イスラエルとイランの戦争についてですが、この原稿を書いている6/24の前日の6/23にイランから「ショー」としての米国への報復攻撃があり、カタールにある米軍基地にミサイルが撃ち込まれました。
もちろん、この攻撃もイランから事前通告をされていたし、米国はカタールから主要な戦闘機等をだいぶ前に避難させていました。ですから、 ほとんどダメージは受けなかったし、人が死ぬこともなかったようです。
つまり、米国が今週日曜日に行ったイランの3か所の核施設の攻撃も、それに対するイランの米国への報復攻撃も、「象徴的なショー」に終わり、双方に人的被害は出なかったし、イランの核施設の被害も軽微なものに留まった ということです。(イランは米国からの攻撃の後、イスラエルのハイファやテルアビブにもミサイル攻撃を行っているので、そちらのほうではイスラエルの防空が もはや機能しなくなってきていて、被害が出ているようです。)
そして、この原稿の下書きを書いている6/24の時点で、トランプ大統領が 「イスラエルとイランが停戦に合意した」と発表しました。
その後、私はイスラエルのメディアとイランのメディアの両方をチェックしたのですけど、イスラエルのメディアでは停戦合意について触れているものの、イランのメディア(PressTVやPars Today)では停戦合意など、何もニュースになっていないのです。
↓(日本語に変換したもの)
(上の記事:停戦について伝えているイスラエルのメディア、THE TIMES OF ISRAEL
私は この停戦は長くは続かない可能性が高いのではないか と思っています。
なぜならば、イスラエルが過去に合意したハマスやヒズボラとの停戦で、いつも停戦を破って攻撃していたのはイスラエル側なのであって、今回の停戦もその可能性が高いと思います。
また、このイスラエルとハマス、ヒズボラ、イエメンのフーシ派、イランとの紛争が起きている根本原因が 2023年10月8日やそのずっとずっと前から続いているイスラエルのガザのパレスチナ人、ヨルダン川西岸のパレスチナ人に対しての虐殺や不当逮捕なのであって、その根本原因があったので、イスラエルが「テロ」と呼んでいる2023年10月8日のハマスの作戦が起きたのです。
その根本原因が何も取り除かれず、ガザでは相変わらず、毎日数十人から数百人が虐殺、食料配給の列に並んだだけで撃ち殺される ということが日常茶飯事になっています。
ガザでのパレスチナ人の犠牲者も5万人を超え、この記事の下書きを書いている時点で55,297人にまで膨れ上がっています。
周辺の湾岸諸国のイスラム教徒やトルコ等は パレスチナ人が包囲されて食料も与えられていない状態で子供たちが飢餓で死んでいっていることに、イスラエルを口で非難だけはしても ハマス以外に実際に「レジスタンス」という形で実際に行動に移しているのが ヒズボラ、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ)、イランくらいしかないのです。
ヒズボラやアンサール・アッラー、イランは イスラエルから空爆されて自分たちの命まで犠牲にするリスクを冒してイスラエルに強く抗議をし、パレスチナ人への連帯の意志を表明しているのです。
そして、今回トランプが発表したこの停戦をしたがっていたのは イラン側よりもイスラエル側でしょう。
イスラエルには防空ミサイルの在庫があと10日分も残っていない とも言われていました。
1つのミサイルに対して迎撃の為には 2発とか3発とかの防空ミサイルを撃っていて、今のようなペースで長期間の防空ミサイルの消耗を続けられるはずがありません。迎撃ミサイルの米国での生産のほうも追いつきません。
一方のイランも 当初の1日に200数十発とか、100数十発という多数のミサイルを発射することはなくなり、最近は1日数十発
に減っていましたが、これを見て「イランはミサイルの在庫が尽きている」というのは間違いです。
なぜなら、イランは3000~4000発のミサイルを持っている と言われていて、1日100発のミサイル発射を少なくとも30日間連続で行う程度の在庫はあるのです。ミサイルを使ったイランの反撃開始からはまだ10日程度であって、イランが100発以上のミサイルを撃ったのは最初の2~3日だけでしたので、まだ使用したミサイルの数は1000発にも満たないのではないでしょうか?
イランのメディアが 「まだ30%の能力しか使っていない」と言っているニュースも私は見ましたので、そうなると、やはりイランがこれまでに使用したミサイルの本数は1000発にも満たない可能性が高いと思います。
そして、イランが最近は数十発の発射に抑えていた というのは 西側のプロパガンダメディアの言うような「ミサイルの在庫が尽きてきたから」ではなく、私は イランは”消耗戦”を見据えた戦いへと戦法を変えた というふうに見ています。
ウクライナでの戦争を見れば分かる通り、西側の国には アメリカやイギリス、フランス、ドイツも、「長期戦を戦える」軍事生産力というのがありません。それはNATOの事務総長マーク・ルッテ氏も認めていて、NATO加盟国全部が1年かかって生産する量の砲弾を ロシア一国で3か月で生産できている と言う位の軍事生産力の差があります。
イスラエルの場合は ほとんど米国頼みですから、防空ミサイルが枯渇してきていることでも分かるように、長期戦を戦う能力も無いし、最初から「短期決戦で勝つ」という甘い見通ししか立てていません。
昔イスラエルが戦った4度の中東戦争では 10か月続いた1948年の第一次中東戦争以外は いずれも数週間とか数日とかの短期決戦でイスラエルが勝利しているので、その時の成功体験もあって、イスラエルは空軍力を最大限に使った「短期決戦」という戦い方しか眼中にないと思います。ですから、軍隊もプロの兵士ではなく、普段は別の仕事をしている予備役が中心という状態なので、兵士の多くには モラルも能力も両方が欠けている状態です。
一方のイランは 最初のイスラエルのイラン国内からの破壊活動によって防空システムを失うという痛手に遭い、人的被害は430人以上と、イスラエルよりもはるかに多くなっていますが、そもそもイランの人口も9000万人に近いのでイスラエルの10倍いて、彼らは過去にイラン・イラク戦争で8年間にも及ぶ苦しい戦いをし、当時欧米の支援を受けていたイラクにサリンやマスタードガス等の毒ガスまで使用された困難なイラクからの侵略をイランが跳ね返した という事実も忘れてはなりません。
つまり、どう見ても 歴史的に見て 長期戦や消耗戦に強いのは イランやロシアのような歴史的な粘り強さを持っている国なのであって、消耗戦に弱いのがイスラエルや米国(米国はベトナム戦争で消耗戦に弱いことが露呈)なので、イランよりもむしろ、イスラエルのほうが停戦を望み、トランプに仲介を依頼したのではないか と私は見ています。
ですから、ネタニヤフが「”核施設の破壊”と言う目標は達成された」等と、事実とは全く違う嘘を言って停戦の宣言をしたのです。