築港から志賀島へ。振動に弱い。眠ってしまった。
港についてすぐのところで、屋台のようなリヤカーのような台車の上に、野菜と果物をひろげて売っているおばはんと仲良くなった。
みーんな、うちの庭で取れたのだわ。畑でなく庭? 畑も庭もないわ。区別がないということだね。野菜や果物の一部をちぎって私によこしながら話をする。ほおっといても出てくるよ。完全無農薬農法の実践例だ。夕方買いに行ったらもういなかったな。
弘漁港までバスで。目指す海鮮料理屋わきは、歩いて十分ほどだと、おやじが言う。おやじがすり足でじわじわ歩いているので、あっという間かと思ったら、まあまああった。葦と竹が海岸に茂り、それが切れると、島々と半島が灰青色から群青色までのグラデーションをなしながら重なってる絶景が拝める。向こうに見える大都会は幻想で、骨格明瞭な地と存在感縦横の海があたりを制している。
わきの生簀では、歯をむき出した大鯛が、何かを語るように口をパクパクさせながら私を見つめる。
海鮮どんぶりが、おいしくておいしくて。刺身ではなく切り身だね。噛んでも歯と歯が噛み合わないほど分厚い。こりこりしている。
弘に帰ってサザエのつぼ焼きを食べた。一個百円。
バスの便が午後は極端に少ない。下りはあるので島の北端まで行く。磯が延び、白浜もあり、沖合いに岩礁がぽつぽつ聳えるすばらしい海水浴場を見つけた。映画で使える。陽が沈む時にはどんな光景が出現することか。ここに長逗留したくなった。
志賀島港に戻る。そこの海水浴場を散歩する。ガキのころ、ここの沖で泳いだことがある。どこからか土座衛門が流れ着いて、警察官や消防士が来たなあ。
船で博多についた頃には、山笠の流しは終わっていた。電車で唐津へ。
お目当ての寿司屋の灯が消えていた。ホテルに入る。
松浦川は、河口近くで、利根川よりも幅広く膨らんで、半島の先を掠めて海に入る。半島の指差す先に、ライトアップされた唐津城がある。その右側では、湾内に海水が溜まり静まり、その向こうにいくつもの島が、遠く近く点在する。眼が痛くなるほどの立体的な絶景だ。私は、高一の時、九州一周旅行を敢行したが、まずこの唐津の、遠近法に激しく訴えかける地形の構造に圧倒されたものだった。
川も海も見られる最上階のこんないい角部屋に当たって幸運だった。