昨年10/7からハマスとイスラエルの戦争が始まって約6ヶ月がたちました。
イスラエル軍は 世界一人口密度が高いと言われているガザ地区に対して無差別な空爆を行っていますので、3万人を超える多くのパレスチナの民間人が犠牲になっている一方、攻めているイスラエル軍(IDF)側にもとっても けっして小さくはない被害があります。
IDF側の死者数ですが、昨年の10/7以降からカウントしたのが586人となっています。
そして、死者数よりももっと深刻なのが、手足を失ったり失明したりして、この戦争で「障碍者」となった人たちです。なんと20,000人のIDF兵士が2024年末までに障碍者になると、下のニュース記事は伝えています。
↓
20,000人のイスラエル兵士が2024年末までに障碍者になると予想されている
これだけ多数の方が障碍者になる ということは それらの方への障害年金の支出等で政府の支出がかなり増える ということです。
そして、イスラエルの経済規模はGDPで20%も縮小しています。下はロシアのメディアRTが2/19に報じたニュースです。
Israel’s economy shrinks by a fifth – data
(和訳開始)
イスラエル経済は5分の1縮小 – データ
減少は避難と予備役の記録的な召集によって促進された
イスラエル中央統計局の月曜報告書が明らかにしたところによると、ハマスとの継続的な戦争により、昨年第4四半期にイスラエル経済は同国史上最大の縮小に直面した。
同国のGDPは2023年最後の3カ月間に季節調整済みで19.4%落ち込み、イスラエル経済にとって四半期としては2年ぶりの落ち込みとなった。
この縮小は、ブルームバーグとロイターのコンセンサス予測である10%減よりも大幅に悪化した。エコノミストらによると、敵対行為により企業は麻痺し、避難と記録的な予備役招集が生じ、国の労働力の約8%が解雇されたという。
この戦争は5,200億ドルのイスラエル経済に深刻な混乱を引き起こし、「新型コロナウイルス感染症パンデミック時に課せられた閉鎖に匹敵する制限が生じ、製造業の突然の崩壊を引き起こし、消費に衝撃を与え、学校やオフィス、建設現場に一時的に空きができた」とブルームバーグは書いた。
最も大きな打撃を受けたのはイスラエルへの投資で70%急落し、経済成長の主な原動力である個人消費は第4・四半期に27%減少した。データによると、公共消費はほぼ90%急落した。
一方、統計によると、政府支出は88.1%急増した。軍事支出の増加がこの急増に大きな役割を果たした。
通年のイスラエルのGDPは2%拡大し、2022年の6.5%成長から鈍化した。イスラエル銀行は2024年の成長率予想を2%に据え置いたが、財務省は1.6%と見ている。
今月初め、国際格付け会社ムーディーズはイスラエルの信用格付けを引き下げ、同国のソブリン格下げは初めてとなった。イスラエルの格付けはA1からA2に引き下げられ、ハマスとの継続的な戦争に起因する政治的・財政的リスクを格付け会社が判断したため、格付け見通しは「ネガティブ」に据え置かれた。
(和訳終了)
経済がGDP規模で20%も縮小したのは 普段別の仕事をしているIDFの予備役の人たちが30万人以上も兵役についたことで人手不足になっていること、昨年10/7以前まではガザ地区のパレスチナ人が仕事の時だけ事実上”野外刑務所”のようになっているアパルトヘイトから出て、イスラエルの工場や農場で働くことが許されていましたが、ハマスの攻撃が起こった10/7以降、そのようなガザのパレスチナ人が全員解雇されたことによる人手不足もあります。
それで東南アジアから労働者を呼んだりはしていますが、まだ足りないようです。
そして、50万人のイスラエル国籍の方が国を去りました。
イスラエル政府は ガザでの民族浄化、パレスチナ人全員のエジプトへの追放が明らかな彼らの目的ですので、ネタニヤフ政権がそれを達成するには まだまだ戦争を続けなければなりません。
ですが、もともと極右的な思想に染まっていなくて世俗的なユダヤ人であって能力のある方ならば、長期間戦争を続けている国からは去りたいと思うでしょうから、今後も 国民の脱出は続くことでしょう。
そして、ネタニヤフ政権が言っている「ハマスの壊滅」これはそもそも無理な話です。
イスラエル政府は 現在まで13,000人ものハマスの戦闘員たちを殺害した と言っていますが、その数字が信頼できるものなのかどうか、分かりませんし(民間人がかなり含まれていると思います)、IDFがガザで続けている無差別殺戮の酷い戦争犯罪を目の当たりにして、あらたにハマスの戦闘員になりたい と志願する若い男性も多いようです。ですから、10,000人ハマスの戦闘員を殺しても 新たな戦闘員で補充が問題なくできる という話もあります。
そして、レバノンのヒズボラとの戦闘の為に、北部のレバノンとの国境近くからイスラエル政府の命令によって追い出されたイスラエル人たちは フラストレーションをためています。
ですから、イスラエル政府が今後行うのは レバノン南部への軍事侵攻とそこに「緩衝地帯」を作って、イスラエル北部に住んでいた住民を家に戻す ということを計画している という情報があります。
↓
イスラエルがレバノンに侵攻を開始するかもしれないと、バイデン政権当局の間に懸念が浮上
もしもイスラエルがレバノン南部に軍事侵攻をする というのが本当なれば、イスラエルは壊滅的な打撃を受けるのは間違いないでしょう。
IDFは正式な軍隊ではないハマスに対してでさえも苦戦しているのに、ヒズボラと本格戦争となると、ヒズボラは ハマスとは比べ物にならないほど数多くのミサイルを持っている洗練された軍隊です。ヒズボラとイスラエルが最後に戦ったのは2006年ですが、その時は事実上レバノン(ヒズボラ)の勝利で終わりましたが、今のヒズボラはその時よりもさらに強くなって、イラン製の弾道ミサイルも数多く持っています。
バイデン政権の立場としては これ以上中東で戦火を拡大させない為、正直、イスラエルにレバノン侵攻までは してほしくない と思っているはずです。
それはまさに自殺行為ですし、ただでさえ、ウクライナに供給する砲弾が全く足りていないと言っているのに、レバノンに進攻するイスラエルにまで十分な砲弾など提供できるはずがありませんね。
米国内でのユダヤ人ロビイストと政治家の力関係を考えれば、レバノンへのイスラエルの侵攻が起きた場合、高確率で ウクライナのほうはバスの下に投げ込まれる、つまり”捨てられる”ことになると思います。