トランプ大統領とゼレンスキーが言い争いをしていたことの1つに ゼレンスキーの支持率があって、トランプ大統領は「4%」とか「一桁」だと発言して、それに対しゼレンスキーは自分の支持率は57%であって、トランプ大統領はロシアが作った「偽情報の空間」の中に住んでいる という具合に論戦になった件がありました。
下はBloombergの記事です。
この「キーウ国際社会学研究所」という機関がそもそもゼレンスキーに近い機関のようなので、その点は差し引いて考えたほうが良さそうですが、今回ゼレンスキーの支持率は もうかなり低くて、実際はトランプ大統領の言っている4%とか一桁まではいかないまでも、かなり下がっていることは間違いないようです。
というのは ゼレンスキーの支持率はそもそも、ロシアがウクライナとの国境線を超えて侵攻する直前、10%台にまで落ちていたからです。侵攻によっていきなり90%にまで上昇した とされています。
10%台にまで下がっていた原因は ゼレンスキーが嘘ばかりついて、全く公約を実行していなかったからです。
まず、ゼレンスキーが主張していたことは
「汚職をなくす」
「ロシアと話し合って戦争を止める(ウクライナは2014年から戦争状態なので)」
「ロシア人はウクライナ人と似た兄弟のような民族なので、差別はしない」
ということでした。
これらの言葉に「ロシア語禁止」等の弾圧をされていたドンバスの人々が好意的な反応を見せないはずがありませんね。ゼレンスキーは戦争終結に期待するドンバス地域からの支持も得て2019年の大統領選挙で勝利しました。
下に証拠のビデオも残っています。「ロシア人とウクライナ人は同じ血をもつ兄弟」だと言っている選挙キャンペーン期間中のゼレンスキーです。今となっては見た目も、声も、発言も、まるで別人のようですね。
The young Zelensky before he was bought by the cabal:
— Mark Alan Pearce (@PearceAlan1962) May 13, 2023
"In the East [Donbas] & Crimea, people want to speak Russian.. leave them alone.. Russia and Ukraine are brotherly people. We are one colour, one blood... I know many millions of people who live in Russia who are wonderful.." pic.twitter.com/H0jaOTBg0S
↓
(陰謀組織に)買収される前の若き日のゼレンスキー:
「東部(ドンバス)とクリミアでは、人々はロシア語を話したがっている...彼らを放っておいて...。ロシアとウクライナは兄弟のようなものだ。ロシアとウクライナは兄弟のようなもので、私たちは同じ(肌の)色、同じ血を引いている。ロシアに住んでいる何百万人もの人々が素晴らしい人たちだと知っている...」
ビデオの中のゼレンスキー氏の発言全文↓
東側やクリミアでは 人々はロシア語を話したい。
彼らをそのままにしておいてください。ただ放っておいて下さい。
法的に、彼らにロシア語を話す権利を与える。
言語はけっして私達の国を分断するものではあってはならない。
私はユダヤ系であって、ロシア語を話しています。そして私はウクライナの市民です。
私はこの国を愛していて、他の一部にはなりたくない。
ロシアとウクライナは兄弟のような人々です。私は何百万、何千人のロシアに住んでいて素晴らしい人々を知っています。
私達は1つの肌の色、1つの血を持ち、言語に関係なく、お互いに理解しています。
__________
このような発言をしていた人が 大統領に当選後はガラリと変わり、ネオナチに手なずけられ、ロシア語禁止やロシア文学の出版禁止、ロシア作曲家の音楽禁止、ロシアのバレエの禁止、ロシア正教会の弾圧、聖職者の殺害や逮捕等を次々にやるのですから、この男は「大噓つき」としか言いようがないでしょう。
このように事前の公約を破ってガラリとロシア敵視政策へと方向転換した原因が 大統領に当選直後、ネオナチに脅されて「木に吊るすぞ」と言われた という話がありますが、どんな事情であれ、当選後、選挙キャンペーン中に約束していたこととを守らず、大嘘をついたことは間違いありません。
だから、ロシアの侵攻直前までは 支持率が10%台にまで落ち込んでいたのです。
今回 実はゼレンスキーの支持率はトランプ大統領が言っている支持率の方にむしろ近い ということを言っている面白い記事をご紹介します。オルタナティブ・メディアのANTI WAR.comからの記事です。
Is Trump Right About Zelensky’s 4% Popularity?
(和訳開始)
ゼレンスキー氏の支持率が4%であるというトランプ氏の主張は正しいのか?
ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の支持率は「ウクライナの世論調査で非常に低い」と述べている。実際、彼の支持率はわずか4%と非常に低い。トランプ氏は間違っている。
しかし、主流メディアの解説者が非難するほど、彼の発言は間違っていないかもしれない。そして、彼が挙げた数字は、ゼレンスキー氏や主流メディアが挙げた数字よりも真実に近いかもしれない。
ロシアがウクライナに侵攻する直前、ゼレンスキー氏の支持率は低かった。2021年の世論調査では、同氏の支持率は急激に低下していることが示された。一部の世論調査によると、ゼレンスキー氏が禁止した野党・生命のためのプラットフォームが同氏を上回っていた。
戦争が始まると、ゼレンスキーの支持率は最高84%まで急上昇した。ゼレンスキーは、ロシアの侵略者によってきっと暗殺されるだろうにもかかわらず、祖国を離れることを拒否した英雄的な戦時指導者として称賛された。
しかし、彼の英雄的行為は演出されたものだ。米国が脱出の手助けを申し出たとき、ゼレンスキーは「戦いはこれからだ。必要なのは弾薬であって、乗り物ではない」と答えた。少なくともロンドンのウクライナ大使館は彼がそう言ったと伝えており、彼らが広めた話だ。しかしバイデン政権は彼がそんなことを言ったことはないと言っている。ニューヨーク・タイムズ紙によると 、「バイデン陣営はこの話は作り話だと考えているが…戦争でよく使われる神話作りに感銘を受けた」という。
ゼレンスキー氏は車に乗せてもらうことを拒否し、ウクライナに留まり、自分は恐れていないと世界に伝えた。しかし、これも演出されたものだ。当然のことながら、ゼレンスキー氏が地下壕にいたとき、ウクライナとロシアの交渉を仲介していた当時のイスラエル首相ナフタリ・ベネット氏は、ロシアのプーチン大統領から「ゼレンスキー氏を殺さない」という約束を勝ち取ったと彼に告げた。ゼレンスキー氏はベネット氏に本当にそうなのかと尋ねた。ベネット氏は「100%」確信していると答えた。「2時間後」、ゼレンスキー氏はオフィスに行き、オフィスで自撮り写真を撮り、「私は恐れていない」と世界に有名なメッセージを伝えたとベネット氏は言う。
ゼレンスキー氏は留まり、人気は急上昇した。彼の支持率の高さは、ロシアの侵攻に対する愛国的な反応と、戦争初期の成功によってウクライナの希望が高まり、ロシア侵攻軍の追放やドンバスとクリミア半島の奪還など、ゼレンスキー氏が大げさに成功を約束したことで支えられた。
しかし戦争はうまくいかなかった。ウクライナ軍は、米国とそのNATO同盟国から提供されたあらゆる軍事、諜報、財政支援にもかかわらず、ロシア軍を追い出すことができず、領土を再征服するどころか、より多くのものを失った。ウクライナ人は平和交渉に希望を向け始めた。戦争が始まったとき、ウクライナ人の73%は、ウクライナは勝つまで戦い続けるべきだと信じていた。最近のギャラップの世論調査によると、その数は38%に減少している。初めて、ウクライナ人の過半数、52%が、かつては考えられなかったことを信じている。それは、ウクライナはできるだけ早く戦争を終わらせる交渉をすべきだということである。おそらくますます国民の気分にそぐわなくなったゼレンスキーは、交渉よりも戦いを優先し続け、世論調査の数字は下がり始めた。
2024年末に行われたギャラップ社の世論調査に よると、戦争が続くにつれゼレンスキー大統領の支持率は低下している。かつては84%だった支持率は、現在60%だ。そして、この数字はロシア占領地域の人々を除外した世論調査であるため、やや楽観的かもしれない。
ゼレンスキー氏はトランプ氏に対し「もし今誰かが私に代わる人を望むなら、それは絶対に起こらない」と 自慢げに答えたが、世論調査はそれが起こり得ることを示している。エコノミスト誌が確認した内部調査では、ゼレンスキー氏は「将来の選挙でヴァレリー・ザルジニー氏に30%対65%で負けるだろう」と 示唆している。ゼレンスキー氏にとってさらに悪いのは、ベルリン自由大学の社会学者ウォロディミル・イシュチェンコ氏が11月に私に語ったところによると、「非公開の世論調査」の一部では、ウクライナ国防省情報総局長のキリロ・ブダノフ氏にも負ける可能性が高いことが示されているということだ。
ゼレンスキー氏と主流メディアは、 ウクライナ人の57%がゼレンスキー氏を信頼しているという最近の世論調査を指摘し、トランプ氏の4%の主張を否定した 。しかし、信頼は承認と同じではなく、サンプルグループにはロシアが支配する地域に住む人々が含まれていなかったため、同じ方法論上の問題が当てはまる。しかし、別の要因もあるかもしれない。ウクライナの環境は、人々が世論調査で真実を語ることを恐れるようなものになっているのかもしれない。
これは、ゼレンスキー政権の元高官が匿名で「ザ・スペクテイター」紙に最近掲載した記事で主張したケースだ。同氏は「選挙が無期限に延期され、人権が組織的に侵害され、恐怖が日常生活を支配する国では、恐怖が支配している」ため、世論調査を信頼するのは難しいと述べている。
元当局者は、「大統領府が実施した世論調査では支持率は63%のままだが、私が見た民間の世論調査では支持率は10%を下回っている」と述べている。
仮名元当局者の言うことを信用するなら、その数字はゼレンスキー氏の数字や主流メディアが引用する数字よりもトランプ氏の数字に驚くほど近い。しかし、仮名なので信頼できるかどうかは明らかではない。しかし、私がウォロディミル・イシチェンコ氏にゼレンスキー氏の人気の世論調査の数字について尋ねたところ、驚いたことに、彼も元当局者と同様、ゼレンスキー氏よりもトランプ氏に近い数字を返した。「私が見た世論調査では、ゼレンスキー氏は選挙で16%の支持を得ていた」と彼は私に書いた。
イシュチェンコ氏によると、16%台という数字を示した最新の世論調査は「親ポロシェンコ世論調査会社」によるものだという。ゼレンスキー大統領が最近ポロシェンコ氏に制裁を科して以来、ポロシェンコ氏に忠誠を誓う人々はますますゼレンスキー大統領を批判し始めている。
恐怖や内紛、方法論上の問題などもあり、世論調査を正確に読み解くのは難しい。しかし、ゼレンスキー氏の人気は低下しており、今後の選挙では不利な立場に立たされており、また、一見しただけでは分からないが、彼の支持率はトランプ氏が挙げた数字に近いかもしれないという証拠はある。
(和訳終了)
日本で発表される内閣支持率調査等もそうですが、どのような地域、どのような年齢層に対してどのような質問の仕方でアンケートを取るか ということで ずいぶん結果が変わってくるのは当然で、このゼレンスキーの最近の支持率57%の場合、ロシアが現在支配している地域からは 事実上アンケート結果を取れないのだから、ロシアが併合した4州とクリミア半島は当然除かれているわけです。
それに対し、ロシアの特別軍事作戦開始直前の2022年に取られたアンケートでは すでに2014年から内戦中とはいえ、ウクライナの支配下にあったわけですから、ドンバス地域からの声もかなり入っていた可能性がありますね。
だから選挙時の公約を破ったゼレンスキーの支持率が10%台にまで落ち込んでいたのでしょう。
それが 「殺害の可能性があるにも関わらず、逃げない勇敢な大統領」というメディアキャンペーンによってゼレンスキーの支持率が一気に90%近くにまで高まったのです。
しかし、当時和平交渉を仲介しようとしていたイスラエルの元首相、ナフタリ・ベネット氏の証言のように、プーチン大統領はゼレンスキーを暗殺する気など最初から全くなく、身の安全を保障していたので、ゼレンスキーは安心してウクライナに留まれた というのが多くの人が知らない裏事情です。
ゼレンスキーは「命の危険があるのに逃げず、国民と一緒に戦う勇敢な大統領」ということで、あのTPOを全くわきまえないラフな服装もキャンペーンの一環だったわけですが、ゼレンスキーが本当に勇敢かどうか ということについては疑問符がつくと思います。
なぜなら、本当に彼が 「命を投げ出してでも内戦を止める」という意志が本当に強かったのなら、ネオナチに脅されて「木に吊るすぞ」と言われたことで震え上がって、その後、選挙公約とは180度違うことを実行はしないでしょう。
そのゼレンスキーがネオナチに脅された経緯は フリー・ジャーナリストのアーロン・マテ氏がとても読み応えのある良い記事を書かれていますので、ご興味のある方は 是非ご覧下さい。
Siding with Ukraine's far-right, US sabotaged Zelensky's mandate for peace
(米国はウクライナ極右派に味方し、ゼレンスキーの平和への使命を妨害した)