すでにご存じの方が多いかと思いますが、7/5、イギリスで総選挙があり、事前の大手メディア等での予想通り、労働党が400議席を超える議席を獲得した地滑り的な勝利、一方保守党は多くの議席を失い 首相のリシ・スナクは議席を守ったものの、多くの閣僚が落選、スナク氏の前1か月間という短い間ですが首相を務めたリズ・トラス女史まで落選する という惨状になりました。

 

これは 大勝した労働党が支持を広げた ということでは全くなく、明らかに保守党への批判票が労働党やナイジェル・ファラージ氏が立ち上げた「リフォームUK」へと流れたことによるものです。

 

なぜ労働党が支持されたわけではないと言えるのか、大手マスコミがあまり報道していないその理由をまず説明します。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

少し見にくいかもしれませんが、上のグラフは今回の選挙での各政党の獲得議席数と得票率を示しています。

上から、赤いバーが労働党、青いバーが保守党、オレンジ色が自由民主党、その下の黄色がスコットランド国民党、その下の水色がリフォームUK、その下の緑が緑の党、一番下が民主統一党となっていて、それぞれのバーの色の濃いバーが獲得議席%を、色の薄いバーが得票率を示しています。

 

濃い赤のバーの議会における獲得議席%を見れば分かる通り、労働党は過半数をはるかに超えて議会の議席数の63%もを獲得したので、「地滑り的な大勝利」だと報道されているわけですが、その下の薄い赤のバーの得票率を見ると、34%しかないことが分かります。

 

そして、保守党は得票率では23.7%でしたが、議席数は251議席を失うという得票率から見ると不釣り合いなほどの惨敗になりました。

 

そして得票率で3位となったナイジェル・ファラージ氏が立ち上げたリフォームUKの得票率は14.3%もあるものの、5議席しか獲得できていません。

これも 得票率の高さに比べれば、獲得できた議席が不釣り合いに低くなっています。

ちなみに、リフォームUKは 事前の支持率世論調査では保守党を追い抜くほどの人気になっていました。↓

 

(上のグラフ:紺色が保守党、水色がファラージ氏の「リフォームUK」。6月10日前後からリフォームUKが保守党を追い抜いているのが分かる)

 

 

これを見ても分かる通り、支持率や得票数と議席数は必ずしもリンクしていないのです。

 

なぜこのような得票率と獲得議席数の不釣り合いが起こってしまうかというと、イギリスは「単純小選挙区制」を取っているからです。

つまり、各選挙区で1位になった候補者だけが当選できるので、いくつかの政党からそれぞれ候補者が出た場合、「死票」がものすごく出るという制度です。

 

単純小選挙区制の場合、大都市だけではなく、地方の小さな村に至るまで、組織がしっかりしている政党ほど強くなります。つまり、組織がしっかりしている従来からの2大政党(保守党、労働党)が圧倒的に有利なのであって、そのような中で今回ナイジェル・ファラージ氏のリフォームUKは かなり健闘した、保守党に変わる選択肢になったと言えます。

 

そして、労働党の党首のキア・スターマー氏が新しい首相になったわけですが、この方は はっきり言って「人気がない」首相だと言えます。

その理由は 彼自身の選挙区での得票数を見れば分かります。

下はストーマー氏の得票数の推移です。(数字はこちらのビデオが情報源です)

 

2017年:41,300票

2019年:36,000票

今回(2024年):18,000票

 

自分の選挙区でたったの18,000票しか取れてなくて2019年に獲得した票数の半分にまで減ってしまった方が今回イギリスの首相になられたわけです。

 

そして、キア・スターマー氏の前の労働党党首だったジェレミー・コービン氏の時代には労働党はどれくらい票を獲得していたか というと、下にグラフがあります。

 

 

 

2017年、2019年、ジェレミー・コービン氏が党首だった時に行われた選挙のほうが

今回のスターマー党首での選挙よりも 多くの票を獲得していることが分かります。

特に2017年の選挙での得票数は12,877,918と、当時テリーザ・メイ氏が党首だった保守党が獲得した13,636,684にわずかに及ばず第二党となりましたが、この時は労働党は若い党員が順調に増えていたそうです。

2019年は ほぼ「EUからの離脱」のみが争点になった選挙で、この時はやはり日本の郵政選挙の時のような熱狂があったこともあり、当時ボリス・ジョンソンが党首だった保守党に敗れましたが、獲得票数では保守党13,966,454に対して労働党10,269,051なので、獲得票数においては滅茶苦茶大差がついたというわけではありません。60議席を減らしたものの、コービン党首の下で、やはり安定した人気や基礎票はあった状態でした。

 

(上の写真:スターマー氏の前の労働党党首だったジェレミー・コービン氏)

 

しかし、コービン氏は イスラエルーパレスチナ問題でパレスチナ人の人権を擁護するまともな発言をしていたので、コービン党首に対して、その後に起こったことが 「反ユダヤ」という執拗なマスコミ、シオニスト政治家からの攻撃でした。

 

2020年10月29日に平等人権委員会が開かれ、ジェレミー・コービン氏は反ユダヤ主義的発言が23回あったとされて、労働党はコービンの党員資格を停止、その後に党首になったのが今の党首のキア・スターマー氏です。(コービン氏は労働党には復帰できず、今回の選挙で無所属で出馬して、スターマー氏よりも多くの票を獲得して当選しました。)

 

キア・スターマー氏はコービン氏の労働党の「影の内閣」の閣僚を長年務める等、コービン氏に「忠実な部下」だと見られていたのが、この「反ユダヤ」問題でコービン氏が責められるようになると、態度を豹変させて党首を裏切り、労働党から追放しました。(ちなみに、スターマー党首の奥様はユダヤ人)

 

だから、キア・スターマー氏は 「自分の出世の為なら恩人をも裏切る」「後ろから鉄砲を撃つ」、まあ日本の政界で言えば石●茂氏のような人間性の方だとも見られています。(ですから、党首としての人気は全くない。)

 

そして、とても心配なことは このスターマー氏は 前首相のリシ・スナク氏よりもさらに強烈なシオニスト支持、且つ、ウクライナの現キエフ政権支持だということです。

 

彼はTVに出演して なんと、イスラエルがガザのパレスチナ人に対して水道や電気や食料を止める「権利がある」と言っているのです。

ちなみにスターマー氏は弁護士ですが、イスラエルによるパレスチナ人のジェノサイドを支持する とは 信じられないほど「非人権的」な弁護士ということになります。

 

上の2枚の写真:TVに出演しインタビューに答えるスターマー党首と質問する司会者)

 

(以下、スターマー党首のTVでの発言の和訳)※元のビデオはこちらで見れます。

 

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スターマー:私は明らかにイスラエルがそれ自身を防衛する権利をもつべきだと明確にしています。
そしてハマスは責任を取らなければならない。

司会者:電気や水を止めるために(ガザを)包囲するのは適切ですか?スターマーさん。

スターマー:私はイスラエルはその権利があると思う。進行中の状況については明らかに全てのことが国際法の中で行われるべきですが、私は核となる原則は イスラエルは自国を防衛する権利を持ち、ハマスがこれらのテロ行為に対して責任を取らなければならない ということからそらしたくない。

 

__________
 

 

そして、スターマー新首相は 前首相のスナク氏よりも もっとユダヤ系ロビーや戦争屋にコントロールされている首相だと思えるのが、ウクライナでの戦争についての立場です。彼はNATO東方拡大やウクライナのミンスク合意履行拒否には全く触れず「ロシアだけが悪い」ということを主張してキエフ政権絶対支持の立場を取っています。

 

ですから、首相になってすぐにウクライナに電話をかけ、ゼレンスキー氏に「今後も軍事支援を続ける」と約束しただけでなく、なんと ウクライナと「100年間」に及ぶ軍事協定を結ぶ用意がある と発言したようです。(情報源は下のビデオ)

 

 

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新しいイギリス政府のトップ、キア・スターマーはゼレンスキーに、ロンドンはキエフへの支援を続けると保証した。

 

これはリーダー同氏の電話の後、首相のオフィスから出された声明で言及された。

 

100年後にウクライナが独立国としてまだ存在しているかどうか、誰にも分かりませんが、100年間の英・宇の軍事協定って頭おかしくないでしょうか?

下手をすれば核戦争になって、イギリスでさえ、100年後は国が存在しているかどうか分かりませんよね。

 

というわけで、イギリス新首相のキア・スターマー氏は ネオコンやシオニストロビーが操る首相だと見た方がいいと私は思います。

 

そしてキア・スターマー氏にアドバイスしているのは 1997年5月2日 - 2007年6月27日の労働党政権で首相だったトニー・ブレア氏だと言われています。

 

トニー・ブレアといえば、アメリカと一緒にユーゴスラビアの解体とセルビアの爆撃、イラク戦争、アフガニスタン戦争、リビア戦争 と数々の戦争を起こしてきた「戦犯」と言ってよい極悪人ではないですか。

 

ブレア政権の時は 保守党のサッチャー政権の「新自由主義」を 労働党はそのまま踏襲して、政策的に完全な右にいたのですが、コービン氏が党首の時代には 労働党は 左寄りの労働者の党になって一定の支持を集めていました。

しかし、コービン氏や左派党員を追い出したスターマー氏の今の労働党は ブレア政権の時と同じように、大幅に右寄りの政党となり、実質的に保守党と労働党の政策には ほとんど違いはない状態になっています。

 

そしてイラク戦争等を推進して世界で数百万人を殺したトニー・ブレア元首相がスターマー氏のアドバイザーにいるということは スターマー新首相の労働党政権は かつてのトニー・ブレア政権のように、世界中で紛争と戦争を推進する愚かな戦犯国家イギリスに戻るかもしれません。

 

アメリカも同じですが、米の共和党も民主党もどちらも戦争好きな政党であるのと同じように、イギリスも 今回労働党が多数になったからといって、庶民のことをもっと考えてくれるかというと、いずれもごく一部のエリート層が選挙制度を利用して2大政党を操っているという国なので、その2大政党から出た政治家が権力を握っている限りにおいては、戦争好きで世界中で紛争や内乱を起こしていくという米英の性質は 今後も変わらないと私は思います。