5/11から始まったロシア軍のハリコフへの攻撃についてですが、何か月も前からウクライナ側も、それを応援する西側も「ロシア軍のハリコフ侵攻が近い」と分かっていたので、それを防ぐための「防衛線」を建設する と言われていました。

 

「防衛線」は地雷原に始まって戦車用の深い溝(対戦車塹壕)といわゆる「竜の歯」、味方の兵士が隠れる塹壕等が複数組み合わされたものを通常指します。

 

ロシア側も 昨年春~秋に行われたウクライナの「反撃作戦」を何か月も前から分かっていたし、マスコミでやたらと「ウクライナの反撃」への期待を込めた宣伝もされていたので、6か月かけて建設会社が入ってしっかりとした防衛線を築いていました。それはこの防衛線を考えたロシアの将軍、セルゲイ・スロヴィキン氏の名前をとって「スロヴィキン線」と呼ばれるものでした。

 

(上の写真:ロシアの将軍、スロヴィキン氏)

 

下は昨年ウクライナの反攻作戦が行われた当時のザポリージャ州でのロシア軍の防衛線です。

二重、三重に防衛線が張り巡らされており、防衛線の前の地雷原でウクライナ軍の攻撃をことごとく跳ね返し、唯一、歩兵が戦車を捨てて、歩いて「竜の歯」までたどり着いたのが 丸で囲ってある部分のラボティノ村だけでした。

 

(上の写真:「竜の歯」の一例)

 

(上の写真:対戦車塹壕の一例)

 

そして、ウクライナ側も この昨年秋に苦い経験をした この強固なロシアの防衛線と同じようなものを ウクライナ北部のハリコフで建設する・・・はずでした。

 

しかし、ロシア軍の5/11からのハリコフ攻撃で判明したのは ハリコフ側のロシアとの国境線に地雷さえなく、防衛線も何もなかった ということです。

ウクライナ軍兵士が「ロシア軍兵士は歩いて国境を越えてきた」と言っています。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

 

ゼレンスキー大統領が言っていた「ハリコフ州の要塞は最強、他の地域も追従すべきだ」という発言は何だったのでしょうか?

下はウクライナ応援の西側大手メディアの1つ、THE HILLの記事です。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

そして、ウクライナのメディアでは 架空の建設会社がハリコフの防衛線を受注した との報道があります。

 

下はその記事の写真です。

Где фортификации? Харьковская ОВА платила миллионы фиктивным фирмам

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

架空の建設会社が防衛線を作る契約を受注し、それらが ウクライナを応援している西側諸国がつぎ込んだ金を横領した というのが事実ならば、本当に開いた口が塞がりません。

 

5/14、ロシア軍がハリコフで大幅に前進する中、ブリンケン米国務長官が突然キエフを訪問してゼレンスキー大統領と会談していますが、その時に話し合われたのは

「なぜ西側が資金援助もした”防衛線”が存在せず、ロシア軍に簡単に攻め込まれたのか?」ということを聞いていた とのことも言われています。

 

もちろん、そのようなやり取りはニュースにはならず、ニュースになったのは「今後も変わらずウクライナを支援する。パトリオットシステムは今、(提供できるものがないか)探している。」という前向きな発言と、キエフのバーでブリンケン国務長官が ギターを弾きながらウクライナを励ましたということのみです。

 

 

 

このギター・パフォーマンスのためにブリンケン国務長官はご自分の愛用のギターをキエフにまで持ち込んだのでしょう。彼の使っているギターは大変珍しい左利き用のギターですから、現地のライブハウスやバー等で借りたものではなさそうです。

 

しかし、ロシア軍はハリコフだけではなく、その西隣のスーミにも侵攻を予定しているのではないかと見られています。

 

ハリコフ侵攻前でも1000キロ以上あった戦線が ハリコフ、スーミにまで拡大する となれば、苦しむのは 兵員が十分にいるロシア軍ではなくて、マンパワーが不足しているウクライナ軍です。

 

ウクライナ軍内部では すでに国防省情報総局長のブタノフ氏とウクライナ軍総司令官のシルスキー氏との間で、ロシア軍の侵入を防げなかったことへの責任追及で、言い争いが始まっていると伝えられています。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

なお、ブタノフ氏は もうウクライナ軍に予備力は残っていない と発言しています。

 

 ↓

「予備力はない」:ブダノフ氏、ハリコフ地域に対するロシアの攻撃について憂慮すべき声明を発表

 

先日米国下院で可決されたウクライナへの610億ドルの支援がなければ、ウクライナ軍の崩壊はこの夏になるだろうと私は思っていたのですけど、今の状況を見ていたら、610億ドルの支援があろうがなかろうが、ウクライナ軍はこの夏を崩壊せずに乗り切れるかどうかも不透明な感じになってきたのではないでしょうか。

 

もちろん、ウクライナが戦場でボロ負けしていても、西側のパトロンが誰も「和平交渉を」とは促しませんので、このようなボロボロ状態のままで、ますます多くの 訓練不足の、ごく最近まで一般人だった人たちが 不幸にも最前線に送られることになるのでしょうけど、そのようになる前に、素直に負け、もしくは劣勢を認めて、ロシアが戦争前からずっと要求し続けていた「NATOの東方拡大をしない」「ウクライナの中立化」を聞き入れる姿勢を見せるべきだと私は思います。

 

しかし、それをやってしまうと、アメリカ一極支配の崩壊、NATOの崩壊を意味するものになりますので、どうしてもそれは認めたくないのでしょう。