今年の4月末頃から ウクライナ軍のパイロットの訓練が終わって、デンマークやオランダ等からのF-16戦闘機のウクライナへの譲渡の準備も整った というニュースが流れていたので、いつ実際の機体は登場するのだろう・・・と思っていたら、いよいよ今月中に最初のF-16のウクライナ上空での飛行を見ることになりそうです。

 

早速ニュースをご紹介します。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

この「前線から遠く離れた場所で活動」予定 というのが そもそもF-16の限界と、この戦闘機が今の戦況を変える「ゲーム・チェンジャー」とはなりえないことを示しています。

 

F-16s to Appear in Ukraine Within Weeks, Will Operate Far From Front

 

(和訳開始)

 

F-16が数週間以内に出現、前線から離れた場所で活動予定

 

ウクライナは、数ヶ月の遅延を経て、今週後半に西側諸国からF-16戦闘機の受領を開始する予定だ。この最新鋭機は、ロシアの防空軍によって簡単に撃墜される恐れがあるため、限定的な役割しか担わない。 

米国とNATO同盟国がウクライナのパイロットにF-16の訓練を行い、キエフに同機を供給する計画を発表してから1年以上が経ち、最初の一群の戦闘機は数週間以内に運用可能になると予想されている。米国製航空機の到着が戦闘に大きな影響を与えるとは予想されていない。 

F-16がウクライナに到着したかどうかは不明だ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、キエフ当局は同国へのF-16の輸送を「進行中」としているが、何機受け取るかは明言を控えている。 

ワシントンポスト紙によると、この最新鋭の航空機は前線から遠く離れた場所で運用され、主にロシアのミサイルやドローンの撃墜に重点を置くとみられる。米政権はロシアの防空軍がF-16をすぐに撃破できるのではないかと懸念している。 

「当局者は、少なくとも当初は、航空機が戦闘の最前線に近づきすぎる可能性は低いと述べている。つまり、ロシア領空からウクライナに侵入する敵機を阻止できるかどうかさえ不透明だ」と同紙は書いている。

キエフは2023年末までにこの戦闘機を受け取ることを望んでいたが、パイロット訓練の遅れにより納品は数ヶ月延期された。ウクライナ軍当局者は、ロシアがF-16の到着に十分備えているため、この遅れはF-16が戦場でほとんど影響を与えないことを意味すると嘆いている。 

ポスト紙によると、今年ウクライナに納入されるF-16は限られた数のみで、これまでに訓練プログラムを修了したパイロットはわずか6人だ。ウクライナ軍は深刻なミサイル不足にも直面しており、同機の使用はさらに制限されている。 

F-16はAIM-120空対空ミサイルを搭載するが、これは米国が提供するNASAMS防空システムの迎撃ミサイルとしても機能するが、ウクライナでは現在この弾薬が不足している。

ウクライナは、既存の滑走路すべてがロシア軍の弾薬の射程内にあるため、戦闘機を支援するための飛行場の維持にも苦労する可能性が高い。当局者は、キエフがNATO諸国の空軍基地にF-16を保管することを示唆しており、ある当局者はポスト紙に、戦時中にウクライナに新しいコンクリート製の格納庫を建設することは「不可能」だと説明した。 

戦争の初期、ジョー・バイデン大統領は、ロシアとの直接衝突を招く恐れがあるため、最新鋭の戦車や戦闘機をウクライナに送らないとアメリカ国民に約束した。しかし、昨年、ホワイトハウスはその約束を撤回し、米国と他の同盟国がパイロットを訓練する間、ベルギー、デンマーク、オランダ、ノルウェーが約80機のF-16をウクライナに送る計画を承認した。 

クレムリンは、ウクライナのF-16は核兵器を搭載できるため、非常に挑発的であるとみている。ウクライナにF-16を派遣しているNATO加盟国は、同機の運用地域に制限を設けていない。一部の加盟国は、キエフがロシアを爆撃するために同軍用機を使用することを明示的に許可している。 

「極めて危険な事態のほんの一例が、米国がキエフ政権にF-16戦闘機を譲渡する計画だ」とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は昨年7月に語った。「我々は核保有国である米国、英国、フランスに対し、ロシアはこれらの航空機の核兵器搭載能力を無視することはできないと伝えた。ここではどんなに保証しても役に立たないだろう」

 

(和訳終了)

 

ウクライナ空軍飛行場にはロシア軍のミサイル攻撃が頻繁に行われています。

ですから、F-16はすでにウクライナに届いた との話がネットではあるのですが、

何機届いたのかも秘密にされています。

 

ロシア軍のミサイルの格好のターゲットになってしまうので、一度に何機もウクライナの飛行場に移動させる ということもしないと思います。

ですから、F-16の大部分はおそらく、ウクライナの隣国のルーマニアかポーランドの空軍基地へと移送され、ウクライナ国内に移送されるのは 必要になった都度行う ということになるのではないかと思います。

 

これはロシアからすれば、ウクライナ空軍の為に飛行場を貸すルーマニア、ポーランドが直接ロシア相手の戦争に加担している というふうに見ることもできるのであって、危険なエスカレートになると思います。

ですがロシアも F-16がNATO加盟国であるルーマニア、ポーランドに駐機している状態でそこを打撃することはしないでしょう。

 

しかし、F-16が飛行してウクライナの領空に入った途端、ロシア空軍、防空システムのターゲットになるのであって、ですから「前線から離れた場所にしか近づけない」というのはそういうことです。

 

そして、上の記事の中にあるF-16戦闘機に搭載可能なAIM-120ミサイルですが、これは射程160キロの空対空ミサイルです。

 

ですから、160キロ離れたところからロシアの戦闘機を撃ち落すことができる ということになりますが、対するロシア空軍は射程300キロのR-37M 空対空ミサイルを持っています。

 

実際に270キロ離れた場所を飛んでいたウクライナのMig-29をこの射程300キロの空対空ミサイルで撃ち落しており、それが7/29にニュースになっていますので、それも

ご紹介します。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

 

Russian R-37M Air-To-Air Missile Broke New Record And Destroyed Ukrainian MiG-29 – Report

 

(和訳開始)

 

ロシア軍が新たな記録を破った。ロシア軍の複数の情報筋によると、ロシア航空宇宙軍のSu-35S戦闘機が200キロ以上離れた場所からウクライナのMiG-29を撃墜したという。

ウクライナ機はロシアのR-37M長距離空対空ミサイルによる攻撃を受けたと報じられている。ミサイルの射程距離は213キロメートルと記録的な距離だ。これは航空機ミサイルによる標的破壊距離としては記録的な距離と報じられている。

ウクライナ空軍のMiG-29A戦闘機は、ロシアのパイロットによって約270キロ離れた地点で発見されたと伝えられている。ウクライナ機は、米国製のAGM-88Bブロック3 HARM対レーダーミサイルを発射する準備をしていたところを撃墜された。この撃墜の結果、標的はロシアのレーダーから消え、ウクライナの飛行場には戻ってこなかった。

現在、ロシアのR-37M極超音速空対空ミサイルは、世界で最も長距離の誘導空対空ミサイルである。最大射程は300キロメートルです。ロケットの打ち上げ質量は0.5トン以上、弾頭の重量は60キログラムです。敵機を含む空中目標を破壊するように設計されています。

 

(和訳終了)

 

F-16に搭載できる空対空ミサイルの射程が160キロしかないのに対し、それを迎え撃つロシア軍のSu-35とMiG-31には世界最長の射程300キロの空対空ミサイルが搭載可能で、それらが手ぐすねひいて、F-16の登場を待ち構えているのです。

 

そして最初にF-16を撃ち落したロシア空軍パイロットには報奨金まで支払われるとの発表もあります。闘志を燃やさないはずがありません。

 

F-16も悪い戦闘機ではありませんが、そんなに新しくも無いし、訓練を終えたウクライナ人パイロットの数があまりにも少ないことから、ウクライナ人のふりをしたNATO加盟国の退役パイロットあるいはボランティアパイロットもウクライナ空軍に加わってそれらを飛行させるのでしょうけど、ウクライナ応援団の皆さんは このF-16に期待すると、大きく裏切られることになると思います。