トランプ氏が大統領に就任してからの彼の外交政策を見ていると、彼自身の意見としてはいわゆる”MAGA”(Make America Great Again)という言葉が示すように、外交政策においても余計な支出をしたくない、そして戦争にも巻き込まれたくない というスタンスであって、その考えを支持しているのがマージョリー・テイラー・グリーン議員やジム・ジョーダン議員のような共和党下院議員を中心とするMAGAサポーターの方たちです。

 

 

(上の写真:マージョリー・テイラー・グリーン氏のwikipediaから転載)

 

(上の写真:ジム・ジョーダン下院議員)

 

 

しかし、一方で、上院議会では 未だに「ウクライナ=善、ロシア=悪」というプロパガンダを推進するネオコンの議員が80人近くもいて、その代表格がリンゼー・グラハム議員、ミッチ・マコーネル議員、トム・コットン議員等です。

 

(上の写真はwikipediaからの引用)

 

(上の写真はwikipediaからの引用)

 

(上の写真はwikipediaからの引用)

 

 

そして、共和党の中だけでなく、トランプ政権の閣僚の間にも 明らかに戦争好きなネオコンと、そうではない人たちがいると思います。下はあくまで私が分類したものですが、

 

●戦争好きネオコン的思想の閣僚

 

・マイク・ウォルツ国連大使:以前は国家安全保障担当補佐官だったが、SNSアプリのSignal にわざと?マスコミ関係者を招待してイエメン爆撃の情報を漏らし、イスラエルと一緒にイラン攻撃の話し合いをしていたことが判明して国連大使へと更迭された。

 

 

・キース・ケロッグ特使:ウクライナ戦争を終結させるための「特使」として任命されているが、停戦と朝鮮戦争方式の非武装中立地帯の創設、欧州のNATO軍を平和維持軍として配備等の明らかなウクライナ寄りの発言をするので、ロシア側から嫌われて、プーチン大統領と対面することができなかった。結局中東問題特使として任命されていたスティーブ・ウィトコフ氏がプーチン大統領と3回位面談している。

 

 

●戦争好きではない和平推進派と思われる閣僚

 

JD.バンス副大統領:ゼレンスキーとホワイトハウスの執務室で口論した時に、ディベートが上手いバンス氏の発言によってゼレンスキーが苛立ち、バンス氏に下品な暴言を吐いたことが有名。

 

 

スティーブ・ウィトコフ特使:元々不動産ビジネスをやっていたユダヤ系米国人でトランプ氏の長年の友人であったが、中東問題特使に選ばれた。キース・ケロッグ特使の明らかにウクライナ寄りスタンスがロシア側に好まれなかったので、ウィトコフ氏がプーチン大統領と何度か会談し、プーチン大統領のことを「好き」とか、「丁寧に対応してくれる人柄に感銘を受けた」と、リスペクトする発言をしている。

 

 

そして、かつてはネオコンに属していましたが、今はトランプ政権内で 自分自身の考えよりもトランプ大統領の政策を代弁する という仕事に徹して、ネオコンと穏健派の中間にいるのが 現在のマルコ・ルビオ国務長官だと思います。

 

 

ルビオ長官は ウクライナ戦争を「代理戦争」だと認めたり、プーチン露大統領は「戦争犯罪人ではないのか?」と、議会でネオコンから追及されて、戦争犯罪人だと呼ぶのを拒否した ということがありました。

ですから、 自分自身の意見はともかく、トランプ大統領の政策に合わせて、今後の和平を難しくするような発言を控えていると

思います。その点では彼を国務長官にしたのはよい人選だったのかもしれません。

 

ですから、現在のトランプ大統領は ネオコンからの圧力と穏健派の人たち、そして対外介入で余計なカネを使いたくないMAGA

サポーターとの間のバランスを取りつつも、しばしばブレている という状態です。

 

たとえば ウクライナでの「停戦」に関しても 一時はウクライナと欧州の支援国が強く主張する「無条件の30日間停戦」を支持し、それをロシアが実行しなければ 酷い制裁を課す と言っていたのが、トランプ大統領とプーチン大統領の電話での直接会談後は「ロシア側は停戦はしそうにない」ということをウクライナや欧州に伝えて、ロシアへの更なる経済制裁については今のところ拒否している状態です。

さらにトランプープーチンの電話会談は お互いにファースト・ネームで呼び合うなど、フレンドリーな雰囲気で終わり、米国とロシアの関係改善の話が真剣に話し合われた ということで、プーチン大統領と直接会話後に、トランプ大統領の立場がブレてしまったので、これがウクライナとEUを落胆させた ということがあったようです。

 

しかし、イスラエルの問題に関しては はっきり言って、悪い方向に向かっています。

 

当初、中東問題特使のスティーブ・ウィトコフ氏は イランとの戦争を避ける為、イランが要請している発電用の低濃縮のウランならば認める という方針でした。

しかし、最近になって、ウランの濃縮は低濃縮であっても 絶対に容認できない と言い始めたのです。

 

この言動の変わりようには何があったかは 容易に想像がつきます。

イスラエル・ロビーがユダヤ人であるウィトコフ氏に圧力をかけたのです。

 

もちろん、イラン側としては「当初は発電用の低濃縮ウランならば認める」と言っていたのに、なぜ低濃縮ウランまで放棄しなければならないのか? と反発するのは当然で、もう、近い将来に起こるであろうイスラエルからの爆撃に備えていると思います。

残念ながら、イランの核濃縮問題で米国が仲介してイランとイスラエルが合意できる可能性は 限りなくゼロに近づいた ということです。

しかし、イスラエルは米国の軍隊の直接支援はなく、単独でイランを攻撃することになるでしょう。(もちろん、兵器の供給の支援はあると思います。)

 

ガザでの非人道的虐殺についても 米国だけがそれを止める力を持っているのに、多くの政治家はユダヤ系ロビー団体が怖いのでそれをしないで、イスラエル全面支持という発言を続けています。そのような状況を見れば 残念ながら、本当にあってはならないことですが、ガザのパレスチナ人にとって、歴史上まれに見る生き地獄のような人道上の危機はしばらく続くと思います。

 

 

ウクライナ戦争のほうも トランプ政権は もしも米国からの兵器の輸送をストップしてウクライナ軍がすぐに大崩壊してしまったらトランプ氏が責められることになることを何よりも恐れています。

ですから、陰で兵器を送り続けられるように、国民を欺くような「鉱物取引」が結ばれていますし、基本的にはトランプ大統領は 「欧州がお金を払うのなら、米国の軍産複合体企業から兵器を自由に買ってウクライナに送ってくれ」 という立場なので、兵器輸送を続けながら、将来の中国との更なる緊張の高まりを考慮して、ロシアとも外交関係の改善をしたい という「二兎を追っている」状態だと思います。