今回は 先日ウクライナの会社が行った、戦争終結の際にロシアに領土の点で譲歩すべきかどうか に関するアンケート調査の結果が興味深いのでご紹介したいと思います。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

赤枠にした部分に注目です。

 

約90%:戦争にうんざりしているので、以下のいずれかの条件でのロシアとの和平交渉を望んでいる

 ↓(その内訳)

11%: いかなる条件でも(クリミアとロシアが併合した4州を与えてでも)戦争を終わらせることに賛成

38%: 現在の軍事境界線に沿った領土を放棄することで和平に賛成。

41%:2019年の領土(クリミアを放棄し、独立宣言をしていたドネツク州、ルガンスク州も放棄)を確定することで和平に賛成。

 

10%:和平交渉に反対 あるいは 未定

 

この調査結果から見て、ウクライナ国民の90%はロシアとの和平交渉で戦争を終結させることを望んでいて、ロシアへの領土割譲の部分では どの程度まで認めるか という範囲で多少違いはあるものの、戦況から見て、ウクライナ軍がロシア軍を追い出すことは もう無理で、「領土割譲やむなし」と見ていることが分かります。

 

この調査結果をゼレンスキーは知らないのか、知っていても敢えて無視しているのかは分かりませんが、呆れたことに、下のような3段階の「勝利のプラン」を発表しました。

 

 (上の写真はこちらのページからの引用)

  ↓

1. ゼレンスキー氏は、米国が外国のミサイルによるロシアへの長距離攻撃を許可し、ロシアのヨーロッパ地域内のすべての軍事基地、飛行場、弾薬庫、燃料貯蔵庫を破壊することを望んでいる。

2. 西側諸国(米国/NATO)は、ポーランドとルーマニアの防空システムでウクライナ西部をロシアの報復攻撃から守らなければならず、そうすればウクライナは自国の防空システムを戦場により近い場所に移設できる。

3.西側諸国は、ウクライナの人員を前線に送れるようにするために、地上部隊をウクライナの特定の地域に派遣し、より積極的に関与する用意があることを保証しなければならない。ゼレンスキー氏は、この作戦の後、ロシアは撤退を余儀なくされ、ある時点でプーチン大統領の指導部は不安定化して交代し、新しい指導部が和平協定に署名するだろうと考えている。

 

もしこのどう見ても実現不可能な3段階のステップで、ウクライナがロシアに勝利する とゼレンスキーが大真面目に考えているのでしたら、彼は頭大丈夫でしょうか?

 

まず、長距離兵器の使用をイギリス、アメリカが認めたとしても ストームシャドウ(英)とATACMS(米)の在庫はかなり少ないと見られています。

そして重要なこととして、ウクライナ軍はATACMSをこれまでに300発与えられたのですが、そのほとんど全部をクリミアへの攻撃で使い果たしてしまいました。

 

米国にはATACMSの在庫が1,500発位しかないと言われています。米国が在庫として保有すべき分もありますし、ウクライナ以外の他国に供給しなくてはならない分もあります。

このミサイルは高額でもあり、1発当たり150万ドルと言われています。ウクライナにもしあと200発を追加で送るとなれば、これだけで3億ドルの出費になります。

しかし、米のウクライナ支援は昨年秋頃から、どんどん「尻すぼみ」になっており、直近で発表された米のウクライナ支援パッケージはたったの2.5億ドルです。↓

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

ATACMSの在庫がどう見ても足りないし、費用も高額過ぎるので、最近は 代わりの長距離兵器として、射程370kmのJASSM(1発70万ドル)という話が出てきていますが、JASSMは空対地ミサイル、すなわちF-16で運用しなければなりません。

 

先日与えられた6機のうちの1機が墜落し、まだF-16をほとんど有効活用できていないウクライナ空軍がJASSMを運用できるでしょうか?その不安が大いにあると思います。

ちなみに、先日ウクライナで最初のF-16が ミステリアスな”何らかの原因”で墜落、パイロットが死亡した事件の直後、「アメリカはF-16の補修や地上整備の為に米国から契約者等をウクライナに派遣するつもりは無いので、保守点検の為の人員派遣が必要ならば、それは欧州のNATO加盟国でやってくれ」 という、突き放すようなことを言っています。

 

そしてATACMSが在庫が少ないという問題は英のストームシャドウ、仏のスカルプにも当てはまります。

英と仏で今までに合計で500発以上のストームシャドウ/スカルプをウクライナに与えたはずですが、それもほとんど使い切ったのではないでしょうか。

 

ですから、ステップ1の「全てのロシアの空軍基地や弾薬庫、燃料貯蔵庫を破壊」

ということ自体が そもそも無理な話です。

 

ロシアの防空システムは 今までの実績では ストームシャドウやATACMSを80~90%迎撃に成功しています。(元米海軍情報局のマックス・フォン・シュラー小林氏の話ではロシア軍は90%迎撃に成功していると見ているとのこと。)

 

ミサイルを撃ってもその80~90%は迎撃される となると、「全てのロシアの空軍基地や弾薬庫、燃料貯蔵庫を破壊」するのに、いったい何千発のミサイルが必要になるのか?という位の話になってしまいますので、そもそも米軍、英国軍のミサイルの在庫から見て無理です。

 

そして、ステップ2の「ポーランドとルーマニアの防空システムでウクライナ西部上空に来たロシアのミサイルを撃ち落す」というこの要求は ポーランドからすでに断られています。ウクライナ上空でロシアのミサイルをポーランドの防空システムが撃ち落せるかどうかは「NATOからの合意」なしには出来ないし、ポーランド単独では判断できない。NATOの協定の中はそのようなことに合意するような条項もない と言っています。

 

  ↓(日本語に変換したもの)

 

 

 

そして、最後のステップ3の「NATOが地上部隊をウクライナに派遣」っていうのも

今の状況では賛成するNATO加盟国はないでしょう。

もしもロシア軍がキエフを征服したりウクライナ西部まで征服したりする状況になると、焦ってNATO軍を送ってくる可能性は大いにありますが、NATO加盟国は 公式には「我々はロシアと戦争しているわけではない」と言っていますから、あくまで「ウクライナ人を使った代理戦争でロシアを弱体化させる」ことにのみ、興味を持っているのであって、自国の正規軍兵士が何万人という単位でウクライナの地で死ぬことには興味がありませんし、そのようなことはできるだけ避けたいと思っています。

 

ですから、ゼレンスキーの言っている「勝利のプラン」というのは そもそも実現不可能であり、「荒唐無稽なファンタジー」なのですが、これを大真面目に受け止めるNATO加盟国など、ないでしょう。

 

ちなみに、ドイツのショルツ首相は 地方選挙に大負けして最近ようやく目が覚めてきたのか、「ロシアと交渉すべき時期になった」と言い始めました。

下はウクライナの新聞「キエフ・インディペンデント紙」を日本語化したものです。

 

 

ゼレンスキーも実現不可能な「勝利のプラン」など発表して自己保身ばかりするのではなく、ウクライナ国民がどれだけ戦争に疲れ始めているのか、ロシアに譲歩してでも早く終わらせてほしいと思い始めている ということも考慮してはいかがでしょうか?

 

徴兵されたくなくて国外に逃げた若いウクライナ人男性の大半は もうウクライナに帰るつもりはないようです。

ウクライナの在外公館が「軍に登録しない者にはパスポートの更新をしない」とアナウンスしたので、パスポートが切れた人からどんどん、ウクライナ国籍を放棄し始めました。

 

ウクライナのメディア、「ストラナ」によれば、「数十万人」のウクライナ人が「ウクライナ国籍放棄」の申請書を大使館に提出しているようです。⬇

 

 

おそらく日本にいらっしゃる約2500人のウクライナ国民のほとんども パスポートの期限が切れれば、おそらくウクライナ国籍を将来放棄されるのではないでしょうか?

 

日本で生活するには十分の多額の生活支援金も政府から支給されて、住居も与えられ、仕事も紹介してもらえて、どう見ても他の難民申請者より優遇されているようですからね。日本政府の国策としてわざわざポーランドまで、日本へのウクライナ人の亡命希望者を迎えに行って、最初は「親戚や知り合いが日本にすでにいる人」が対象だったものの、その後対象者を拡大して全く知り合いや親戚が日本にいなくてもウクライナ人が亡命できるようにしてまで、ウクライナ難民を受け入れました。

 

このような「特別扱い」までしての難民受け入れは 非常に不公平な優遇ぶりだし、日本の難民認定制度そのものに悪影響を及ぼすものだと私は思います。↓