1/26に公開したブログ記事でご紹介した通り、ロシアのベルゴロド州でロシアの航空輸送機IL-76が撃ち落とされ、乗員6名、ロシア軍兵士3名に加えてウクライナ側との捕虜交換の予定で搭乗していたウクライナ軍兵士65名全員が死亡する という事件がありました。

 

 

この事件では 当初、親ウクライナのSNSアカウントやメディアが ウクライナ軍の大きな成果として、喜びのニュースとして報道していたのが ロシアメディアやロシア当局が そのIL-76には捕虜交換される予定だったウクライナ軍兵士65名が搭乗していた ということを報道すると、一転、報道を書き換えたりしていて、明らかに焦っている様子があからさまとなっています。↓

 

ウクライナのメディア、UKRAINSKA PRAVDAの当初の記事↓

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ロシアのベルゴロド州でのIL-76航空機が墜落:ウクライナ軍が作戦を確認

 

 

タイトルが書き換えられた記事↓

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ロシアのベルゴロド州でのIL-76航空機が墜落:写真、ビデオ

 

※記事が投稿されたのは同じ1/24 12:35となっているのに、当初のタイトルにあった”ウクライナ軍が作戦を確認” というのが消えていることに要注目。

 

下はウクライナ語でのバージョンですが、1/24 12:35ではなくて、事故発生直後の11:04に同じUKRAINSKA PRAVDAが報じた記事もネットで見つけました。↓

 ↑の記事を英語に変換すると、↓になります。

 

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IL-76航空機がロシア連邦のベルゴロド州で墜落:軍隊は「これは彼らの仕事だ」と叫んだ

 

そして、記事の投稿時間は11:04と同じになっていますが、下がその後に書き換えられた記事のタイトルです。

 ↑の記事を英語に変換したものが↓です。

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IL-76航空機がロシア連邦のベルゴロド州で墜落

 

 

このように、やはり、修正された記事では当初あった、ウクライナ軍がやったということを示唆する 軍隊は「これは彼らの仕事だ」と叫んだ という部分が意図的に削除されています。

 

そして、Twitter(X)ではこのような投稿を見ました。↓

 

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フランス軍の情報元は昨日発生したロシアでのIL-76墜落は パトリオットミサイルによって撃ち落とされたものだと主張している。

これはクリスマス以降にロシアの大型航空機が撃墜された可能性が高い2機目となるだろう。

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ウクライナにたくさんの兵器支援をしているフランス軍がそう言っているのであれば、すでに西側メディアもIL-76はパトリオットミサイルで撃ち落とされたと認めているのでは・・・と思って、情報を探してみたら、西側大手メディアのワシントン・ポスト紙が報道していました。

 

本日はワシントン・ポスト紙の報道をご紹介します。

元記事のURLはこちら↓です。

Ukraine shot down Russian military jet, killing 74, officials say

 

(和訳開始)

 

ウクライナがロシアの軍用機を撃ち落とし、74名を殺した と当局が発表

 

水曜日、ロシア軍機がウクライナとの国境近くの西部ベルゴロド地域で墜落し、乗員74人が死亡したと ロシア国防省は声明で発表し、ウクライナが航空機を撃墜したと非難した。

同省によると、この飛行機はイリューシンIl-76で、その後の交換のためにこの地域に輸送されるウクライナ人捕虜65名のほか、乗組員6名とその他3名が乗っていたという。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は水曜夕方のビデオ演説で、「飛行機の状況に関する」報告を求めて軍と国防のトップを呼んだと述べた。

ゼレンスキー大統領は捕虜の死亡を具体的には認めなかったが、重々しい口調で語った。大統領は、「空軍の使用」(キエフが航空機を撃墜したことを暗黙の承認)に関してウクライナ軍指導部と話し、軍情報総局は「すべての捕虜の運命を解明することに取り組んでいる」と述べた。

同氏はロシア人がウクライナ人捕虜を危険にさらしていると非難した。 ゼレンスキー氏は「ロシア人がウクライナ人捕虜の命、彼らの親族の感情、そして私たちの社会の感情をもてあそんでいるのは明らかだ」と述べた。

これに先立ち、ウクライナ情報総局は水曜日に捕虜交換が予定されていたと認めた。

しかし同総局は、「正確に誰がどのくらいの人数で飛行機に乗っていたのかについて、信頼できる包括的な情報が不足している」と述べた。

「ウクライナは交流準備に関するすべての合意を履行した。ロシア人捕虜は、合意された交換地点に適時に引き渡され、そこで安全に保管された」と情報機関は声明で述べた。「合意に従い、ロシア側は我々の守備陣の安全を確保する責任を負っていた。同時に、過去に伝えられていたように、ウクライナは指定期間中にベルゴロド市上空を確保する必要性について知らされていなかった。」

同局の声明によれば、ロシアはまた、捕虜の輸送計画についてウクライナに通知しておらず、「30キロメートルの戦闘地域に輸送機を着陸させることは安全とは言えず、危険を伴うため、交換プロセス全体を双方で話し合うべきである」と付け加えた。

ロシア国防省は以前の声明で、「ウクライナ指導部は、確立された慣例に従って、本日、ウクライナ軍人が交換のため軍用輸送機でベルゴロド飛行場に輸送されることをよく知っていた」と述べた。

同省は、交換はロシアのベルゴロド地域とウクライナのスームイ地域を隔てるコロティロフカ国境検問所で行われる予定だったと付け加えた。

誰が乗っていたか、あるいは墜落の原因について、いずれの主張も独立して検証することはできなかった。

2014年からウクライナでの敵対行為を追跡しているロシアのオープンソース諜報機関である紛争情報チームの分析によると、飛行機墜落のビデオに映る煙の噴出と、胴体外板上の損傷要素の痕跡は、撃墜された航空機と一致するという。 

ロシア外務省は、ウクライナが「テロ行為」を犯したと非難し、捕虜を交換のために配置するために使用されたルートと輸送手段についてウクライナが知らされていたとの主張を強めた。

外務省は「航空機への攻撃は意図的かつ意識的な行動だった」と述べた。「今回のテロ攻撃は、キエフ政権の交渉能力の無さを明らかに示している。」

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、墜落事故に関連して国連安全保障理事会の緊急会合を要請した。

ウクライナ捕虜処遇調整本部は水曜早朝の声明で、墜落事故に関する報告をまだ分析中であると述べた。

「権限を与えられた個人や当局による公式声明やコメントが発表される前に、メディアや国民に対し、未確認の情報を広めないよう求める」と述べた。「敵がウクライナ社会の不安定化を目的としてウクライナに対する情報特別作戦を積極的に実施している」と強調している。

 


墜落原因は確認できていないが、ロシア高官は証拠を示さず、同機はドイツ製か米国製のミサイルを使用してウクライナ軍によって撃墜されたと述べた。

ロシア国営メディアと電報チャンネルで公開された墜落現場の短いビデオクリップには、雪原に散乱する破片が映っていたが、それ以外の現場の様子はほとんど映っていなかった。

当局者の一人、ロシア下院国防委員長アンドレイ・カルタポロフ氏は、 2機目の飛行機が同様の事故をかろうじて免れたと述べた。

次に2機目のIl-76飛行機があり、さらに約80名の捕虜を乗せていた。時間内に経路変更が行われた」とカルタポロフ氏は語った。

ウクライナ指導部は差し迫った交換をよく認識していた。彼らは囚人がどのように引き渡されるかについて知らされていた」とカルタポロフ氏は付け加えた。「しかし、Il-76飛行機はパトリオットかドイツ製のアイリスT対空ミサイルシステムからの3発のミサイルによって撃墜された。」

ロシア議会のヴャチェスラフ・ヴォロディン議長は、議員らは米国とドイツの国会議員の責任を追及すると述べた。

ボロディン氏は議会で「人道的任務を遂行していた我が国の軍用輸送機の無防備なパイロットが米独のミサイルで撃たれた」と述べた。「これらの国の議員は、これがすべての原因である自分たちの責任を認識する必要があります。」

ベルゴロド地域は、2022年2月のウクライナ侵攻以来、ロシア軍の中継地として機能しており、ベルゴロドとも呼ばれる地域の首都は、最近のウクライナ砲撃の増加で継続的な攻撃にさらされている唯一のロシアの主要都市である。12月30日、そこでロケット弾とミサイル攻撃があり、25人が死亡した。

 

(和訳終了)

 

このように、西側の大手メディアであるワシントン・ポスト紙も ウクライナがIL-76を撃墜した と暗黙のうちに認めている と書いているわけです。

問題は この撃墜行為が ウクライナ軍捕虜が搭乗している と知っていてやったのか、もしくは 知らなくてやったのか ということですが、もちろん、どちらの可能性もありますが、あくまで私の印象では ウクライナ軍内部の現場の混乱、要するに ウクライナ軍兵士の捕虜が その飛行機に搭乗している とロシアが伝えた情報が 防空システムの操作を担当する兵士にまで伝わっていなかった のではないかと推測しています。

知っていてわざとやったのでしたら、ウクライナのメディアが焦って記事のタイトルを何度も書き換えたりしないと思います。

そして、この事件が 今後どう影響するかというと、ロシア側の乗員と兵士計9名と輸送機IL-76の損失 というのは少しは影響があるかもしれませんが、それ以上に影響が出ているのはウクライナ側です。

ただでさえ 非常に不人気なさらなる「50万人動員」が 交換予定だった自国の捕虜までウクライナ軍によって殺害された となると、誰が喜んで前線に行きたがるでしょうか? また、前線では ロシア軍への降伏を決断したウクライナ軍の部隊が別の懲罰を行うネオナチ部隊によって撃たれる ということも何度も起こっています。

また、返される予定だった兵士の家族に今回の撃墜事故の情報がもし知られたならば、家族はどう思うでしょう? ロシアに対しての怒りもあるかもしれませんが、実際に航空機を撃ち落としたウクライナ政府への怒りのほうが圧倒的に大きくなるでしょう。


ですから、ゼレンスキー政権にとっては これは小さなニュースでも「軍事的成果」でも何でもなく、今後 政権が不安定化する可能性をはらんでいる事件になった ということです。