昨日のブログ記事でもドイツ軍将校達の秘密の会話がロシア側に漏れていたことを少し書きましたが、今 ドイツでは2022年9月に起こったノルドストリーム・パイプライン爆破事件以来のショルツ政権を揺るがす大問題となっているのが ドイツの将校たちがクリミアとロシア本土をつなぐケルチ大橋をドイツ製の長距離ミサイルトーラス(タウルス)で爆破できないか という謀議を行っている会話がロシアの諜報機関によって盗聴され、リークされたことです。

 

ドイツの将校たちがどのような会話をしていたのか、一言一句は下のロシアメディアのニュースサイトで読めます。(Google翻訳等で和訳してご覧下さい。)

Full Transcript of German Top Military Officials' Leaked Plot to Attack Crimean Bridge

(クリミア橋攻撃に関するドイツ軍トップのリークされた計画の全文書き起こし)

 

その会話の中では トーラスミサイルの輸送費はどこの国が払うのか?とか、ドイツ軍からウクライナ軍に送って使用できるようになるまで8ヶ月かかることやメンテナンス・トレーニングでも3~4ヶ月かかること、だから事実上ウクライナ軍の中に「私服を着てアメリカのアクセントで話す人々がたくさんいることが知られているように、ウクライナが自力で何でも出来ると期待できないのではないか」 ということ、必要な衛星画像は全てウクライナがNATO側から受け取っていること、ドイツがウクライナに提供できるミサイルは50個しかないこと、通常単発のトーラスミサイルはケルチ大橋にただ穴を開けて損傷させる程度の破壊力しかなく、橋全体を破壊するにはトーラスミサイルが10~20発、場合によっては20発以上が必要になること 等が謀議されていました。


ドイツ政府は ロシアからリークされたこの情報は「ロシアの偽情報だ!」と今は騒いでいますが、米国の大手メディア、POLITICOは このリークされた情報は”本物”だとドイツが認めた と言っています。↓

 

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ドイツはそのリークは本物であると認め、内部調査を行うと言ったことで西側諸国には大きな嵐が巻き起こり、モスクワ(ロシア政府)を喜ばせた

 

そして今回、このリークされた情報に ドイツ政府がパニックになっている様子をロシアのメディア、スプートニクが報道していますので、そのニュースをご紹介します。

German Military Leak Added Embarrassment to Berlin's Silence on Nord Stream Sabotage

 

(和訳開始)

 

ドイツ軍の情報漏洩は ノルドストリーム妨害で沈黙するベルリンに、さらに当惑を引き起こした

 

スプートニクのコメンテーターによれば、ボリス・ピストリウス国防大臣は、ロシアを情報漏洩の責任として非難し、ドイツ軍将校らがロシアに対する公然たる攻撃以外の何ものでもないことを話し合っていたという事実を完全に無視した。


ドイツ製トー​​ラスミサイルによるロシアの民間インフラへの攻撃について話し合っていたドイツ将校らの会話が流出し、ベルリンで激しい議論が巻き起こった。「これはハイブリッドな偽情報攻撃だ。それは分断を意味し、我々の団結を損なうことを意味する」とドイツのピストリウス国防相は急いで主張し、「我々は(ロシアのウラジーミル・)プーチン大統領に騙されてはならない」と主張した。これに先立ち、ベルリンはトーラス巡航ミサイルをウクライナに送るつもりはないと述べた。


ノルウェー南東大学の国際関係学教授グレン・ディーセン氏はスプートニクに対し、 「戦争の物語においては、統制が明らかに非常に重要だと思う」と語った。「そしてこのテープでは、ドイツの将軍たちがロシアへの攻撃、より具体的にはケルチ海峡橋(クリミア橋としても知られる)のインフラへの攻撃について話し合っていたことが明らかになった。そしてトーラス・ミサイルが供給されることも明らかになった」 「ウクライナへの供給であり、その場合、アメリカはそれらの扱いや発砲を支援し、一緒にロシアを攻撃することになる。したがって、これはもちろん非常に問題である。なぜなら、これはNATOが戦争に直接関与していること、つまりロシアへの直接攻撃を示しているからである。これは単に武器だけではなく、今度は標的を選び、実際に引き金を引くことさえもできるようになった。
 

ノルド・ストリームの妨害行為とクリミア橋攻撃計画
ロシアが「偽情報」攻撃を開始したと非難することで、ドイツは、ロシアが根拠なく自国のパイプラインを破壊したとして非難された2022年9月26日のノルド・ストリーム破壊攻撃の余波で使用したのと同じ戦略を使用しているようだ。
ディーセン氏によれば、どちらの事件でもドイツ政府の糸を引いているのは米国だという。


「明らかに、米国はこれに関心を持っている」と専門家は、キエフ政権へのトーラス・ミサイル供与の可能性を巡るスキャンダルについてコメントした。「共和党の反対により、彼ら(米国)は現時点で独自の兵器を供給することができていない。したがって、彼ら(米国)は明らかに、このロシアに対する代理戦争においてヨーロッパ人がより大きな役割を果たすことを期待している。それに比べて、さらに気まずいこと ノルド・ストリームは、ノルド・ストリーム・パイプラインが攻撃される前に、米国は何度も 自分たちが何をしようとしているのかを語っていたことを心に留めておいてほしい、と彼らは公然と脅迫し、ロシアがウクライナを侵略するならノルド・ストリーム・パイプラインを攻撃するつもりだと表明した。

どちらの場合も、ワシントンとその同盟国であるドイツ政府は、この事件が西側諸国に分裂を引き起こす可能性があることを恐れた。したがって、最初の本能はロシアを非難することであった、と教授は指摘した。同様に、どちらの場合でも、西側諸国では何が起こったのかを解明しようとする人は誰もいないようだ。ノルド・ストリームの妨害行為に関する調査はいまだ成果を上げていない一方、ドイツ軍の会話はベルリンとその同盟国によって軽視されている。


「これも同じ行動パターンだ」とAfD欧州議会議員グンナー・ベック氏はスプートニクに語った。(注:AfDは大手メディアで”極右政党”だとレッテル貼りをされている「ドイツのための選択肢」のことです。彼らはウクライナでの代理戦争に対して批判的でノルドストリームパイプライン爆破事件でもショルツ政権の立場を非難しています。)ドイツ政府には明確な証拠が提示されている。そして彼らはそれを否定し、ロシアへの攻撃を開始する。これで誰が利益を得ているのかは明らかだ。ドイツ政府内の熱烈な反ロシア利益団体だ。私は緑の党だと思う」 「特に。しかし、広く抽象的な言葉で言えば、西側諸国全体の利益という観点からドイツの国益を定義するドイツ国民全員。それがドイツ支配層の多数派だ。

「ドイツの将軍たちは、ドイツが西側にしっかりと定着していると見ていたドイツの政治支配層の陣営の一員であるようだった。それは私の政党(AfD)を除くすべての政党に当てはまる」とドイツの政治家は続けた。
「そしてもちろん、兵器産業もだ。当然のことながら、ドイツの兵器製造業者はウクライナへの軍事支出の増加から利益を得ようとしている。

 

ドイツ連邦軍の会話は、アメリカとイギリスの軍事専門家もウクライナに派遣されており、フランス軍とともにロシアのクリミアのインフラ攻撃に関与する可能性があることを明確に示していた。
ベック氏によれば、クリミア橋への攻撃はNATOにとって象徴的な出来事であり、「これはクリミアがロシアの不可欠な一部であることの重要な象徴だ」と推測した。
 

「目的は2つあると思う」とディーセン氏はこの件についてコメントした。「1つ目は、戦争という観点から言えば、クリミアは重要な兵站拠点であると考えられる。そして特にこの規模の戦争では、武器や物資を運び移動するために兵站が不可欠であることが分かる」 「周囲には軍隊がいる。したがって、この橋を破壊できることは、ロシア軍の兵站の柔軟性を制限する重要な方法となるだろう。しかし、特にアメリカ人とイギリス人による、この歴史的願望が存在する、より広範でより大きな戦略的レベルもあると思う」過去200年、あるいは200年以上にわたり、(米英は)主要な海軍国としてロシアの海洋へのアクセスを弱めてきた。したがって、繰り返しになりますが、これは何世紀にもわたって非常に古い戦略でした。ロシアはこれらの海にアクセスできるのです。」

ドイツ国民はロシアとの戦争を望んでいない
一方、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ドイツ軍がロシアのクリミア橋への妨害行為の可能性を詳細に話し合っているという事実よりも、ベルリンが漏洩が起こっていることをはるかに懸念しているという事実に注意を喚起した。
「これは(ドイツ人にとって)当然のことですが、ドイツにとって非常に重要なことなので、困惑していると思います」とノルウェー人の教授は語った。「彼らは2つの立場のバランスを取ろうとしている。彼らは、ロシアに対する代理戦争に武器を供給する忠実なNATO加盟国になりたいのだ。しかし同時に、戦争の参加者だと思われないように非常に用心している」 「これは明らかに失敗だった。彼らは現在、ロシアへの攻撃を計画しており、そして現行犯で捕まっており、そのため彼らも参加者となっている。私はこれは単に物語のコントロールの問題であり、これが何を表しているのかに焦点を移すということだと思う。」

ベック氏は、ドイツ支配層はウクライナにさらなる兵器を送り、ロシアの民間施設への攻撃を計画することに何の躊躇もしていないが、ドイツ国民は戦争挑発者ではないと強調した。

 

(和訳終了)

 

ロシアからリークされたドイツのミサイルによるこのクリミア大橋の爆破計画は ドイツ政府の「ロシアとは戦争していない」という、今までのあくまでも”表向きの”立場を 根本からくつがえす大スキャンダルでしょう。

 

そして、リークされた情報が本物だったので、政権内でパニックになると同時に、ロシアに八つ当たりしているわけですが、ロシアの諜報機関が得た情報を おそらくプーチン大統領の許可を得てマスコミへとリークさせたこのロシアの作戦は ドイツが長距離ミサイルをウクライナに提供することによるさらなるエスカレートを未然に防止する意味では非常に賢い方法だと私は思います。

 

ドイツが「提供を考えていない」と今は言っているトーラスミサイルがすでにウクライナにある可能性も高いと私は思いますが、このような情報のリークがあった後に さすがにその謀議の時に話し合われたターゲットのケルチ大橋に向けて発射する というのはやりにくいでしょう。

 

ウクライナとNATO諸国がケルチ大橋に異様にこだわっていますが、ロシア本土からクリミア半島へ軍事物資を輸送するのは主に鉄道や船であり、このケルチ大橋は 軍事物資の輸送には 今はほとんど使用されていません。この橋を通っているのはほとんど民間の車です。

ですから、昨年爆発物を積載したトラックや爆発物を積んだスピードボートによって攻撃をされたときは いずれも犠牲になったのは軍人や軍用物資ではなく何の罪もない民間人のみでした。

 

ですから、ほとんど民間人が車で通行しているこのケルチ大橋をNATOからの長距離ミサイルで攻撃する ということは NATOは民間人へのテロをやっても構わない と思っている ということです。このようなNATOのどこに正義があるのでしょうか?

 

ストルテンベルグ事務総長も「ウクライナが長距離ミサイルで”ロシア国内”を攻撃することは正当化される」と、このドイツ軍将校の会話の漏洩スキャンダルの前に発言していて、それは明らかに 「もうすぐドイツの長距離ミサイルがクリミアやロシア国内を攻撃する」ということを暗に明示していたのではないでしょうか。

それが実現直前になってこの漏洩事件で計画をひとまず撤回せざるを得なくなった というのが真相でしょう。

 

彼らNATOが支援しているウクライナ軍は 今でも頻繁にドンバスやロシア国内の民間人を攻撃していますが、それについては都合が悪いのか、日本のメディアは報道しない自由を駆使してだんまりです。

 

そして、ロシアの諜報機関は 今回のドイツ軍の謀議の録音公開も含めて、要所要所で良い仕事をしていると思います。

 

2014年ウクライナのマイダン・クーデターによって親露派のヤヌコビッチ大統領を追い出した後、暫定首相を誰にするか ということで、ネオコンのビクトリア・ヌーランド氏が当時の駐ウクライナ米大使、ジェフリー・パイアット氏と下のような会話をしていたことも ロシアの諜報機関によって盗聴されて公開されました。この時はヌーランド氏本人も 本人がたしかに話したものだと認めざるを得ませんでした。

 

ビクトリア・ヌーランド:「ビタリー・クリチコ(元ボクシング王者で現キエフ市長)よりも ヤツェニュクのほうがいい。ヤッツェ(ヤツェニュク氏の愛称)が適任だ。」

 

ジェフリー・パイアットウクライナ米国大使:「しかし、たくさんの欧州の国がこのクーデターを不快に思っている。」

 

ビクトリア・ヌーランド:「F◯CK THE EU!」

 

そして、このような好戦的な米国の外交政策を クリントン政権以来国務省でずっと行ってきて、特に ブッシュ(息子)→オバマ→バイデンと、共和・民主の両党の政権にまたがって3人の大統領の下では まさに中心になって担ってきた「ネオコンの女王」こと、ビクトリア・ヌーランド女史が ついに今年の5月に退任する というニュースも飛び込んできました。

こちらについてもご紹介します。ウクライナのメディア、UKRAINSKA PRAVDAが3/5に報道している記事です。

 

US Under Secretary of State Nuland resigns from Department of State

 

(和訳開始)

 

ヌーランド米国務次官が国務省を辞任

 

(上の写真:ビクトリア・ヌーランド氏)

 

アントニー・ブリンケン米国務長官は、ビクトリア・ヌーランド国務次官(政務担当)が今後数週間以内に国務省を辞任する予定であると述べた。

出典:国務省発表の ブリンケン声明

引用:「ビクトリア・ヌーランド氏は、今後数週間以内に政務担当国務次官を辞任する意向であることを私に伝えた。彼女は、外交を我が国の外交政策の中心に戻すというバイデン大統領の公約を体現する役割を担ってきた。私たちの国と世界にとって重要な時期に、アメリカの世界的リーダーシップを再活性化する。」

詳細: ブリンケン氏は、ジョー・バイデン米大統領とともにジョン・バス管理担当国務次官に対し、ヌーランド氏の後任が確認されるまで政務担当国務次官代理を務めるよう要請したと述べた。

ブリンケン氏は、ヌーランド氏の辞任により、6人の大統領と10人の国務長官の下での35年にわたる「顕著な公務」に終止符が打たれると付け加えた。

「これらの経験により、トリア氏(ビクトリア氏)は幅広い問題や地域に関する百科全書的な知識と、米国外交のツールキットをフルに活用して米国の利益と価値観を推進する比類のない能力を身につけた」と述べた。

同氏は、外交官や外交政策の学生が今後何年にもわたって研究するのは、ウクライナ問題におけるヌーランドのリーダーシップであると指摘した。

引用: 「プーチン大統領の全面的なウクライナ侵略に立ち向かい、プーチン大統領の戦略的失敗を確実にするために世界的な連合を組織し、ウクライナが民主的にしっかりと自立できる日へ向けて努力するのを助けるために、彼女の努力は不可欠だった。経済的にも軍事的にも。」 

背景:

ヌーランド氏はこれに先立ち、2024年はウクライナにとって戦略的に非常に重要であり、戦場で「確実な成功」をもたらすだろうと自信を表明した。
同氏はまた、ウクライナの存続と繁栄における役割を考慮し、米国議会はウクライナへの追加支援に投票するだろうと述べた。(注:今下院で保留になっているウクライナへの追加支援予算案610億ドルのことです。)
その前に同氏は、ウクライナ経済のできるだけ早い回復を支援するなど、ウクライナの同盟国はロシアとの戦争で長期にわたる対立に備える必要があると指摘した。

 

(和訳終了)

 

上の記事はウクライナのメディアからの記事なので、ヌーランド氏が比類のない優れた外交官・役人であったかのように伝えていますが、祖父がウクライナ系ユダヤ人であってポグロムから逃れて米国にやってきた家系である彼女が個人的な恨みで ロシア人とウクライナ人が殺し合いをするのを喜んで見ていた と私は思っています。

 

表向きウクライナを応援しているフリをしても、はっきりと「米国が送る支援金の9割は米国内の軍事産業へと帰ってくる」とか、「(公式には)米軍兵士が一人も死なずににウクライナ軍がロシアを弱体化させてくれている」と言っているのですから、あくまで「ロシア弱体化」の為に利用しているウクライナ人の命は これっぽっちも重要だとは思っていないと思います。

 

クリントン政権でユーゴスラビアを解体しコソボをセルビアから盗みとり、ブッシュ政権では「イラクで子どもたちが50万人死んでいるのは”その価値がある”」と言い放ったのは やはりユダヤ人の故・マデレーン・オルブライト国務長官でしたが、その下で働き

「ネオコンの女王」の地位を受け継いだのがヌーランド氏です。

 

長年国務省にネオコンの女王として君臨してきたヌーランド氏が表舞台から去るのであれば、それはロシアにとって というより、世界にとって良いニュースだと思います。