日本のメディアでも大きなニュースになっていましたが、ロシアのプーチン大統領は6/19、北朝鮮を訪問しました。

 

金正恩総書記と会談したり、プーチン大統領と金総書記がロシア製のリムジンに乗って楽しそうに運転する姿などが報じられていましたが、この際にロシアと北朝鮮が結んだ合意は ロシア、北朝鮮、いずれか一方が他国からの侵略を受けた場合、お互いに軍事支援を提供する というものですので、事実上この2か国は「軍事同盟国」になった というものです。

 

これは 単に「兵器や弾薬を送る」というものかと最初は思っていたのですけど、どうも「兵士を送る」ことまでが含まれているようです。

なぜなら、北朝鮮の当局者が「ウクライナに北朝鮮の工兵を送る準備は1か月以内で出来る」と語ったからです。

 

※「工兵」というのは陣地や塹壕を築いたり道路の建設、爆破等の作業を行う、歩兵や戦車部隊が任務をスムーズに遂行できるよう、建設関係の作業を行う兵士のことです。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

これは かなり重大なニュースだと思います。

北朝鮮にとっては ロシアからミサイルや衛星打ち上げの技術を提供してもらうことやロシアの食料を輸入したりする大きなメリットがありますし、何より6,000発の核兵器を持っていて陸海空いずれからでも迎撃不可能な極超音速ミサイルで米国本土を攻撃できるロシアと事実上の同盟国になったのです。

 

アメリカは 核兵器を持っている北朝鮮と戦うつもりは元々全く無かったでしょうが、北朝鮮とロシアが事実上の同盟国になった以上、韓国や日本が北朝鮮に攻撃された場合でも 北朝鮮にアメリカが攻撃できるか というと、ますます腰がひけてしまう ということになります。

 

日本にとっては ロシアと北朝鮮の接近は もちろん悪いニュースですが、日本政府のトップにいる人間が 米国追従しか頭にない愚か者なので、仕方がありません。

 

国民がいざというときに利用できる地下シェルターすらほとんどなく、パトリオットの能力はウクライナ戦争を見る限り期待外れ、今の極超音速の時代に軍事博物館にでも行ったほうが良いような飛行機並みに遅いトマホークミサイルの在庫処分品を割高価格で買わされるという日本は 米国や韓国と共同軍事演習をするという挑発ではなく、何よりもまず、北朝鮮やロシア、中国との戦争を避ける外交努力をすべきです。

 

そして、プーチン大統領が北朝鮮訪問の後に向かった国が 意外なことにベトナムでした。

ベトナム戦争時代に北ベトナムにソ連が供給した兵器が米国相手の戦争での勝利に役立ったり、1979年に中国がベトナムに侵攻した中越戦争の際にも参戦はしなかったものの、ソ連がベトナムを応援した という”古い友好関係”がベトナムとの間にはあります。

 

しかし、ウクライナでの戦争で西側から厳しい経済制裁を受けたのをきっかけに、ロシアと中国が過去にないほど接近しているこの時期に、中国を刺激するかもしれないベトナム訪問 というのは 何が狙いだったのでしょうか。

この件について、面白い記事を見つけたので、本日ご紹介したいと思います。

 

そこには プーチン大統領のしたたかな外交戦略と、「ユーラシアの巨人」は中国ではなくロシアだ というプライドも見えます。

「ユーラシア大陸を制す者は世界を制す」とも言われますが、そのユーラシア大陸を政治的に制するのは 欧州にもアジアにも近く、北極海の50%を支配し、石油やガスのエネルギーも、レアメタルも、原子力発電のウランも豊富で、中国のライバルであるインドとも軍事含めて密接な関係があって、インド~イラン~アゼルバイジャン~ロシアと結ぶ高速鉄道計画を推進しているロシアである可能性が高いのではないかと私は思います。

 

では、記事のURLは↓です。

 

The Russia-Vietnam Strategic Partnership, Affects US Influence in Southeast Asia. “New Cold War Moves East”

 

(和訳開始)

 

ロシアとベトナムの戦略的パートナーシップは東南アジアへの米国の影響力に影響を及ぼす”東に動く新しい冷戦”である

 

新冷戦の中心がヨーロッパからアジアに移るにつれ、ロシアは間接的に中国に援助の手を差し伸べている。

プーチン大統領のベトナム 訪問により、ベトナムが今後、中国を封じ込める米国の地域作戦でどのような役割を果たすのかという憶測が一部で浮上した。

 

プーチン大統領とベトナムのトゥ・ラム外相は、オーストラリア、日本、フィリピン、台湾(非公式)、韓国も間もなくこれに加わるとみられる米国のNATOのような新興ネットワーク「AUKUS+(スクワッド)」をほのめかし、「選択的な軍事・政治ブロック」を作る政策を拒否した。

林鄭主席はまた、武力や脅迫を使わずに地域紛争を平和的に解決することを誓約し、東海/南シナ海をめぐって中国との緊張関係を再燃させるのはベトナムが最初ではないことをほのめかした。同様に、林鄭主席とプーチン大統領は「我々は、互いの独立、主権、領土関係を損なう第三国とのいかなる同盟や条約も締結しない」と再確認し、ロシアと中国との「無制限の」パートナーシップには、実際には非常に現実的な限界があることを示唆した。

したがって、数十年にわたる戦略的パートナーである両国が「防衛と安全保障の協力を強化し、共に[国際的安定に対する]新旧の課題と戦う」と約束したのは予想できたことだ。これらの軍事戦略声明の重要性は、ベトナムが中国とのバランスを取るために米国の支援を要請すると推測する理由はもはやなく、その目的のためにはロシアに全面的に頼ることになるということを示しており、米国の東南アジアにおける影響力を抑制している点にある。

はっきり言って、ロシアは「中国に反対」しているわけではなく、ベトナムを通じて間接的に「中国を封じ込めよう」としているわけでもない。しかし、海洋紛争においてモスクワが北京よりもハノイを支持しているというのは外交上の事実だ。

この長年の政策は、2021年12月の「ベトナムとロシアの関係発展のための2030年のビジョンに関する共同声明」の中で、両国が合計3回、1982年の国連海洋法条約に言及した際に、非常に外交的な形で最近確認された。

しかし、これはロシアと中国にとって非常にデリケートな問題に関する唯一の意見の相違ではない。両国はカシミールに対するインドの主張 、特に北京が支配するアクサイチン地域に対するインドの主張に対しても全く正反対の姿勢をとっている。

 

それでも両国は、多極化のより大きな利益を追求するために責任を持ってこれらの問題に対処しており、米国が分割統治の目的でこれらの問題を利用することを許さないだろう。ロシアと中国、インド、ベトナムとの戦略的パートナーシップは、そのようなシナリオを回避するのに大いに役立っている。

いかなる紛争においても、紛争当事者双方が政治的にモスクワに頼る意思があるなら、危機が起こった際に両者の間で仲裁するよういつでも要請できる。さらに、中国の観点からすると、インドとベトナムにとってロシアが最大の軍事技術パートナーとなることは、高性能装備をパートナーに販売する意図が常に力のバランスを崩すことである米国よりも望ましい。対照的に、ロシアは対話を促進するためにそのバランスを維持することであり、それは常に望ましいことである。

中越海洋紛争に関しては、ソ連崩壊後のロシアの勢力が最低水準にあった時期には、米国がハノイのモスクワの役割を代行する可能性が常にあったが、ベトナム社会主義共和国は誇りを持って戦略的自治権を保持し、その誘惑を避けた。

ベトナム指導部は、安全保障を戦時中の敵国に頼るべきではないことを知っており、ベトナムが敵の影響下に入ると、苦労して獲得した主権が徐々に侵食されることを正しく恐れていた。

しかし問題は、2010年代半ば以降、中国が東海/南シナ海に対する主張を強め、ベトナムの脅威認識を高めたことだ。北京の行動は、ワシントンが「アジアへの回帰」の一環としてそこで大きな動きをしそうであり、それを先制しなければならないという確信から生まれたものだったが、これは当然のことながらハノイとの関係を不本意ながら悪化させた。ベトナムが中国に対する米国の軍事支援を要請しているのではないかという憶測が高まったのは、ちょうどその頃だった。

ロシアは失われた力を取り戻していなかったが、2017年にプーチン大統領が同年のAPEC首脳会議に出席するためにベトナムを訪問した時点では、その道筋は明らかだった。それから4年後、ベトナムのグエン・スアン・フック前大統領がモスクワを訪問し、両国は前述の2030年パートナーシップ発展計画に合意し、その後現在に至るまで、両国は新たに活性化した戦略的パートナーシップを祝っている。  

この一連の出来事は、過去30年間にベトナムと米国の関係が大きく改善し、昨年9月のバイデン大統領の訪問で締結された戦略的パートナーシップに至ったものの、ベトナムが米国の属国になったことは一度もないということを示している。

 

ベトナムは常に米国防総省と距離を置いてきたが、それは米国が犯した数え切れないほどの戦争犯罪を思い出すと当然のことで、ロシアがベトナムのバランスをとる行為において伝統的な役割をようやく回復する機会が生まれた。

プーチン大統領を迎え入れたハノイに対するワシントンの馬鹿げた非難にもかかわらず、ベトナムと米国の政治的、経済的結びつきは今後も強固なものとなるだろうが、中国とのバランスを取るために新たな戦略的パートナーの軍隊に頼る可能性はもはや微塵もない。その目的のために再びロシアに全面的に頼ることになり、ベトナムが米国に全面的に頼る新しいフィリピンになった場合よりも、中越間の緊張ははるかに扱いやすくなるはずだ。

ウクライナ紛争の必然的な終結と、それに続く中国の封じ込めへの米国の新たな焦点を前に展開している米国の「アジアへの回帰」という文脈において、この結果はベトナムのAUKUS+/「クワッド」との協力を妨げる。

 

北京がハノイに対して軍事的威嚇をしない限り、それは中国の南部戦線に沿った圧力をいくらか軽減するのに役立つだろうが、中国はすでにフィリピンで手一杯で、おそらく間もなく北東アジアでも手一杯なので、いずれにせよそんなことは期待できない。

ロシアは、ベトナムとの戦略的パートナーシップを新たに強化することで東南アジアにおける米国の影響力を牽制し、新冷戦の中心がヨーロッパからアジアに移る中、間接的に中国に援助の手を差し伸べている。中国と協調しているわけではないが、これは中露 協商のもう一つの表れと見なすことができる。ただし、プーチン大統領がベトナムに損害を与える可能性のある協定は他国と結ばないと再確認していることから、非常に明確な制限がある。

実際には、これはロシアと中国の軍事関係が今後も拡大する一方で、いかなる状況においてもモスクワがハノイを裏切り、紛争で北京側につくことはないということを意味する。

 

クレムリンはまた、北朝鮮と締結したばかりの相互防衛条約のような、中国がベトナムと衝突した場合にロシアが中国を支援する義務を負うことになる中国との相互防衛条約を締結することは決してないだろう。

 

その結果、中国とベトナムの力関係は維持され、将来的には紛争の政治的解決につながることが期待される。

 

(和訳終了)

 

 

いかがでしょうか。 かなり「なるほど」と思わせる記事です。

 

ロシアは中国を刺激や牽制するためにベトナムを訪問した というよりは 「ロシアはベトナムの利益を害するような国とけっして同盟関係を結ばない」ということを約束して、「中国をけん制するためには米国に接近するのもやむを得ないかな・・・」と迷いがあったベトナム政府を安心させ、ベトナムが今のフィリピンのマルコス政権のような米国の属国化することを防いだのです。

 

また、上の記事の中にはありませんが、ロシアはベトナム沖のガス田の共同開発やロシアのLNGのベトナムへの輸出でも合意しています。

これは中国、インド、にパキスタンに次いでロシア産ガスの主要な顧客を見つけたという意味もあり、ますますロシアはアジアとの貿易に力を入れてきているいう事です。

 

仮に中国からベトナムが攻撃を受けた場合には ロシアは対話で解決する為の努力をするでしょうが、おそらく軍事的には どちらのサイドにもつかないでしょう。

これは インドと中国が戦争になった場合でも同様です。

 

このようにロシアが 中立的な立場で紛争を外交的に解決する手助けになる可能性があるのですから、今の日本政府がロシアに対して取っているあからさまな敵対行為は 中国

や北朝鮮と日本が戦争になった場合に ロシアが外交的に和平を仲介してくれる可能性をゼロにしただけでなく、中国や北朝鮮と一緒にロシアが日本を攻める可能性を作っただけなのです。まさに岸田外交の失敗での自殺行為だと私は思います。