祖父金吾は、軍人であることを辞めて、お孝さんの父親の会社に就職した。

きわめて有能だったそうで、娘婿だからというわけではなく、社員たちが応援して、重役になった。

ところが、大失敗をやらかした。

ひとつは、ある漁場で、網が破け、魚が一匹残らず逃げてしまったのだ。

もうひとつ、詐欺に引っかかってしまった。

お孝さんの父親は激怒した。

裁判では勝って、相手は、新潟刑務所にぶち込まれた。

だが、金吾は、責任を取って、会社を辞め、なんと離婚し、新潟刑務所の近くに下宿を借りて、刑務所内の債務者と、金網を隔てて交渉に入った。

お孝さんは、茫然自失。

ある夜、新潟を目指し、幼い私の父を抱いて、函館の屋敷から出奔した。