今回のブログでは 予告していた通り、台湾の民主主義における危険な現状について語っているビデオの後半部分の和訳をご紹介します。
前半部分をまだお読みになられていない方は 話の流れが掴みにくいと思うので、まず前半部分を紹介した私のブログ記事をお読みください。
元のビデオのタイトルは台北での大規模な抗議、反対派の投獄、主要メディアは沈黙、戦争の準備/ ジョアンナ・レイ博士 です。
上の写真の向かって左側がジョアンナ・レイ博士で台湾の元国民党の国会議員でもあり、今は起業家をなさっているようです。向かって右側はこのチャンネルのホストの京都大学准教授、パスカル・ロッタズ氏です。
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パスカル:台湾は経済的に中国にとても依存しています。つまり、あなたの最大の貿易パートナーは中国であり、米国はただの2番目です。
もし中国が米国が今関税の脅しでやっていることを台湾に対してやれば、台湾の経済はどうなると思いますか?
ジョアンナ:それは悲惨なことになるでしょう。なぜなら、(半導体メーカーの)TSMCのような最高のテクノロジーは約85の企業のような最も価値のあるサプライチェーンの中で動いており、それらが米国へと持ち込まれた場合、トランプとその支援者の頼清徳の戦略によっても支持されていますが、私たちの最先端のテクノロジーは米国へと移り、脱中入美(tuō zhōng rù měi)-「中国との縁を切って北へ」ということになります。
しかし私たちの中央地域は実際に中国との貿易が最も盛んで、コンピューター情報技術部品、LEDのような各種精密部品、精密部品等、台湾から中国に輸出しています。もし私達がTSMCから米国への輸出をせず、中国への中級レベルの技術輸出も失えば、何が残るのでしょうか?
サービス業、農業ベースの地方経済で、国際貿易のない地方経済です。
だから、それは台湾にとって大惨事であり、その戦略は腕の1本を切り落としてあなたの最も美しい娘を米国に送って、次男を切り刻んで死なせるようなものです。私は頼清徳が台湾の人々を助ける為に何をしているのか分かりませんが、彼が彼のイデオロギーと彼が望んでいた親日よりの台湾の独立を達成することに進んでいると思います。
彼(頼清徳)は決して台湾の真の独立を目指しているのではありません。彼は親日派の台湾独立運動家なのです。
パスカル:私はそれは理解できませんね。日本にはご存じのように何の主張もありません。台湾に関しては修辞的に何の主張もなく、日本にとって最も重要なことは台湾をめぐって戦争をしないことです。なぜならその戦争は沖縄をすぐに自動的に巻き込んでしまうからです。沖縄とは少しの距離しかありません。なぜあなたは 頼清徳が長い間取っているような、親日派の台湾人の手法をやっていると思いますか?
ジョアンナ:長い間、台湾の独立には2つの主流がありました。1つはほとんどは米国からの自由と民主主義です。当時は彼らは野党だったので米民主党ととても近い関係にありました。それはアメリカ人からの民主主義のシステムを求める一般的な要求でした。2つ目の台湾独立の主流派は日本統治時代の栄光を彼らの故郷で続ける ということです。
日本は彼らの母国であり、彼らの憧れの地でもあります。1995年頃、李登輝(Lee Teng-hui)の時代から、日本の栄光や日本統治時代が台湾の全盛期だったという描写が以前より多く見られるようになりました。
あなたは 日本の政治家たちが一時、もし「台湾に何かが起きれば、それは日本に起きていることだ。だから日本は台湾を支援する」というのを思い出すでしょう。そして中国が台湾に対して何かをするかもしれないというのはありそうにないが、その場合も日本は台湾を支援するだろう。それは精神的かつ、憧れの故郷を照らすものです。
彼(頼清徳)はまた、私たちの文化構造も最近変えてきました。通常娯楽番組やコマーシャルでは外国語は使用されませんが、現在、日本語のコマーシャルだけが公共放送で全編で放送されるようになりました。英語のコマーシャルは全編放送できませんが、日本語のコマーシャルは可能なのです。日本の統治時代は栄光のヒューマンストーリーで素晴らしい法律家と素晴らしいシステムなどと共に公共放送局で放送されています。したがって、李登輝時代には日本と日本統治の栄光の時代への傾倒というとても強い基盤があり、それら全部は強調されている。
パスカル:これは本当に奇妙なことですね。なぜなら、再び何の主張も欲望も台湾については日本はしていないし、台湾を助けに行くこともです。台北のために死ぬというのは決してスローガンではないし、日本では誰もそれを支持しません。そうする必要があるという人たちはクレイジーな変人だけでしょう。それ以外にも日本は自衛隊を有しており、憲法には軍隊の海外派遣を禁じる条項があります。そしてもちろん、台湾は海外として分類されます。
ですから、日本の内部ではそのことに疑問の余地はありません。しかし、あなたが言っているように与党の中に日本に対して幻想を抱いている人たちがいる ということです。
ジョアンナ:そして「日本は我々を助けに来るだろう」と人々に伝え続けています。
2002年頃までさかのぼると、日米安全保障条約は沖縄と南西諸島にまで延長され、それは沖縄の南西諸島と言われて彼らは防衛領土を拡張しましたが、それは沖縄トラフに入る前、与那国島と台湾の東にまで拡張されています。そこには米国のX線レーダーや他の軍備を設置して地域を軍事化した地域があります。
安倍政権の時代に安倍は台湾へのとても強い支援を示していました。特に民進党、蔡英文(Tsai Ing-wen)に対してです。
たとえ日本の憲法が日本に台湾を支援するために出て行くことを許さなくても、彼らは強い関係を日本での政治的な指導力で示す能力がありました。
それは大変強いもので、単独ではなく、岩のようではないにしても、台湾に対する非常に強い支持が根底にあります。これは長い間の民進党の戦略でした。彼らは米国と日本が来て彼らのポジションを助けてくれると台湾で人々に言っています。
私とあなたは中立性について、戦争を避ける為にどのように緊張を管理するか、話しました。これらは人々に誤った幻想を与えるとても危険なレトリックだと思います。そして私たちは5月20日に彼(頼清徳)が何を言うかを非常に注意深く見守るべきです。
パスカル:はい、全く同感です。もしそれがウクライナで見るのと本当に同じ脚本だとしたら、何が起こるかのヒントになることがとても重要です。なぜならNATOはウクライナを支援していますが、実際に唯一、違いを見せることができる軍隊の派遣以外となっています。
あなた方は大砲の餌食として使われ、物理的な戦争の遂行パートナーとして使われているようなものです。もし台湾が米国か日本が実際に助ける為に来て、彼らが望んでいない戦いに全てを与えて戦うと思っているのだったら、それは本当に悪い幻想です。しかし米国はそうするかもしれません。
ジョアンナ:今の日本の指導部は安倍時代よりもずっと慎重になっていると思います。
戦争が迫り、脅威となり、現実として起こりつつあるので、彼らは言葉と行動の両方において、もっと慎重になっているのです。
パスカル:この場合は幸運なことに、中国や韓国と新たなつながりを築こうとしているところです。それで、なぜこれらの抗議活動が組織的に無視されたのだと思いますか?
あなたが言ったように、ロイターやブルームバーグは報道しなかった。CNNやその他すべてには地元の記者がいますよね。
ジョアンナ:その通りです。彼らは現地に現地記者を置いており、通常は抗議活動を報道します。CNNは特別なケースだと思います。CNN特派員は中国から台湾に移動しました。つまり、彼は台湾を民主主義のモデルとして宣伝する強い立場にいるのです。
私は彼の報告を見たことがありますが、何か良いことがある度に、彼はとても陰気ながらも幸せそうな顔で、台湾を模範的な民主主義だと宣伝しています。
米国のマスメディア全般の戦略は国民党はとてもすたれた古い与党で彼らは国民の支援を失っており、独自の台湾独立の動きに敗北しつつあるというふうに扱うことだと私は思います。
しかし、彼らは私が以前、あなたの番組で言ったように、前回投票した人の70%のうち、40%が民進党に投票したという事実、つまり、数えてみると、国民の28%が総統の頼清徳に投票し、民進党に投票した24%全員が彼の台湾独立運動を支持したわけではないということを軽視しています。ましてやこの極端な親日幻想や親米軍事増強を支持したわけでもない。(注:有権者の70%が投票に行き、40%が総統選で頼清徳に投票した、すなわち台湾の有権者の28%が頼清徳支持だとみなされるが、頼清徳に投票した全員が「台湾独立」を支持しているわけではなく、独立支持派はせいぜい有権者の24%しかいないだろう という意味です。)
したがって、これらは彼らの戦略には適合しません。だから彼らは彼らの脚本に反することは何も報じませんし、特に 私たちは非自由な民主主義が全体主義的な警察国家へと動いていっているかのようです。
これらすべては典型的には人権侵害だと言われるでしょう。それが香港や上海で起これば、たとえ1万人でも大きな出来事になるでしょう。いや、実際に100人というのも大きいことです。しかし、路上には20万人、30万人の人々が出ています。
西側メディアは何と言っていますか?何も言っていません。彼らは見て見ぬふりをし、彼らは沈黙させられました。
パスカル:それはただ物語の創作にすぎませんよね。そしてこの物語のコントロールは対立がなんであるかと言う、愚かな白黒はっきりした考えを維持する必要があるのです。
しかし、悲しいことに、台湾は現時点では"自由な"西側がやっていることをただ追従しているだけです。というのも、現在ルーマニアでは選挙が行われていますが、重要な候補者は司法部門から、「彼のイデオロギーは国にとっては良くないので、彼は適任ではない」というだけの理由で立候補することを禁止されているのです。本当に狂気の沙汰です。
私はポーランド出身の同僚と話をしましたが、彼らはポーランドが反対派を厳しく取り締まっていると言っていました。ドイツではAfD(先日の選挙で得票率で2位になった政党の「ドイツの為の選択肢」)が極右過激派グループとして公式に指定され、禁止される方向にあることが分かっています。
西側諸国における現在の民主主義の弾圧は台湾にも及んでいるということですね。
ジョアンナ:その通りです。まずアメリカの民主主義が劣化していると思います。彼らのシステムに何が起こったかを見れば、抑制と均衡、人権、憲法修正第一条の権利、全てが挑戦を受けていることが分かります。大学は挑戦を受けています。だから、米国から始まり、民主主義が発展しつつある国々全てにおいて、民主主義の本当の意味が全体的に変化しつつあるのを私たちは目撃しています。そのシステムが機能するために必要な基盤の多くはあらゆる場所で疑問視されているだけでなく、台湾では私たちの司法制度の使い方は極めて残酷だと思います。私たちの監禁は誰ともコミュニケーション無しで、非常に狭い独房に入れられて誰ともコミュニケーションが取れないのです。私が今揚げた政治指導者たちは全員、意思疎通が出来ない状態で監禁されています。きわめて強力な国家警察を作り出して、私に当選してはいけない と人々に告げるのです。
もし挑戦したら、法律には何も重大な違反をしていないのに、何か悪いことをしたという確たる証拠さえもなく、そのような残酷な仕打ちを受ける可能性があるのです。
つまり、私たちは酷い状態にあるというだけでなく、警察国家の増強です。
パスカル:これらの抗議活動は何を示しているのでしょうか?こんごさらに抗議活動が起こると思いますか?台湾の事をご存じなら、ある意味、民主主義のために戦ったことをご存じでしょう。そして国民党はかつての統一政党で、前の独裁政権から抜け出した与党でした。
そして過去25~30年で民主化が進み、非常によく民主化されました。そして今、台湾国内の人々もあなたの評価を共有し、それが抗議運動を引き起りしていると思いますか?
ジョアンナ:残念ながら、分析には世代間ギャップがあります。30年間、より開かれた政治を実現するために戦ってきた現在の民進党政権が民主主義ではないと理解している人のほとんどは歴史的知識を持っている人たちです。
しかし若い人たちは民主主義が何から進化し、多くの物が次第に開かれ、次第に改革されていくのかを全く知りませんでした。若い人たちは歴史的記憶や理解がないので、政府がやっていることや政府が彼らに伝えていることに何の問題も感じていないのです。ですから、私はこの世代間ギャップイデオロギー的な観点からではなく、歴史的な経験から見ています。異なる集団の着眼点は非常に異なります。幸いなことに、今回の4/16の抗議活動はたくさんの若い人々が出てきて「私たちは全てを理解しているわけではないが、これが真の民主主義ではないことは理解している」と言っていました。つまり、4/26にはもっと若い人たちが出てきていたということです。
私は楽観主義者です。システムはたとえ大きな代償を払う必要があっても自己修正能力を持つべきだと信じています。しかし同時に、あなたは「オーケー、あなたは私に何をしても構いません。私は恐れていないし、動じません」と言える強い政治のリーダーが必要です。
そして今、徐々に人々が出てきていて、彼らの多くは国民党員ではなく、国民党の外からの人たちです。
パスカル:民進党の中にも「これは私達がすべきではない」という反対派はいますか?
ジョアンナ:いいえ、なぜなら彼らが権力を握っているからです。権力はとても甘いもので、権力には地位、さらには潜在的な報酬が伴い、それは民進党が現在、緊密に結びついていているものです。台湾の摩擦が全て頼清徳の摩擦と一致したわけではないと信じている人々もいます。
(前総統の)蔡英文は極めて沈黙しています。彼女は何も言っていません。
パスカル:それはとても悲しいですね。実際に台湾についての情報を読みたい人はどこに行けばよいのでしょうか?
最も客観的な報道をしているニュースソースはどれがおすすめですか?
ジョアンナ:残念ながら、英語の情報源は思い当たりません。おそらくあなたのような番組が情報源になるでしょう。
あなたは主要メディアや彼らの脚本を超えなければなりません。そうでないと、彼らは特別なレンズで世界を見ています。
パスカル:台北タイムズについての評価はどうですか?たとえそれがイデオロギー的な隔たりがあったとしても、それを情報源として使用することを推奨しますか?
ジョアンナ:台北タイムズには優秀な記者が何人かいます。私は新聞というよりは個々の記者をフォローすることをお勧めします。台北タイムズには優秀な記者が何人かいるということです。
パスカル:私たちはあなたを番組に再び呼ぶつもりです。何か起こったら、是非教えて下さい。というのも、何かが起こっているのを知ることは難しいので。
ジョアンナ:今回取り上げてくれて私はとても嬉しいです。誰も私にこの質問をしませんでした。あなただけです。
パスカル:私たちはこれを広めていきます。みんなで広げます。
本日はお時間を頂き、本当にありがとうございました。
ジョアンナ:ありがとう、パスカル。
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以上がビデオの和訳の後半部分です。
恐ろしいのは ジョアンナ・レイ氏が言っているように、台湾民進党の人たちの中には 日本に対して、ありえないほどの「過剰な期待」をしている政治家も多い ということなのです。
日本統治時代がいかに素晴らしかったかを称え、故・李登輝総統が まさにそうだったかと思いますが、日本を まるで「第二の祖国」のように思っている・・・台湾国民に「親日」志向の方が多いのはありがたいのですけど、でも「何かあれば、必ず助けに来てくれる」と期待するのは 京大のパスカル准教授がおっしゃっているように、明らかに狂気じみていると私は思います。
中国が台湾にもし武力侵攻してきたら、頼清徳が頼みの綱にしている米国はもちろん、日本も手を出せない というのが 実際のところだと思います。
日本の政治家には 「リアリスト」として現実を見る能力が著しく欠けている人が多くて、理想だけを語る、「威勢」だけは良い政治家が実に多いのです。次の自民党総裁候補として国民に人気のある保守政治家の高市早苗氏などもそうです。
私は自分のブログでは何度も書いてきましたが、「威勢の良さ」だけでは中国、ロシア、北朝鮮のような核保有国に対して戦えないのです。「自衛隊は常に弾薬不足でもし戦争になれば3日しか弾が持たない」 と言っていたのは元陸将の用田和仁氏です。
また、地下シェルターや地下室がある住居が日本には少なく、もしも日本にミサイルが飛んで来れば、多くの民間人が犠牲になる可能性が高いのです。
カップラーメンの値段すら知らなかった、浮世離れした財閥の御曹司の麻生太郎氏がかつて台湾に行って、「一緒に戦うつもり」なんて軽口をたたいていましたが、「じゃあ、お前の孫が真っ先に出動して中国と戦ってこい!」と有権者に言われたら、何も言い返せなくて沈黙するでしょうね。
金美齢という台湾人のコメンテーターがよくいわゆる自称保守の言論人と一緒に日本のTVに出演していて、彼女なんかは典型的な「従米」で且つ、過大なまでの大日本帝国賛美で現実をわきまえていない、ただ「威勢の良さ」だけが売りのコメンテーターだと私は思います。
たしかに、戦前の日本は満州、台湾、朝鮮半島には 物凄く資金を投資して現地でインフラを整えた実績がありますので、台湾の方々がそれに感謝してくれ、親日でいてくれてているのはありがたいのですけど、かと言って、過大な期待をされて「もし何かあれば日本の自衛隊が助けに来てくれる」というのは現実を直視すれば、全くありえません。
もちろん、一党独裁の中華人民共和国は警戒すべき相手で、私も中国と言う国が好きではありませんが、何度も言いますが、一部の政治家やコメンテーターによくある、「威勢の良さ」を見せるだけでは 現実問題として戦えないので、「台湾有事は日本有事ではない」と私は何度も自分のブログで言い続けています。