリン!

暗夜の水底に潜む有機体が突如痙攣し躍動したのが、文字通り、手に取るようにわかる。


こんな経験をして、はまらないはずがあろうか!