先日5/19に発生した、イラン大統領と外務大臣、地域の聖職者、知事を乗せたヘリコプターがイラン北東部の山中に墜落して、ヘリコプターのパイロットも含め5名の搭乗者全員が死亡した事件、この墜落では撃墜か、はたまた電磁パルス攻撃か、もしくは整備不良か・・・という様々な可能性がネットで話題になりました。

 

もう墜落から10日以上が経過したので 何か新しい情報がイランのメディアに掲載されていないか、イランのメディアPressTVのニュースをチェックしたのですが、イラン政府当局としては この墜落は「撃墜事件でもなく、電磁パルス攻撃のような妨害によって発生したものでもない」という見解を発表しているようです。下は5/29のPressTVの記事です。

 

Investigation rules out sabotage in Iran’s presidential helicopter crash

 

(和訳開始)

 

イラン大統領のヘリコプター衝突で、捜査は妨害活動を可能性を否定

 

 

イランのイブラヒム・ライシ大統領と他の政府高官数名の命を奪ったヘリコプター墜落事故に関する継続中の捜査では、この悲劇的な事件の原因として妨害行為の可能性は排除された。

墜落事故を調査しているイラン軍参謀本部による2番目の報告書では、飛行中にヘリコプターが破壊されたという証拠はない、としている。

「ヘリコプターの残骸と部品のサンプル採取と検査、それらの分散パターン、本体から離れた部品の距離を考慮すると、飛行中および山腹への衝突直前の破壊行為による爆発の発生は除外される」と報告書は述べた。

報告書はまた、「墜落したヘリコプターには電子戦の痕跡は見られなかった」とも述べている。

同社は、墜落したヘリコプターの整備や修理に関する書類を調べたところ、事故の原因となり得る問題は見つからなかったと述べた。

報告書はまた、大統領ヘリコプターが飛行隊と連絡を取るのを妨げている通信システムの故障や周波数干渉の可能性も否定した。

 

報告書によると、事故の主原因が判明するまで、検査の調査とデータの分析は継続されるという。

軍参謀本部は5月24日に事件に関する予備報告書を発表し、残骸には銃弾の痕跡や同様の衝撃の痕跡は見られなかったと述べた。

故ラエイシ大統領はホセイン・アミール・アブドラヒアン外相やその他要人らとともに、5月19日に搭乗していたヘリコプターが山に墜落し炎上し、命を落とした。

墜落現場は5月20日午前5時(現地時間)にイランの無人航空機によって発見され、その後すぐに捜索隊が現場に到着した。

ライシ氏は、イスラム教シーア派の第8代イマームが埋葬されている北東部の都市マシュハドのイマーム・レザー(彼に平安あれ)の聖廟に埋葬された。

 

(和訳終了)

 

 

この墜落事件には いくつか不思議な点があるのですが、まず、この墜落した機体はアメリカ製のベル社のベル212ヘリコプターでしたが、通常ライシ大統領が使用していたのはアメリカ製ではなく、ロシア製のヘリコプターで、ロシアのMi-171がイラン大統領専用ヘリコプターだった とのことです。

 

下の写真は 通常ライシ大統領が使用していたロシア製のヘリコプターMi-171です。

 

(ライシ大統領が大統領専用ヘリコプター、ロシア製のMi-171から降りているところ。写真はこちらのビデオからの引用)

 

下は当日搭乗されていた通常の大統領専用ヘリとは違う、ベル212ヘリコプター。

 

 

そして、5/19当日は ライシ大統領とアブドラヒアン外務大臣、イランの東アゼルバイジャン州というところの州知事、東アゼルバイジャン州の宗教最高指導者を含めたイラン代表団が アゼルバイジャンとイランの国境にあるアラス川というのダムの完成記念式典に出席していました。このダム事業はイランの北にある隣国アゼルバイジャンとの共同事業で、そこにはアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領も出席していました。

 

(上の写真の手前、向かって左がイランのライシ大統領、右がアゼルバイジャンのアリエフ大統領。ダムを前にして話しているところ。)

 

(上の写真:完成したギズ ガラシ ダム)

 

そのダム完成記念式典を終えて、テヘランに帰る途中にヘリが山中に墜落してしまったのですが、米製のベル212ヘリコプターの他に他に2機のヘリコプターが同時に飛び立っていましたが、その2機のヘリコプターは ロシア製のMi-171で、当日濃霧が発生していましたが、何のトラブルも事故も発生せず無事に着陸できています。

 

しかし、その別のヘリコプター2機のうちの、エスコート役の1機に搭乗していたチーフスタッフの証言によれば、「3機のヘリは互いに無線で連絡を取りながら飛行を続けていたが、墜落したライシ大統領らを乗せた1機のヘリのパイロットから『雲を避ける為、高度を上げるように』との指示が他の2機にあったが、ライシ大統領らを乗せたヘリのみがなぜか上昇せず、そのまま消えてしまうと同時に無線で連絡が取れなくなった とのことを証言しています。

 

(上の写真は当日の状況について証言したあと2機のうちの1機に搭乗されていたスタッフの方)

 

(上の写真:一緒に飛んでいた3機のヘリコプター)

 

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

 

そして、その証言しているスタッフの乗ったヘリは 消えたライシ大統領搭乗のヘリコプターを探して周囲を旋回し、捜索の為に銅鉱山の近くにいったん着陸した とのことです。

 

雲の為に高度を下げることはできない状態で、なぜ「高度を上げろ」という指示を出しておきながら、大統領のヘリ、ベル121だけ高度を上げることができなかったのでしょうか。

 

そして、ヘリコプターが山の斜面に当たってクラッシュした後も3時間、乗員5名のうちの1名が3時間以上は生存しておられました。

それは 東アゼルバイジャン州の宗教最高指導者、モハメド・アリ・アレ・ハシェム氏です。彼はヘリコプターが渓谷に衝突したこと、彼自身が危機的な状況にあること等を語ったとされています。そして少なくとも3時間にわたって何回かイラン当局と連絡を取っていたようですが、救助に難航して時間がかかったことで、不幸にもその間に亡くなってしまいました。

 

(上の写真:墜落の後も3時間は生存されていて当局と連絡を取られていたと報じられれているモハメド・アリ・アレ・ハシェム氏)

 

もしこの方だけでも 助けられていたならば、実際にそのヘリで何が起きたのか、

証言を聞くことが出来た可能性が高いでしょう。

 

まだ捜査は続けるとのことですが、イラン政府は 今のところ、撃墜や電磁波パルス攻撃の可能性を否定しています。

しかし、当日 アゼルバイジャンになぜか 米国の軍機が来ていた という情報もありますので、電磁波パルス攻撃の可能性は未だに捨てきれない状況かと思います。

 

そして、なぜイランの大統領や外務大臣が乗るヘリが 通常の大統領専用ヘリのロシア製のMi-171ではなく、40年前の米国製のヘリで整備の為の部品調達が経済制裁の為に難しくなっているものへと変えたのか、この一機のみ、パイロットがなぜ雲の上に上昇しなかったのか等、やはり謎が残るところです。

 

そして、事件後すぐに関与を否定する声明を出したイスラエル政府ですが、今回の私のブログでは イスラエルが 過去に行ってきた数々のイランの要人の殺害事件を列挙していきたいと思います。(内容はこのビデオを参考にしています。)

 

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1.2024.4.1 シリアのダマスカスにあるイランの領事館をイスラエルが空爆

これはごく最近の大きなニュースなので記憶に新しいところですが、この事件でイランの精鋭部隊「コッズ部隊」の将官も含めた13人やシリア人の領事館職員らを殺害しました。

 

2. 2010年1月 イランの物理学者を爆弾テロで殺害

 

バイクに仕掛けられた爆弾を遠隔操作で起爆させて殺害されたのは テヘラン大学の物理学の教授だった、マスード・アリ・モハメディ氏です。

 

(上の写真:テヘラン大学の物理学教授、故マスード・アリ・モハメディ氏)

 

(上の写真:爆弾テロ事件後のバイク)

 

 

3. 2010年11月、イラン原子力工学の科学者を自動車爆弾テロで殺害

 

テヘランにあるシャヒード・ベヘシュティ大学の原子力工学部教授、マジッド・シャハリアリ氏が 仕事場に向かう途中、自動車爆弾の遠隔起爆により殺害されました。

 

(上の写真:殺害されたシャヒード・ベヘシュティ大学の原子力工学部教授、故マジッド・シャハリアリ氏)

 

(上の写真:爆弾テロを受けた後のシャハリアリ氏の車)

 

4. 2012年1月、イランの核科学者の殺害

 

イランの核濃縮施設の核科学者、ムスタファ・アフマディ・ロシャン氏を自動車爆弾テロで殺害しました。これも遠隔で自動車に仕掛けた爆弾を起爆させる方法での殺害です。

 

(上の写真:殺害された核科学者、故ムスタファ・アフマディ・ロシャン氏)

 

 

(爆弾テロ後のムスタファ・アフマディ・ロシャン氏の車)

 

 

5.2022年5月、イランの革命防衛隊の大佐を銃殺

 

テヘランの自宅周辺でイランの革命防衛隊の大佐、ハッサン・サヤード氏が銃殺されました。

 

(上の写真:革命防衛隊の大佐だった故ハッサン・サヤード氏)

 

下は葬儀の様子です。

 

 

 

6. 2020年11月、イランの核物理学者を殺害

 

核物理学者のモフセン・ファフリザデ氏がテロにより殺害されました。

この方は イスラエルや米国が疑っている『イラン核兵器開発』の父と呼ばれている方です。

 

(上の写真:故モフセン・ファフリザデ氏)

 

(上の写真:テロ攻撃を受けたファフリザデ氏の車)

 

この時は マシンガンによる銃殺でしたが、それまでとは違い、かなり手の込んだ殺害方法となっています。

 

路肩に止めたトラックの荷台に、ロボット・マシンガンが取り付けられていて、ファフリザデ氏の車がその駐車したトラックが止まっている前の道路のラウンドアバウトを通りかかった時にAI顔認証によってファフリザデ氏だと同定すると同時にマシンガンが遠隔操作で発射された という事件です。

 

(上と下の写真:ロボット・マシンガンの一例)

 

 

マシンガンの部品はバラバラにしてイラン国境内に持ち込まれてイラン内で組み立てられました。そして、路肩に止めたトラックの荷台に積んだロボットマシンガンが 前のラウンドアバウト(環状交差点)を被害者の車が通った時に1,500kmも離れたところにいるマシンガンのオペレーターがから遠隔でロボットマシンガンを操作して、顔認証ソフトで車に搭乗中の被害者の顔を識別すると同時に、1分間の間にロボットマシンガンから合計15発の弾を発射していました。殺害されたファフリザデ氏の隣には夫人が座っていたのですが、夫人に15発のうちの1発が当たったものの、ほぼ正確に核物理学者のファフリザデ氏に弾を当てていました。(下のイラストは現場のイメージ図)

 

 

この暗殺現場の様子はトラックに搭載されたカメラから全てリアルタイムで映像がイスラエルに送られ、モサドはその様子を確認していました。

 

そして最後に、トラックには自爆の為の爆発物も搭載されていたので、爆発物が起爆してトラックごと爆破し、証拠を残さないようにもしていました。

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以上、ここに挙げたのは 6件のイスラエルのテロ攻撃ですが、そのどれもが モサドの工作員やイスラエル軍が イラン国内やイランの革命防衛隊が活動しているシリアにまで行って自動車爆弾、空爆、銃撃等の方法で核物理学者や革命防衛隊の幹部クラスを殺害しているものです。

 

このような他国の領土内でのテロ事件を数々行っているのがイスラエルなのであって、今回のヘリコプター墜落も イスラエルまたは米国が全く関与していない と、まだ現時点で言い切ることはできないかと思います。