英国首相のリシ・スナク氏が議会の解散を発表し、イギリスでは来月7日に選挙が行われることになっていますが、現役の首相であるリシ・スナク氏が全く人気がなく、歴史上初めて、現役の首相(スナク氏)が議席を失う可能性が高まっている と報じられています。

 

 

上の新聞記事にある通り、世論調査では スナク首相含めて閣僚のなんと4分の3が落選して、野党である労働党が大勝する予想が出ています。

 

これは 当然の状況ではないでしょうか。

なにしろ、保守党が勝った場合、イギリス国民には「18歳以上は軍隊に12か月間入隊する、もしくは国民奉仕活動を行う」ことが義務付けられる とスナク氏は言っています。

 

当初は ウクライナに英国軍を派遣してロシア軍と戦う気が満々で「徴兵制」の導入を真剣に考えていたようですが、それをやると国民の反発が大きいだろうということで、「徴兵制または奉仕活動」という風に今は変わったようです。

 

 

そして、保守党、労働党という既存の2大政党ではダメだ と思っているイギリス国民も増えています。

そのような方たちの「受け皿」となって人気が急上昇しているのが「リフォームUK」という第三党を立ち上げたナイジェル・ファラージ氏です。

 

 

(上の写真:ナイジェル・ファラージ氏と政党の「リフォームUK」)

 

ナイジェル・ファラージ氏は 特にウクライナ問題では イギリス政府が「”ロシアの熊”を棒でつつくような愚かなことをやっている」と、たびたび 政府に警告をしてきました。

 

今回、人気急上昇中のナイジェル・ファラージ氏の発言を取り上げたいと思います。

 

West ‘provoked’ Ukraine conflict – Nigel Farage

 

(和訳開始)

 

西側がウクライナ紛争を挑発したーナイジェル・ファラージ

NATOとEUの拡大計画によりロシアは西側が脅威であると信じるようになったと、欧州懐疑派の扇動者は語った

 

 

改革英国党のナイジェル・ファラージ党首は、西側諸国はNATOとEUの拡大計画を放棄することを拒否することで、ロシアをウクライナに対する軍事作戦に駆り立てたと発言した。

ブレグジット運動における主要な役割と反移民の見解で知られるファラージ氏は、土曜日のBBCとのインタビューで、キエフでの西側諸国の支援を受けたクーデターの後、早くも2014年にウクライナで戦争が起こる可能性があると警告していたことを振り返った。

「NATOと欧州連合の東方への拡大が、この男(ロシアのウラジーミル・プーチン大統領)に『また奴らが我々を狙っている』と言って戦争を始める口実を与えているのは明らかだった」と彼は語った。

ファラージ氏は、ロシアがウクライナに軍を派遣したのはプーチン氏の「責任」だと主張したが、 「この戦争を引き起こしたのは我々だ」と主張した。

ファラージ氏の発言は英国当局者の怒りを招いており、ジェームズ・クレバリー内務大臣は、改革派英国の党首が「ウクライナへの残忍な侵略に対するプーチン氏の卑劣な正当化を繰り返している」と主張した。

2014年9月、ドンバスで激しい戦闘が繰り広げられていたとき、ファラージ氏は西側諸国によるモスクワへの「不必要な挑発」を非難し、それはNATOとEUのウクライナ併合への野望から生じたものだと主張した。「この話の教訓は、ロシアの熊を棒で突いたら、どんな反応をしても驚かないこと」とファラージ氏は当時語った。

2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍隊を派遣した日、ファラージ氏はプーチン大統領が「私が思っていた以上に踏み込んだ」と認めつつ、 「ロシアの熊を棒で突くのは無意味だ」 と強調した。

ロシアは長年、NATOの自国国境への拡大を存在に関わる脅威とみなし、懸念を表明してきた。米国主導の軍事ブロックのメンバーは2008年にウクライナが最終的に加盟することに合意したが、具体的なスケジュールは示さなかった。キエフは2019年にNATO加盟を戦略目標として正式に宣言した。2022年、旧領土の4地域がロシアへの加盟に投票した後、ウクライナはブロック加盟の申請書を提出した。

モスクワは、ウクライナの中立的地位は自国の軍事作戦の主要目標の一つであると繰り返し主張している。この問題は2022年春のイスタンブール和平交渉で大きな問題となったが、ロシア当局者と交渉におけるウクライナ代表団長のデビッド・アラハミア氏は、当時の英国首相ボリス・ジョンソン氏がウクライナに戦闘継続を助言したため交渉が頓挫したと述べている。ジョンソン氏はこの出来事の説明に異議を唱えている。

 

(和訳終了)

 

ファラージ氏のウクライナ戦争に対する見方は非常にまともだと思います。

大英帝国時代から数百年間続く「反ロシア」の歴史で凝り固まったイギリスの政治家の中ではファラージ氏は貴重な存在ではないでしょうか。

 

ファラージ氏の政党「リフォームUK」の直近の支持率はスナク氏の与党「保守党」を追い抜いた との調査もあります。

 

(上の写真「リフォームUKが調査で保守党を追い抜く」というビデオのスクリーンショット)

 

支持率のグラフの部分だけ拡大してみると、下のようになります。

 

(上のグラフ:紺色が保守党、水色がファラージ氏の「リフォームUK」。6月10日前後からリフォームUKが保守党を追い抜いているのが分かる)

 

上のグラフでは 労働党(赤線)にかなり水をあけられているのが保守党ですので、スナク首相が落選して閣僚の3/4が落選 という前代未聞のシナリオもあり得ます。

そうなると、私個人的には かなり面白いと思いました。

 

 

そして、今回 アメリカでのトランプ氏のインタビューで、注目すべき発言が出てきましたのでその記事も併せてご紹介します。

 

Trump points to ‘cause’ of Ukraine conflict

 

(和訳開始)

 

トランプ、ウクライナ紛争の「原因」を指摘

バイデン氏のNATO拡大発言が原因だと元米大統領が主張

 

 

ドナルド・トランプ氏は、ロシアのウクライナ介入は、キエフのNATO加盟に関するジョー・バイデン米大統領とその政権の無責任かつ挑発的な発言によって引き起こされたと述べた。

11月にバイデン氏と大統領選の再戦を目指しているトランプ氏は、木曜日にポッドキャスト番組「オールイン」の共同司会者デビッド・サックス氏と外交政策について会話する中でこの発言をした。

「ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアにとって本当に問題になる、と20年間聞いてきた。長い間そう聞いてきた。そして、それがこの戦争が始まった本当の理由だと思う」とトランプ氏は語った。 

共和党の大統領候補は、自分がホワイトハウスにいた間はロシアとウクライナの武力紛争についての話はなかったが、バイデン氏が大統領に就任するとすぐに事態は悪化し始めたと指摘した。

「私は、(ロシアのウラジーミル・)プーチン大統領は、まあ、いい交渉人だから、交渉のためにそうするだろうと思っていた」とトランプ氏は述べた。「すると突然、彼らは攻撃してきたので、私は『一体何が起きているんだ?』と思った」 

元大統領によれば、重要な問題の一つはホワイトハウスから発せられた発言だった。

「バイデン氏は間違ったことをすべて言っていた。その中でも間違った発言の一つは『いや、ウクライナはNATOに加盟する』だった」とトランプ氏は語った。

サックス氏は、2022年1月頃、米国のアントニー・ブリンケン国務長官がモスクワに対し、ウクライナはNATOに加盟し、米国はウクライナに核兵器を配備しても問題ないと考えていると伝えたと指摘。 「だからロシアが激怒するのも無理はない」と同氏は述べた。

「そうだな、もしあなたがロシアを統治していたとしたら、あなたはあまり幸せではないだろう」とトランプ氏は答えた。「そしてそれは常に議論の対象外だった。それはダメだと常に理解されてきた」と、キエフのNATO加盟の可能性について言及して付け加えた。

ウクライナのNATO加盟の構想を浮かべたことは「非常に挑発的」だったとトランプ氏は語った。「そして今、それはさらに挑発的だ。ウクライナのNATO加盟について彼らが定期的に話しているのを耳にする。そして今度はフランスがNATOに参戦して戦いたいと聞いている。彼らの幸運を祈る!」

プーチン大統領は、ウクライナが米国主導の連合に加盟する可能性についての西側諸国の声明を、モスクワが無視できない安全保障上の脅威として特に指摘した。ウクライナの中立は、紛争を終わらせるためのロシアの譲れない条件の一つとなっている。

NATOは、「門戸開放」政策は不可欠であり、誰も拒否権を持たないと主張しているが、東方への拡大が紛争の原因ではないとも主張している。 


今月初めのタイム誌のインタビューで、バイデン氏はNATO拡大により米国は「最強の国」になったと主張し、2021年6月にスイスで行われる首脳会談ではプーチン氏に対し「NATOのフィンランド化」ではなく「フィンランドのNATO化」が起こるだろうと語ったという。

 

(和訳終了)

 

今支持率でバイデン氏よりもリードしているトランプ氏には この率直な発言、このウクライナ戦争に対する見方を大統領になってからも維持してほしいと思います。

 

というのは 前回トランプ氏が大統領だったとき、トランプ氏は明らかに ロシアとは友好関係を築きたい という姿勢でマイケル・フリン氏等、比較的”ロシア通”の方を大統領補佐官として配置しようとしたら、即座にありもしない「ロシアゲート」問題をでっちあげられて、その後、ロシアとは友好関係を築けない状態に追い込まれた ということがあります。

 

つまり、アメリカの政治を動かしているのは 大統領ではなく、ロシアと戦争をやりたがっている軍産複合体やエスタブリッシュメントなので、その呪縛から逃れるのは とても難しく、下手をすれば命の危険がある ということです。