先日私のブログ記事でご紹介した、バングラデシュでのクーデターの背後には米国がいる可能性が高い ということについて、本日は 同様の見方をしているコロンビア大学のジェフリー・サックス教授が書かれた記事をご紹介します。

 

バングラデシュでのシェイク・ハシナ首相の追放、2022年から発生したパキスタンでのイムラン・カーン首相の失職や逮捕等、全てハシナ首相、カーン首相が行おうとした「中立」外交が原因であるとおっしゃっています。

 

要するにハシナ元首相もカーン元首相も「アメリカ寄り」政策を取ることを拒否し、ロシアも含めた全方位に友好的な外交姿勢を取ろうとしたのがアメリカのネオコンの逆鱗に触れて政権転覆を起こされた ということです。

 

早速 ジェフリー・サックス教授の記事をご紹介します。

 

Examining US regime change in Pakistan and Bangladesh

 

(和訳開始)

 

パキスタンとバングラデシュでの米国による政権交代を調査

ジェフリー・D・サックスは、国連はイムラン・カーンとシェイク・ハシナをワシントンに対峙させるのに不利な状況を整えたと述べた

 

 

東南アジア主要国の元指導者2人が、米国が自国の政府を転覆させるために秘密裏に政権転覆作戦を行っていると非難したと報じられている。

指導者の一人、パキスタンの元首相イムラン・カーンは、カーンの主張を証明する不当な有罪判決を受け、獄中で苦しんでいる。 もう一人の指導者、バングラデシュ元首相シェイク・ハシナ氏は、同国での暴力的なクーデター後、インドに逃亡した。

世界のメディアで報じられているように、米国に対する彼らの重大な非難は国連によって調査されるべきである。なぜなら、もしそれが事実であれば、米国の行動は世界平和と南アジアの地域的安定に対する根本的な脅威となるからである。 

二つの事件は非常に似ているようだ。イムラン・カーン政権の打倒に米国が関与したという非常に強力な証拠から、バングラデシュでも同様のことが起こった可能性が高まっている。 

パキスタンの場合、南アジア・中央アジア担当のドナルド・ルー国務次官補が7年20227月7日にパキスタンのアサド・マジード・カーン駐米大使と会談した。

カーン大使は直ちにパキスタンに返信し、ロシアとウクライナに関してカーン首相が「積極的に中立的な立場」をとっているため、米パキスタン関係が脅かされているとのドナルド・ルー南アジア・中央アジア局担当国務省次官補の警告を伝えた。 

大使の7月7日のメモ(厳密には外交暗号)には、ルー次官補の次の言葉が引用されている。

首相に対する不信任投票が成功すれば、ロシア訪問は首相の決断とみなされているため、ワシントンではすべてが許されるだろうと私は思う。そうしないと、今後は厳しい状況になると思います。

翌日、国会議員らはカーン首相を解任するための手続きを踏んだ。 

 

 

8月27日、カーン首相は機密文書を振りかざし、支持者と国民に対し、米国は首相を倒そうとしていると告げた。8月10日、議会が米国の脅しに屈したため、カーン首相は職を追われた。 

このことは、カーン首相が暴露した、ライアン・グリムによる傍受されたカーン駐米大使の暗号文によって詳細にわかっている。 不条理かつ悲劇的なことに、カーン首相は暗号を暴露したことに関連したスパイ容疑で獄中にある。

バングラデシュのクーデター 

米国は、最近バングラデシュで起きた暴力的なクーデターでも同様の役割を果たしたようだ。ハシナ首相は表面上は学生の暴動によって失脚し、バングラデシュ軍が抗議者による政府庁舎襲撃を阻止することを拒否したためインドに逃亡した。しかし、この事件には表面上に見える以上のことが隠されているのかもしれない。

インドの報道によると、ハシナ首相は米国が彼女を失脚させたと主張している。

具体的には、米国が彼女を権力の座から排除したのは、中国封じ込めのための「インド太平洋戦略」において米国にとって戦略的とみなされている地域に米軍施設を供与することを拒否したためだと彼女は主張している。

これらはインドのメディアによる間接的な報道ではあるが、ハシナ首相によって過去2年間になされたいくつかのスピーチや発言を綿密に追跡している。

7月17日、カーン首相の失脚に主導的な役割を果たした同じルー次官補が、(バングラデシュの首都) ダッカを訪問 米国のインド太平洋戦略などについて議論する。

数日後、シェイク・ハシナ首相は、彼女の同盟14の党の指導者を召集し、驚くべき主張をしたと伝えられている。 表向き、彼女を失脚させようする試みの中で、彼女は国家の主権を危うくすることを拒否していると「白い肌の人々の国」の指導者たちに伝えた。

イムラン・カーン氏と同様に、ハシナ首相も米国だけでなく中国やロシアとも建設的な関係を築くなど中立外交政策を追求しており、米国政府を大いに困惑させていた。 

 

ハシナ氏の告発に信憑性を持たせるために、バングラデシュは、2022年以来米国が強く推進してきた2つの軍事協定の署名を遅らせていた。調印を遅らせた原因は、アメリカの政権交代作戦で輝かしい経歴を持つネオコン強硬派のヴィクトリア・ヌーランド前国務次官にほかならない。

協定案の1つである軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、バングラデシュを米国とのより緊密な軍事協力に拘束するものである。ハシナ首相の政府は明らかに署名に乗り気ではなかった。 

米国は、政権転覆作戦の実施者としては世界でも群を抜いているが、ヌーランドの事件のように、悪名高い傍受電話 2014年12月下旬、ウクライナにおける米国主導の政権転覆作戦を計画したあからさまな現行犯の場合でも、秘密裏に政権転覆作戦に関与したことをきっぱりと否定している。 

カーン首相とハシナ首相の主張を調査するよう米国議会、ましてや行政府に訴えても無駄だ。真実が何であれ、彼らは必要に応じて否定し、嘘をつくだろう。 

国連の役割

 

 

ここで国連が介入すべきだ。秘密裏に政権交代を図る作戦は国際法(特に不介入原則)の下では明らかに違法である。 国連総会決議2625(1970 年)は、国家を深刻に不安定にし、しばしば戦争やその他の内乱を引き起こすため、世界平和に対するおそらく最大の脅威となっている。

国連は、政権転覆作戦を覆すため、また将来的に阻止するために、秘密裏に行われている政権転覆作戦を調査し、暴露すべきである。 

もちろん、国連安全保障理事会は、国連憲章第24条に基づき、「国際の平和と安全の維持に対する主要な責任」を具体的に負っています。

外国政府の介入や共謀により政府が転覆されたという証拠が出てきた場合、国連安全保障理事会はその主張を調査すべきである。 

パキスタンとバングラデシュのケースでは、国連安全保障理事会は、米国がこれら2人の指導者の政府転覆に役割を果たしたという証拠を評価するために、カーン首相とハシナ首相の直接の証言を求めるべきだ。


もちろん、証言を行った各人は、事実を正直に述べたことに対する報復から守られるよう、国連によって保護されるべきである。カーン首相の悲惨な投獄が続いていることを考えると、必要であれば、彼らの証言はビデオ会議で行われる可能性がある。 

米国は国連安全保障理事会で拒否権を行使して、そのような調査を阻止するかもしれない。その場合、国連総会は国連決議2625(1970年)に基づいてこの問題を取り上げることができる。 これにより、国連安全保障理事会で拒否権によって阻止された問題を国連総会が審議で​​きるようになります。

そうすれば、問題となっている問題は国連加盟国全体で評価されるようになる。パキスタンとバングラデシュにおける最近の政権交代への米国の関与の真実性は、単なる主張や否定ではなく、証拠に基づいて客観的に分析され、判断されるようになるだろう。 

1964年から1947年の間に、米国は少なくとも1989回の秘密政権転覆作戦に従事したと、文書化された調査によって判明している。 リンジー・オルーク、ボストン大学の政治学教授、そして公然と行われたもの(例えば米国主導の戦争)がいくつかある。

イランでは今日に至るまで政権転覆作戦が続いていて、(米国は)世界各地で政府を倒し続けている。

米国が自ら国際法を遵守するというのは希望的観測だが、米国の政権転覆作戦に長らく苦しめられてきた国際社会が国連でその終結を求めるのは希望的観測ではない。

ジェフリー・D・サックスは大学教授であり、コロンビア大学の持続可能な開発センターのディレクターであり、2002年から2016年まで地球研究所を指揮しました。また、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークの会長であり、国連ブロードバンド委員会の委員でもあります。

 

(和訳終了)

 

パキスタンでの2022年に起きたイムラン・カーン首相の追放劇、これはすでに機密文書の漏洩で米国がパキスタンに圧力をかけたことが明らかになっていて、私のブログの下の過去記事でご紹介していますので、これもご覧になられていない方はぜひお読みください。

 

 

 

 

イムラン・カーン当時の首相は ロシアがウクライナへの「特別軍事作戦」を2022年2月23日に開始した後、初めてロシアを訪問した外国首脳だったと思います。(以前から決まっていた外交日程を予定通り行った)

 

それが米国の逆鱗に触れたわけですが、それでも カーン元首相は下のようなことをスピーチしました。

私達のことをどう思いますか?私達はあなたの奴隷であり、あなたが私達に求めることは何でもするのですか?我々はロシアの友人であり、米国の友人でも有る。私達は中国とヨーロッパの友人です。私達はどの同盟にも属していません。

 

本当に主権国として、自国の国益第一に考えた素晴らしいスピーチだと思いますが、これがその後のカーン首相の運命(失職、暗殺未遂、逮捕)を決定づけてしまいました。

 

 

日本では 今、自民党総裁選が行われていますが、10人以上立候補した という候補者の中で、誰かひとりでも 本当の意味でアメリカの属国から脱却し「日本の主権を回復する」ということを目標に掲げている人がいらっしゃるでしょうか?

 

総裁選で誰が有力か とか、誰が人気があるか、という日本の世論は 大手マスコミが作っていると私は思っていますが、悪い選択肢しかない中で、最悪の選択肢となり得る人物を「最も人気がある」というふうにマスコミが異常にプッシュしています。↓

 

 

彼の実績は何でしょうか?

選挙の時の応援演説で「客寄せパンダ」的な人気はあっても、国会での質疑ゼロ、議員立法ゼロのようですね。それは国会議員としての仕事をしていないということです。環境大臣の時のレジ袋有料化でプラスチックごみは削減できましたか?

結局、家のゴミ箱にかぶせるレジ袋が必要なので、レジ袋を有料化以降も買い続けている方も多いのでは?

 

そして、上のプロフィールのところをご注目ください。

いわゆるかなりの低偏差値の”Fラン”と言われる大学から米の名門コロンビア大学大学院にどうやって行けたのか という話は置いておいても、修士号取得の後、アメリカの「戦争研究所」と言われているCSISの研究員になった というところに注目です。

 

このCSISは ネオコンのビクトリア・ヌーランドの夫のロバート・ケーガンのご兄弟が運営されている、「永遠の戦争」を行う為のシンクタンクです。兵器産業から巨額の資金をもらって、アメリカの敵を作って敵を研究する論文を発表しているところです。(詳しくは下の過去記事をご覧ください。)

 

 

 

 

そのようなところに短期間でも在籍していた人が 今「次の自民党総裁候補として最も有力」とマスコミが一押ししているのです。

 

「軍事においてもアメリカのグローバルパートナーになった」と宣言した岸田文雄が次の選挙では負けそう ということになると、見放して岸田を追い落とす手筈を整えたのも彼の後ろ盾だった米国だと私は思います。そして「フレッシュに見える次のリーダー」としてマスコミが、そしてアメリカが一押ししているのが 戦争屋のシンクタンクに在籍していた小泉氏ということなのです。