日本時間で日曜日に実行された米トランプ政権によるイランの核施設空爆についてですが、面白い記事を見つけたので、本日ご紹介したいと思います。
最大で地下60mまで破壊できる というバンカーバスターGBU-57 MOPですが、そもそも、今回この爆弾が12発も使われたフォルドゥ核施設というのは地下80~90mのところにあると言われていて、しかも地形が山地になっていますので、綺麗に垂直の角度で地面に刺さるということはそもそも無理なのであって、米国防総省関係者がそのことを知らないはずがありません。
それなのに、3か所の核施設を「完全に破壊した」とトランプがアピールしたのは トランプ氏が全く正しい情報をもらっていなくて「裸の王様」状態になっているか、もしくは ネオコンとネタニヤフへのアピールの為、破壊できないと分かっていて「破壊したフリ」をしているかのどちらか だと私は前の記事で書いていたのですが、どうも後者の「破壊したフリ」をしている可能性が高まる記事が出てきていますので、本日ご紹介します。
それは下の記事です。
↓(日本語に変換したもの)
Exclusive: Iran given advance notice as US insisted attack on nuclear sites is ‘one-off’
(和訳開始)
独占:米国は核施設への攻撃は「一度限り」と主張し、イランに事前通知
ドナルド・トランプ米大統領は、イランの主要核施設3カ所が「壊滅状態」にあると述べ、「早期に平和が訪れなければ」さらなる攻撃を行うと警告した。これは、Amwaj.mediaが米国がイランに攻撃を通告したという情報を得たことを受けての発表である。匿名を条件に、イランの高官政治筋は、トランプ政権が6月21日に全面的な対決を求めておらず、フォルドゥ、エスファハーン、ナタンズの核施設のみを攻撃する意向を伝えたことを確認した。このメッセージは第三者によって伝えられたとされている。重要なのは、高官筋が、標的となった施設から避難させ、イランの濃縮ウラン備蓄の「大半」が安全な場所に保管されていることを確認した点である。
詳細: 米国の爆撃は、この地域の米軍基地から実行されたものではないようだ。
報道によると、少なくとも3機の米国から飛来したB-2爆撃機が、フォードウ地下ウラン濃縮施設に13.6トン(3万ポンド)の大型貫通爆弾(MOP)6発を投下した。(注:この記事では6発となっていますが、12発が落とされたと言っている専門家(スコット・リッター氏等)もいます。)専門家は、フォードウの2つの主要入口にそれぞれ2発ずつ爆弾が投下され、換気口にも2発のMOPが投下されたと推測している。
潜水艦がナタンズのウラン濃縮施設とエスファハーンの核施設に向けてトマホークミサイル30発を発射したとみられる。注目すべきは、両施設ともここ数日イスラエルによる爆撃を受けていることである。
CBSは「有力筋」を引用し、「エスファハーンとその地下施設はおそらくフォルドウよりも攻撃が難しい標的だった」と報じた。
被害:トランプ大統領は6月21日の声明で、標的となったイランの施設は「完全に壊滅した」と述べ、今後起こりうる攻撃は「はるかに大規模で、はるかに容易になる」と警告した。
ワシントンに拠点を置く民主主義防衛財団(FDD)の事務局長は、「イスラエル側の信頼できる情報筋」の発言を引用し、「今回の攻撃でイランの核開発計画は終結したようだ。24時間以内に確認できる。最後のステップは核施設から核物質を撤去することだ」と述べた。
しかし、被害評価を可能にする初期データはまだ不足している。爆撃に先立ち、いくつかの研究では、フォルドウの深さは約80~90メートル(262~295フィート)と考えられていることから、同じクレーターに複数のMOPを投下する必要があると示唆されていた。
反応:イラン当局は、フォルドゥ、エスファハーン、ナタンズの核施設が攻撃を受けたことを確認した。しかし、その他の詳細は公表されていない。(注:イラン側は3施設とも「軽微なダメージしか受けていない」と発表しています。)
イラン原子力機構(AEOI)は現地時間22日未明に発表した短い声明で、米国の爆撃は「国際法、とりわけ核兵器不拡散条約(NPT)に反する残虐な行為」だと激しく非難した。
AEOIは国際原子力機関(IAEA)を非難し、米国の攻撃は「残念ながら国連の核監視機関の無関心、さらには支持の影で実行された」と述べた。
AEOIは、「偉大なイラン国民に対し、敵の邪悪な陰謀にもかかわらず、数千人の革命的で意欲的な科学者や専門家の努力により、この国の(原子力)産業の発展を阻止することは決して許さないことを保証する」と述べた。さらに、「法的手続きを含む必要な措置を議題に挙げている」と付け加えた。
将来:既にイスラエルから激しい攻撃を受けているイランは、米国との同時全面戦争にはほとんど関心がない。6月21日の爆破事件以前、イランはトランプ政権との核交渉再開に前向きであると宣言していたが、それはイスラエルが攻撃を停止した場合に限られる。
「彼らは直ちに和平を結ぶべきだ。直ちに停止すべきだ。さもなければ、再び攻撃を受けるだろう」と、トランプ大統領は6月21日深夜(米国東部夏時間)に予定されていた発言に先立ち、短い電話インタビューで述べた。公式声明では、「まだ多くの標的が残っている。今夜の攻撃は、これまでで最も困難なものだった。…しかし、もし和平がすぐに実現しなければ、我々は他の標的を精密、迅速、そして巧みに追及していく」と付け加えた。
イラン側は米国から、より広範な紛争を望んでいないという事前通告と非公式な連絡を受けたと言われていることを考えると、トランプ大統領は2020年1月の出来事の再現を望んでいるのかもしれない。後者は、トランプ大統領が当時のコッズ部隊司令官カセム・ソレイマニの暗殺を承認したことに対する報復として、イラクの米軍基地に対するイランの弾道ミサイル攻撃という、主に象徴的な攻撃を伴ったものだった。
イランが利用できる非象徴的な選択肢としては、NPTからの脱退、外国査察官の追放、イスラエルのディモナ核施設への攻撃、ホルムズ海峡における海上輸送の遮断(イエメンのアンサルッラー運動が紅海での活動を再開するのと連携する可能性もある)などが挙げられる。これらの選択肢にはそれぞれ費用と便益があり、外国査察官の追放が最も可能性の高い選択肢である。実戦的な対応という点では、この地域の米軍基地が使用されなかった可能性は高く、少なくとも湾岸アラブ諸国におけるそのような施設へのイランの攻撃はより困難になる。そのため、既に大部分が撤退しているイラクの米軍基地が、即時の報復の最も可能性の高い標的となる。
(上のグラフはイランが管理しているホルムズ海峡の交通量を示すもの)
Amwaj.mediaが以前報じたように、イスラエルがトランプ大統領によるフォルドゥ攻撃の必要性を強調したのは、トランプ大統領にイランとの戦争に突入するよう仕向けるためだったようだ。実際、イラン当局は既にフォルドゥから核物質が除去されたことを示唆している。さらに、テヘランがそのような行動をとったとしても、IAEAが把握している施設が核兵器化の試みに利用される可能性は低い。こうした状況を踏まえると、トランプ大統領によるイラン攻撃の短期的な結果は、イランの核開発計画の終結ではなく、イランにおける核活動の監視の緩和となる可能性が高い。
(和訳終了)
上の記事にある通り、トランプ政権が事前にイラン側に攻撃を通告していた となると、トランプは 彼の周りにいてイランへの攻撃を強く主張するネオコンやイスラエル・ロビーを納得させるための「ショー」を見せた という可能性が高くなるのではないでしょうか。
この記事を読んで私が思い出したのが 第一次トランプ政権であった2017年に、米国がシリアに「自国民に対して化学兵器を使った!」と確たる証拠も示さずに因縁をつけて、シリア政府軍の基地を空爆した事件です。
その時は シリアでシリア政府軍を支援しながら「IS掃討作戦」をやっていたロシアに対して米国がシリア空爆の40分前に空爆を行うことを通告していました。それをロシア軍がシリア政府軍に伝えて、シリア政府軍は重要な航空機等を米の空爆前に避難させることができたのです。
その時は シリアのシャイラト空軍基地というところが トマホーク59発の攻撃を受けましたが、米国からロシアへの事前通告によって軽微な被害で済んでいます。(アメリカ政府側は死者は出ていないとしているが、シリア政府側は2人の民間人と7人の兵士が殺害されたと発表)
それと似たようなことが今回起きたのです。
さらに面白いのが 国防長官のピート・ヘグセス氏が会見をして、「我々はイランやイラン国民に対して攻撃するつもりはない。レジーム・チェンジも求めていない。ただイランの核施設を攻撃しただけだ。これは一度きりである」というようなことを発言したことです。
イスラエルのネタニヤフは モロに「レジーム・チェンジ」ということを言っていましたが、へぐセス長官やJDバンス副大統領がそれを否定したのです。
しかし、トランプは頻繁に言動を変える精神的に不安定な大統領なので、再びイスラエル・ロビーに圧力を掛けられたのか、自身のSNSでイランのレジーム・チェンジを言い始め、"MIGA"(Make Iran
Great Again)等と発言しています。
とにかく、このように、その時の気分で行動する大統領が日本のエネルギーの中東からの輸入まで危険にさらしているのです。
イランの議会ではすでにホルムズ海峡封鎖を議決した とのニュースもありますし、もしそうなれば、石油輸入の80%がそこを通る日本が トランプとネタニヤフのクレイジーな行動により、世界で最も影響を受ける国になるのです。
私がロシアとの関係改善をブログで主張し続けているのは あまりにも日本がエネルギーを中東に依存しすぎているからなのですが、日本の愚かすぎるロシアへの経済制裁と、メリットゼロのウクライナ支援の為、そのロシアと最悪の関係になっているという状態ですね...