アメリカのCNNといえば、米民主党とバイデン政権を応援しているメディアで、ウクライナでの戦争でも西側のプロパガンダを広める役割を担っていますが、そのCNNが本年5/29、アメリカのエイブラムス戦車が如何にウクライナの戦場で役に立っていないか ということを報道しているのが面白いので、今回ご紹介します。

 

Soldiers in Ukraine say US-supplied tanks have made them targets for Russian strikes

 

(和訳開始)

 

米国が供給した戦車はロシアの攻撃のターゲットにされている とウクライナで兵士は言う

 

(注:上の写真からはビデオは再生できません。見たい方はこちらからどうぞ)

 

米国から提供されたエイブラムス戦車の整備に携わるウクライナの作業員らは、CNNに対し、装甲車両の一連の弱点や欠陥について語り、常に変化する戦争の最前線でのその有用性に疑問を投げかけている。ジョー・バイデン米大統領は、この寄贈を米国の「ウクライナに対する永続的で揺るぎない関与」の証拠として発表した。

CNNの記者らは、ウクライナ東部のとある場所でM1エイブラムス戦車を最初に目撃した記者たちだった。そこには木々の間に隠れた約6台の車両が見えた。

ドイツで訓練を受けた乗組員らは、イラクでサダム・フセイン政権の軍や反政府勢力と戦うために使用された米軍の主力戦車(1000万ドル)には、最新兵器を阻止できる装甲が欠けていると語った。

「この瞬間には装甲が不十分だ」と、コールサイン「ジョーカー」の乗組員の一人は語った。「乗組員を守ってくれない。実際、今日はドローン戦争だ。だから今、戦車が出てくると、彼らは必ずドローンで攻撃しようとする

同僚のドニプロ氏は、彼らが「第一の標的」だと付け加えた。

「防御がなければ、乗組員は戦場で生き残ることはできない」と彼は語った。

乗組員はCNNに対し、損傷した戦車にアクティブアーマーを取り付ける試みを見せた。彼らは、弾丸が当たると爆発して防御用の反爆風となるプラスチック爆薬の板を使用した。

ウクライナに配備されたエイブラムス戦車31両はすべて、東部の最前線近くで交戦中であると、全戦車を受け取った第47機械化旅団の関係者らは述べている。エイブラムス戦車は複雑で重戦車を求めるウクライナの要請は、このアメリカ製戦車の供給チェーンが複雑であることから、2023年初頭に大きな議論を巻き起こした。一部の型はジェット燃料で動くものもある。

国防総省当局者は4月、ロシアの攻撃用ドローンの脅威のためエイブラムス戦闘機は前線から撤退したと述べたが、第47航空団は欠陥が顕在化していたにもかかわらず、いくつかはまだ活動中であると述べた。

ウクライナの前線の大部分は現在、自爆攻撃ドローンの使用によって支配されている。これは小型で精密な装置で、歩兵を襲撃したり、戦車に重大な損害を与えたりすることができる。ゲーム用ゴーグルを装着した兵士が操縦する、いわゆる一人称視点(FPV)ドローンの登場により、戦争の性質が変わり、動きが制限され、装甲車両に対する新たな脆弱性がもたらされた。

このウクライナの乗組員たちは、2月にロシアがようやく制圧したアヴディイウカの町周辺での激戦で、エイブラムスの限界を身をもって学んだ。装甲が貫通され、操縦手が片足を失った。しかし、戦車の足かせとなっているのは技術革新だけではない。どうやら技術的な問題もあるようだ。

木の下に駐車されていた一台は、CNNの取材中、ポーランドから輸送されたばかりだったにもかかわらず、エンジントラブルのためほとんど動かなかったと取材班は言う。また、雨や霧の中では結露で車内の電子機器が壊れることもある
と不満を漏らしている。

CNNはコメントを求めて国防総省に連絡を取った。

 

ウクライナの前線の他の場所と同様に、弾薬も問題となっている。彼らは、自分たちが行っている戦闘には適さない種類の弾薬があるようだと話している。

「我々が持っているのは、戦車同士の直接戦闘のためのもので、これは非常に稀なことだ」とジョーカー氏は語った。「我々は砲兵として働くことのほうがずっと多い。木々や建物を破壊しなければならない。家屋に17発の弾丸を撃ち込んだが、家屋はまだ倒れていなかったというケースもあった」

この戦車の性能の悪さはロシアの専門家から「空のブリキ缶」と揶揄されている。ロシア軍は戦車の1台を捕獲し、損傷した状態で赤の広場でパレードを行った。

 

ウクライナ軍の乗組員は、戦車がNATO式の戦闘用に作られたことに不満を表明した。NATO式の戦闘では、戦車と歩兵が前進する前に航空戦力と砲兵が戦場を準備する。キエフは長い間、砲兵と航空戦力の不足を嘆いてきた。

「彼らは絶対にそんなことはしない」とジョーカー氏は、NATO軍が航空支援なしで自分たちと同じ前進をすることについて語った。彼は英語に切り替えてNATO軍の兵士の真似をした。「『航空部隊を呼べ、砲兵部隊を呼べ』」と彼は言った。「我々には航空部隊も砲兵部隊もない。戦車しかない。それが問題なのだ」

ウクライナ国防省の報道官はCNNに対し、「ウクライナは現在、当初は戦争に備えていなかった装備の試験と改良を行っている」と語った。

「我々はすべての国に対し、あらゆる技術的能力レベルの装備で支援するよう要請している。我々はそれをすべて適切に活用する」と報道官は付け加えた。

バイデン大統領がエイブラムス戦車を供給すると決定したのは、昨年のウクライナの夏の反撃の失敗に先立ち、欧州の同盟国が2023年初めに自国の戦車を送ると約束した後のことで、これは数ヶ月前には考えられない措置とされていた。

キエフの同盟国は、かつては供給を拒否していた装備品のレッドラインを徐々に受け入れている。F-16は今後数ヶ月以内にウクライナに到着するかもしれない。ウクライナ軍司令官オレクサンドル・シルスキーは月曜日、フランスが軍事訓練員を同国に派遣し、前線での緊急の人員不足を解消することを許可する最初の書類に署名したと述べた。フランス国防省は計画を確認することを拒否したが、この計画や他の案は長い間議論されてきたと述べた。この動きは、現在3年目を迎えているこの戦争への西側諸国の関与の大幅なエスカレーションとなるだろう。

ウクライナ国防省はその後、CNNへの声明で「決定が下されたら前進するための内部書類手続きを開始した」と述べ、こうした期待を抑えたようだ。

エイブラムス戦車の乗組員にとって、機材や支援の遅れは仲間の命を奪うことになる。「疑問は一つだけ」とジョーカー氏は米国の支援について語った。「なぜ支援はこんなにも時間がかかり、部分的にしか行われないのか。我々は時間を失っている。我々にとっては死だ」

 

(和訳終了)

 

 

M1A1エイブラムス戦車は米軍にとっては湾岸戦争の時に出てきた戦車で、そもそもイラクとか中東の砂漠で使用することを想定した戦車なので、ウクライナのように春と秋に田園地帯が泥状の土に変わってしまうところでは 重すぎて泥の中にはまって動けなくなる ということが多々ありました。

 

この戦車は装甲を強化するのに「劣化ウラン」が使われていて、だから堅牢にできている との前評判でしたが、実際にウクライナの前線に投入されたら、ロシアのドローンに一発当たっただけで簡単に破壊されていましたので、あの前評判は何だったのか と今でも思います。

 

この戦車がドローンの攻撃に弱い ということが分かってからは もう前線では使わないで少し後方で使うように米軍から要請があったようですが、戦車を引いて後方で使用するほど、他の戦車や装甲車も足りないし、余裕がないので、上の記事のように、仕方がなく今でも前線で使っている旅団があるということです。

 

 

 ↓

AP通信:ウクライナはロシアのドローンの脅威の中、米国のエイブラムス戦車を戦場から引いた。

米国軍の上級役人によれば、ロシアの偵察ドローンと攻撃ドローンは検知のリスクを高め、地上での状況を変えてしまった。

 

そして、米国製の兵器や装備にありがちなのが、少し使っただけで長時間のメンテナンスや修理を必要とすることです。

元CIAのラリー・ジョンソン氏の話によれば エイブラムス戦車の場合、1時間使用しただけで8時間のメンテナンスを必要とする という、実に非効率なものになっています。

 

エイブラムス戦車よりも もっと酷かったのは イギリスから14両提供されていたチャレンジャー2戦車です。

これも重すぎてウクライナの春と秋の泥状の田園地帯で使うには全く適しておらず、わずか1、2両が前線の少し後方で登場したものの、それが一発すらも砲弾を発射する前にロシア軍に破壊されて、その後は「最前線で使わないように」という要請がイギリスからあり、いつの間にかウクライナの戦場から消えてしまったという役立たずぶりでした。

 

その後このチャレンジャー2戦車がどうなったのか、下に投稿がありました。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

要するに、西側から送られた戦車のうち、独のレオパルト、英のチャレンジャー、米のエイブラムスは いずれも重量が重くて機動性にかけるので大失敗に終わり、結局それなりの効果を発揮して未だによく使用されているのは 本物の戦車ではなく、「歩兵戦闘車」に分類されている「ブラッドリー歩兵戦闘車」のみとなっているのです。

 

NATOがウクライナに送った戦車が 全くウクライナでの戦争に対応できていない理由は 米軍やNATOが 今までやってきた戦争(イラクやアフガニスタン等)は 相手が米やNATOよりも 戦力的にかなり格下であって、且つ、ほとんど防空システムを持っていない相手だったので、まずは戦闘機、爆撃機で「絨毯爆撃」をやってから戦車や装甲車が入る というやり方が通用していたからです。

 

また、その当時は 攻撃型ドローンが今ほど実用化されていなかったので、今のドローンを使った戦争と第一次世界大戦当時のような塹壕戦とが組み合わさったウクライナでの戦争とは 全く違うものでした。

 

アフガニスタンでの戦争に米軍の中尉として参加していたダニエル・デイビス氏の話によれば、アフガニスタン戦争では 「最前線からわずか800m下がれば、そこでバーベキューができたほどだ」 と言っています。

 

今では「800mどころか、最前線の50キロ後方にいてもドローンや多連装ロケット砲で攻撃されるのであって、そのような中で最前線の兵士にどうやって補給をし、怪我をした兵士を助けるか というのがロシア軍、ウクライナ軍、両軍ともに重要な問題となっています。

 

圧倒的に格下の相手に向けて絨毯爆撃で地上の建物を徹底的に破壊して、ドローンから攻撃される心配もない というそのような戦争しか米国はこれまで経験していないわけで、NATO加盟国でトレーニングを受けているウクライナ兵が 「トレーニングが全く実戦に役に立たなかった」と言っているのもよく分かります。

 

 

そして、ウクライナには6月からF-16戦闘機がやってくる と言われていますが、このF-16戦闘機も 同様に石ころ一つなく綺麗な状態の滑走路と飛ぶたびに長時間のメンテナンスを必要とされます。(一方、旧ソ連製の戦闘機はゲリラ戦にも使えるように間に合わせで作ったようなあまり整備されていない滑走路からも飛行できるものが多い。)

肝心のパイロットの育成のほうは 米国で3名のウクライナ人パイロットが訓練を終了、2024年末までに合計12名のパイロットが訓練を終える予定 とのことです。

 

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

訓練を終えるのが「今年の末までに12名」とありますが、現在の状況では ウクライナ軍の兵士がどんどん足りなくなってきていて、「今年の末」になる前に 戦争が終わってしまう可能性すらささやかれている状態なのですが・・・。

 

追い込まれてヒステリー状態になっているNATOは 今、米、英、仏、独、ポーランド、チェコ、バルト三国、カナダ等、多くの「反ロシア連合」が ウクライナに対し、「自分たちが供与した兵器でロシア国内をどうぞ攻撃してください。」というGoサインをウクライナに出しています。(ちなみにここでいう「ロシア国内」にはクリミアは含まれず、ロシア本土のことを指しています)

 

 ↓

ウクライナに、彼らの兵器でロシア領土を攻撃する許可を与えた国

イギリス、カナダ、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポーランド、フィンランド、フランス、チェコ共和国、スウェーデン、エストニア、

もうすぐ:ドイツ、米国

 

上のリストの中にイタリアの名前がないのが注目です。

イタリアは「ウクライナにイタリア兵を送るつもりはないし、ウクライナに対し、イタリアの兵器を使ってロシア国内を攻撃する許可は出さない」と言っています。

 

 ↓

イタリア、ウクライナがロシア攻撃に西側兵器を使用することにNOを表明

 

イタリアの外務大臣はウクライナに送る兵器はロシア領土内で使用されるべきではない と言った。

キエフに、西側から供給された兵器でロシア内を攻撃するのをある程度の範囲内で許すべきと昨日述べたフランスとドイツの一方で、アントニオ・タルソは「彼らは決してウクライナに兵士を送らないだろう」と言った。

月曜日、イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相はNATO事務総長イェンス・ストルテンベルグ事務総長からの兵器使用制限の解除の呼びかけを激しく拒否した。

マッテオ・サルヴィーニは「NATOは我々にロシアで殺すことを強制することはできないし、我々に対し、イタリアの兵士をウクライナで戦うことを強制させることもできない」と言った。

「もし彼らは行ってウクライナで戦いたいなら、ストルテンベルグやエマニュエル・マクロンと全ての爆撃機がそこに行けばいい。」

我々はたったひとりの兵士も送らないし、私たちの兵器をロシアで使用させないだろう。ーイタリアの外務大臣


■「私たちはたったひとりのイタリア人兵士もウクライナで戦うために送らないし、軍事資産をウクライナの国境の外で使われることを望まない。イタリアから来た全ての兵器はウクライナ内で使われるべきだ。」とタジャーニ氏は語った。

■これに先立ち、イタリアの副首相サルヴィーニはNATO事務総長のストルテンベルグからの呼びかけに鋭く反応していた。

__________

 

このイタリアの副首相、外務大臣の発言は注目に値すると思います。

今までは イタリアも熱心にウクライナに軍事支援をしてきた国の1つですが、やはり、ウクライナに「勝つ見込み」がないことを悟って、ロシアとの関係を これ以上悪化させては損をするだけだ というふうに、変わり身の早いイタリア人の損得勘定が働いたのだと思います。

 

G7の一角を占めるイタリアが このように姿勢が変わってきている ということを 日本もよく見ておいたほうが良いと思います。

米国追従一辺倒で ロシアをますます敵対国扱いにしている日本は 経済的にも軍事的にも損しかしていません。

 

戦地での戦況を見て、「勝ち馬に乗りたい」と思って態度を変えてくる国は 中央アジアや中東の最近の動きもそうなのであって、先日、バーレーンの国王がロシアと中国を訪問しています。バーレーンといえば、米軍基地を置いて約5,000人の米軍人がいる「米の同盟国」といってもよい国ですが、先日バーレーンの国王がロシアを訪問してプーチン大統領と会談した際には パレスチナ、ガザの問題で ロシアによる積極的な仲介を期待する との発言がありました。


中央アジアのウズベキスタンでは ロシア企業による投資、原子力発電所建設の計画が話し合われたようです。

 

ロシア、ウズベキスタンに原子力発電所を建設へ(アルジャジーラの英語記事)

 

昨年3月は米のブリンケン国務長官がカザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジア5か国を訪問して、ロシアへの経済制裁に参加するように圧力をかけていたようですが、これも見事に失敗した ということです。

 

ウクライナでの代理戦争にも失敗し、ロシアへの経済制裁にも失敗し、それでますます「反ロシア連合」が必死になっているのが ロシア国内への軍事挑発です。

 

「西側が与えた長距離兵器でロシア国内を攻撃」 とか 「NATO加盟国が軍隊を派遣する」と堂々と言い始めたのは ロシアにとっては非常に危険な挑発だと受け止められています。核戦争の危機や第三次世界大戦の危機へまた一歩近づいたと言ってよいものです。

 

そして実際に NATOがロシアに対し、とんでもない挑発をしかけたのが ロシア国内に10か所設置されている「核弾道ミサイルの早期警戒用レーダー基地」のうちの、南部にある2か所をウクライナのドローンが攻撃してダメージを与えたことです。

 

(上の写真:向かって左がロシア南西部クラスノダール地方のアルマビル・レーダー

基地のダメージを受けたレーダーを収容する建物。右側はそれを衛星から見た写真。建物周囲に破壊された建物の残骸が散らばっているのが見える)

 

これらは極超短波の地平線越えレーダーで、核を搭載した弾道ミサイルが打ち上げられた場合に、それを素早く探知して警報を出すものです。

この南西部のレーダー基地は イスラエルやイランを含む中東方面から飛んでくる弾道ミサイルを検知できるもので、ロシアの核抑止力態勢の一部となっているものです。

 

このロシア国内の弾道ミサイル早期警戒レーダー施設が攻撃された というのは いくらウクライナ軍が実際にドローンを操作したのだとしても 事前に行ったターゲットの設定は米軍兵士またはその契約者が行ったものでしょう。

 

実際に、GPSで誘導するタイプの兵器(HIMARS、ATACMS、J-DAM、ストームシャドウ、スカルプ)のターゲット設定、入力は 全てウクライナにいる米軍、英国軍、仏軍の”契約者”がやっていると言われています。(イギリス軍兵士がウクライナ国内でストームシャドウの設定、準備を行っていることをドイツ人将校が電話で話しているのが盗聴されていて、公開もされました)

 

ウクライナに衛星情報、ロシア軍の位置情報を提供しているのがこれらのNATOの軍事衛星であって、ウクライナ軍はそれらの軍事衛星からの情報がないと、ターゲットの入力等の操作はできないからです。

 

今回ウクライナのドローンが攻撃したこのレーダーを破壊しても、ウクライナの戦場で負けていることの挽回には どう考えてもつながりません。

 

しかしウクライナの代理戦争で追い込まれたNATOが ますます焦りまくって、ロシアの「核抑止力」に対しても、更なる挑発行為に出ている ということです。

 

あまりにも愚かすぎることです。