すでに大きなニュースとして報じられたので多くの方がご存じかと思いますが、5/20、イランのイブラヒム・ライシ大統領とアミール・アブドラヒアン外務大臣らが乗ったヘリコプターがアゼルバイジャンに近いイランの山岳地帯で墜落して9名の搭乗員全員が死去という大事故が起こりました。

 

私は20日の早朝からこのニュースを海外のニュースサイトで追いかけていてたのですが、最初は「ヘリコプターが不時着」とか「ハードランディングをした」という報じ方でした。ですから「どうか、怪我だけですんでいますように・・・」と思っていたのですけど、その後、「墜落」へと変わり、その後「死亡がもうすでに確実なので、『捜索中』としかまだ伝えていないイラン国民に、ショックを与えないようにどう報じるかを考えている」というようなニュースもロシアのメディアでは報じていて、イランのメディアPressTVが「大統領、外務大臣の殉教」を伝えたのがそのロシアのメディアの2~3時間位後でした。

 

私が思うに、ライシ大統領の功績は アメリカからの経済制裁で長くインフレ等に苦しんできたイラン経済へ BRICS加盟での「脱ドル化」の選択肢が加わったこと、長年対立してきたサウジアラビアとの歴史的な和解、隣国パキスタンとのガスパイプライン建設計画で、再びイランを世界経済の表舞台に登場させる という光を差し込んだところが大きな功績だと思っています。

 

そして、ライシ大統領は 単なる大統領ではなく、現在85歳である最高指導者ハメネイ師の後を継ぐ方だとも見られていました。

ですから、この方を失う というのはイラン国民にとって大きな損失となります。

 

そして、アメリカへの属国化がますます進んでしまった日本に対しては ライシ大統領は このようなメッセージを残されています。

 

 

日本政府が米国から独立するように助言する。米国による広島、長崎への原爆投下で日本自身、歴史上、米国の残酷さを経験している。」って、本当にその通りですね。日本とイランの間にはずっと良好な外交関係があって、かつては 欧米列強相手に有色人種の国の中で唯一、堂々と国益を主張できていた戦前の日本の姿をイラン国民はご存じかと思いますので、今の岸田政権の「アメポチ」を通り越して奴隷に成り下がっている今の姿には 「日本は独立国ではない」 という警告を発したかったのかもしれません。

 

そして、アブドラヒアン外相もインタビューに答えている動画程度しか拝見していないのですが、西側キャスターの意地の悪い質問にも毅然と言い返されていた姿が印象的でした。

 

(上の写真:クルド系イラン人女性が警察に拘束された後に死亡し、その後大規模なデモに発展した件で「外国による介入」がデモを暴力化させていると主張しているアブドラヒアン外務大臣。※上の写真からはビデオは再生できません。見たい方は下のリンクからどうぞ。)

 

 

 

この事故で大統領と外務大臣という政府のトップ2人が同時にお亡くなりになるという、イランにとっては大きな大きな損害になってしまったわけですが、通常、ヘリや飛行機に大統領と外務大臣のような政府要人が乗る場合、乗るヘリや飛行機を分けて、もしもの事態に、2人が同時に亡くなるようなことがないように通常はするかと思うのですが、イランの場合は そのようなことはされていなかったのか? というのがまず最初の疑問点として挙がってくると思います。

 

そして、2番目に濃霧や雨による「悪天候による事故」の可能性が高い と言われていますが、彼らはアゼルバイジャンとイランの国境地帯にあるダムを視察して、アゼルバイジャンのアリエフ大統領とも現地で会った後、イランに戻る為にヘリコプターは3機同時に出発していているわけですが、2機は無事に帰り、ライシ大統領とアブドラヒアン外務大臣らが乗る1機のみが墜落したわけです。

 

天候がヘリを飛ばすのに危険なほど悪いのであれば、そもそも強引に出発などしないでしょうし、他の2機は無事だったわけですから、飛んでいる最中に急に濃霧が出て操縦不能になった というわけでもなさそうです。

 

そして、3番目に アメリカ軍がアゼルバイジャンに入っていた という情報を出している方がいます。下は人気のYoutubeチャンネル「越境3.0チャンネル」からのスクリーンショットです。

 

 

「アメリカ空軍がアゼルバイジャンに入っていた」 というのが本当ならば、事故ではなくて「暗殺事件」を強く疑わなければならないかもしれません。

 

そして、暗殺の可能性について考えるときに、今回ライシ大統領が向かったアゼルバイジャンは イスラエルの事実上の友好国である ということも忘れてはならないと思います。

アゼルバイジャンはイスラエルに石油を売っていますし、ガザでパレスチナ人が虐殺されていても、「国益の為」と言って、イスラエルに変わらず石油を売り続けています。また、アルメニアとのナゴルノ・カラバフ戦争では アゼルバイジャンはイスラエルから大量の兵器を買っていました。

 

そして、イランとアゼルバイジャンは 元々そんなに仲が良くない(イランの北部にアゼルバイジャンと同じトルコ系民族が多く住んでいて、その多くは反イラン政府的)ということもあります。

 

1か月前、イスラエルがイランにドローン+ミサイル攻撃への「仕返し」をする際に、アゼルバイジャンがイスラエル空軍が使えるような基地をひそかに提供した というネットでの噂もあったくらい、イスラエルとアゼルバイジャンは事実上の同盟国に近い友好国といってよいと思います。

 

また、イスラエル軍や諜報機関のモサド等は 過去にイランの核物理学者等を何人もイランの地で暗殺してきたように、イラン国内で 要人を暗殺する ということを平気でやってきました。

 

イスラエル当局がこの事故に「関係ない」と否定していても、彼らは過去に何度も要人の殺害も含めて行ってきていますが、その責任を認めたことは一度もありません。そしてイスラエルでは ライシ大統領の死を喜んでいるようなコメントも飛び交っています。

 

 

そして、もう1つ、もしこれが事故だったという場合に 原因のひとつとして挙げられるのが ヘリコプターが40年以上も経った古いアメリカ製のベル212ヘリコプターだったということです。

 

おそらくそれは イラン革命前の親米傀儡政権だったパーレビ政権時代にアメリカから大量の兵器や戦闘機を買っていましたので、その1つではないでしょうか。

しかし、イランはアメリカから長い間経済制裁を食らっていますので、ヘリコプターの補修やメンテナンス部品が手に入らず、老朽化した米国製ヘリコプターをきちんと整備できていなかった可能性があります。

 

下の写真を見ると驚くのですけど、このヘリコプターは政府のトップや要人が乗るものだとは信じられないくらいに、キャビンも狭いし、まるで一般人の観光ツアーや取材スタッフが乗るヘリコプターのようです。

そのような質素で狭いキャビンに ライシ大統領、アブドラヒアン外相らが座っているのです。

 

(上の2枚の写真:ヘリに搭乗中のライシ大統領とアブドラヒアン外相、ベル212ヘリコプターの外観)

 

 

イラン革命以降の最高指導者だったホメイニ師は 非常に質素な生活をされていたことで有名ですが、ホメイニ師がそうであったように、イランの聖職者や要人の方々は このように 本来お金をかけなければならないところを倹約して質素にしていたようなところがありますので、イランは未だに、米傀儡だったパーレビ政権時代に買った1970年代のF-14戦闘機などの古い機材を使っていたりもします。

 

この悲劇的な墜落が 事故によるものだとしたら、その一因は 霧による悪天候というよりも 古い機材と米制裁によるメンテナンス不良にあるかもしれません。

 

もちろん、まだ証拠はないのですが、「暗殺」の可能性も捨てきれないですし、今後の詳しい調査が待たれるところです。