ウクライナがNATOの主要加盟国やカナダ、日本等と「10年間の軍事協定」を結んで、その締めとして米バイデン政権とも10年間の協定を結んだことが話題になっています。

 

これで「将来NATOに加盟する道が開いたと共に、その前にはNATOに入らなくてもウクライナは大きな安全保障を勝ち取った」と思っているウクライナ国民、日本国民も多いのかもしれませんが、そう期待すると、完全な期待外れの内容となっていますので、今回記事をご紹介したいと思います。

 

結論から言えば、この10年間の協定は 単に象徴的な意味しかありません。

 

下はオルタナティブ・メディアのANTI WAR.comからの6/13付記事です。

 

Biden, Zelensky Sign 10-Year Bilateral Military Deal

 

(和訳開始)

 

バイデン、ゼレンスキー、10年間の二国間軍事協定に署名

この合意では具体的な支出額は示されておらず、将来の大統領によって簡単に覆される可能性がある

 

バイデン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は木曜日、イタリアでの主要7カ国首脳会議の傍らで、10年間の米ウクライナ二国間軍事協定に署名した。

この合意は、米国がウクライナ軍の訓練、軍事援助の提供、ウクライナの軍産複合体の構築支援を継続することを確約している。しかし、この合意は将来の大統領によって簡単に覆される可能性があり、米国に支出を義務付けていないため、主に象徴的なものである。

米当局者はCNNに対し、この合意は正式な条約ではなく「行政協定」であり、上院の承認を必要としないと語った。協定文には、いずれの当事者も「外交ルートを通じて相手方に書面で通知することにより」合意を破棄できると書かれている。

協定では、将来ウクライナ領土が攻撃された場合、両者は24時間以内に協議を行うべきとしているが、相互防衛の保証は規定されていない。

文書には、米国とウクライナは合意を「ウクライナのNATO同盟への最終的な加盟への架け橋となる」と認識していると書かれているが、ウクライナの加盟への明確な道筋は示されていない。昨年のビリニュス首脳会議でNATO加盟国がウクライナに与えた「同盟国が同意し、条件が満たされれば」最終的にウクライナを加盟に招待するという漠然とした約束を繰り返しているだけだ。

ゼレンスキー氏は昨年のNATO首脳会議で曖昧な保証に激怒したが、米国との新協定を祝福し、これをNATO加盟への道として位置づけている。「今日は本当に歴史的な日だ。ウクライナと米国の間で、独立以来最も強力な合意に署名した」とゼレンスキー氏はバイデン氏との記者会見で述べた。

フランスと他のNATO加盟国は、訓練のためにウクライナに部隊を派遣する計画を進めており、これは大きな緊張の高まりを意味することになるが、バイデン氏は演説の中で、新たな合意は米軍を同国に派遣することなくウクライナを支援するものだと述べた。

「ウクライナで戦うために米軍を派遣するのではなく、武器や弾薬を提供し、情報共有を拡大し、欧州と米国の基地で勇敢なウクライナ軍の訓練を継続し、NATO基準に沿って両軍の相互運用性を高め、ウクライナの防衛産業基盤に投資して、やがて彼らが独自の武器を供給できるようにする」とバイデン氏は述べた。

 

(和訳終了)

 

もう1本、記事をご紹介します。下はロシアメディアのスプートニク・インターナショナルが6/14に掲載している記事です。やはりロシア側も この中身がスッカラカンの

軍事協定を見透かしているようです。

 

Why Biden's 10-year Security Pact With Ukraine is Nothing But a PR Stunt

 

(和訳開始)

 

なぜバイデンの10年間のウクライナとの安全保障協定がPR活動以外の何物でもないのか

 

ジョー・バイデン米大統領は最近のG7サミットでキエフ政権と10年間の安全保障協定を結んだ。5月20日に大統領の任期が切れたウォロディミル・ゼレンスキー氏がウクライナを代表してこの協定に署名した。

 

ホワイトハウスがこの協定を「歴史的」と呼んでいるにもかかわらず、米メディアは協定の将来は不透明だと報じている。
この協定は「条約」ではなく「行政協定」である。

バイデン氏はこの協定を締結するために議会の承認を求めなかったからだ。

 

条約は米国上院議員の3分の2の同意が必要で、国家間の法的拘束力のある協定であり、国際法の一部となる。行政協定は現職大統領の権限で締結され、必ずしも後任大統領を拘束するものではない。


ドナルド・トランプ大統領は2018年、前任者のバラク・オバマ大統領とイランの核合意(上院で承認されなかった)を破棄した。これは、 2015年7月に「歴史的」とも呼ばれたこの行政協定の脆弱性を浮き彫りにした。
 

最近のYouGov、Yahoo News、Emersonの世論調査によると、2024年の大統領選挙ではトランプ氏がバイデン氏をリードしている。RealClearPoliticsによると、トランプ氏は2020年の選挙でバイデン氏の勝利をもたらした重要な激戦州でもバイデン氏をリードしている。


バイデン氏が2024年に勝利したとしても、彼の2期目の任期は2029年に終了するため、10年間の協定の運命は後継者に左右されることになる。


条約は米国大統領の一方的な行動から逃れられない。1978年、ジミー・カーター大統領は1954年に台湾と結んだ相互防衛条約から離脱した。ジョージ・W・ブッシュ大統領は2002年にモスクワとの弾道ミサイル防衛(ABM)条約を破棄した。


最後に、ウクライナ憲法裁判所による明確な説明がない限り、ゼレンスキー氏の署名者としての正当性は無効である。同国の憲法では、大統領の任期は5年に制限されており、戒厳令下でも延長されない。

 

(和訳終了)

 

 

米国では過去の事例から見て、「行政協定」よりもずっと重い国際法の一部になる「条約」からも 大統領が変われば、一方的に離脱するということを行ってきたわけで、それを考えれば、議会の承認も必要のない「行政協定」は もっと簡単にひっくり返せるので、次期大統領がもしトランプ氏になった場合には このウクライナとの10年間の協定というのも 簡単にひっくり返る可能性が高い ということです。

 

また、最初の記事でご紹介した通り、協定の中身にまで 「いずれの当事者も外交ルートを通じて相手方に書面で通知することにより、合意を破棄できる」と書かれている ということで、これがウクライナの安全保障にとって、何の意味を持つのでしょう?

 

そしてウクライナが絶対的に欲しがっている「NATO加盟への具体的な道筋」も全く書かれておらず、曖昧にされている ということです。

 

NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグ氏によれば、「ウクライナがNATOに加盟するために、ロシアに勝たなければならない」とも以前言っていましたので、これも戦場の状況から見て、実現可能性ゼロということです。

 

ゼレンスキー氏は このようなNATO加盟国や西側反ロシア連合と個別に10年間の軍事協定を結んだことを 自分の成果であるかのように自画自賛していますが、中身をよく見てみれば、スッカラカンの内容で、これは何の安全保障にもなりません。

ウクライナ国民は この米エリート層の操り人形(ゼレンスキー)に騙されています。

 

そして、わが国日本についても 大事なことは ウクライナに今後10年間の巨額支援をイタリアのG7サミットで約束してきた岸田文雄には 国民、国会議員に対し、説明責任がある ということです。

 

米国とウクライナとの防衛協定が 国会での承認も必要なく、何の拘束力もなく、後で一方的に破棄もできる「行政協定」なのならば、岸田文雄が 日本の国会での可決もなくゼレンスキーと結んだ10年間の協定も その「行政協定」と同じレベルのものである可能性は高い ということです。

 

ということは 日本でも 理論的には「首相が代われば、そのような協定は破棄できる」ということなのであって、それをあらためて国会の場で国会議員の皆さんが 質疑を行って確認しなければならないと私は思うし、首相が独断で勝手に結んだものを今後首相に就く人たちも律儀に守る必要はない ということでもあると思います。

 

「約束を守る」というのが日本人の美徳のひとつなので、そのように 「前の政権が勝手にやったことだから」という態度は取らないのが日本政府です。

 

しかし、米国も含め諸外国では 「政権が交代すれば、政策も変わるのだから、国際条約ほどの効力のないものは破棄されることも多々ある」 ということです。

 

それはトランプ政権が 前オバマ政権下で推進したTPPから突然脱退したり、イランとの核合意を破棄したりしたことでも明らかであって、日本も 今後国民の血税を10年間にも渡ってウクライナに垂れ流し続けられ、その一方で日本国民には増税 ということを防ぐためには 確実な政権交代と、その後の首相が「もう精一杯ウクライナには金銭支援してきたので、これ以上はできません」と堂々と宣言して、前政権での安全保障政策、経済政策を 勇気をもって100%完全否定する位の大きな変化が必要です。

 

そうでなければ、日本は 今後も「都合の良い世界のATM」として利用され続けるだけです。