ハマスの攻撃が起こったのが10/7で、イスラエルがガザの爆撃だけでなく、地上侵攻を始めたのが10/27で、ガザへ爆撃を始めてから約100日、地上侵攻を開始してから約80日が経過しました。

 

世界一人口が密集しているガザの人口は230万人ですが、すでに人口の1%に当たる23,000人以上ものガザのパレスチナ人が犠牲になってしまいました。その7割はハマスの戦闘員ではなく、女性や子供と言われています。

また、人口の3%が重症を負っている ということですので、69,000人もの人々が重症を負っていることになります。

 

さらに痛ましいのは イスラエルが医薬品の支援物資の搬入を厳しく抑えたり、電気や水を止めている為、医療機関がまともに機能しておらず、重症を負った手や足の切断手術を野外で、しかも麻酔無しで行っている という話です。

小さな子どもや女性に対しても 麻酔なしでの手や足の切断手術をやらざるを得ないのです。なんとむごいことでしょう。

(ガザで麻酔なしで手足の切断手術を行っている というのはイスラエルがガザでの「ジェノサイド禁止条約違反」で南アフリカから訴えられた裁判で南アフリカ側の弁護士の方もそう言っていましたし、こちらのビデオでもそう言っています。)

 

このように国連や周辺国からの支援物資や食料、水の搬入まで拒否してイスラエルが無差別な空爆を続けるのは明らかな戦争犯罪、ジェノサイド、民族浄化であり、絶対に許してはならないと私は思います。

 

しかし、イスラエルが”野外刑務所”とも言われているガザをこのように包囲して爆弾を落として徹底的に破壊している目的が ネタニヤフ首相が言っているような「ハマスの殲滅とイスラエル人人質の解放」なのであれば、彼らの軍事戦略は明らかに失敗している と言ってよいと思います。

 

当初、正式な軍隊ではないハマスと世界有数の軍事力といわれていたイスラエルでは 戦力から見て圧倒的にイスラエル有利だという意見もありました。

しかし、総延長500キロにも渡るトンネルを張り巡らせているハマスに対して、IDF軍が徹底的に破壊して瓦礫の山となった地上部分の建物は 戦車を破壊するロケットランチャー等を持ったハマスの戦闘員たちが隠れるのに最適な場所を提供する形となっています。

 

イスラエル政府はガザの北部に侵攻したことで、「9,000人のハマス戦闘員を殺害した」と言っていますが、この数字は怪しい という意見がネットでは多いです。

なぜならば、IDF軍が公開しているビデオ画像等からは民間人と思われるパレスチナ人を爆撃したり殺害しているビデオは複数あるものの、明らかに戦闘員だと分かるビデオは少なく、9,000人 というのは過大に発表された数ではないかという疑いがあります。

 

また、仮に9,000人のハマス戦闘員を殺害した という発表が事実だとしても ハマス戦闘員の総数約30,000人から見れば、大した事のない数字であって、それでハマスが壊滅した、とか戦闘能力を失った とは決して言えないものになります。

 

ハマス側もイスラエル軍の戦車や軍用車両を破壊するシーンをたくさんネットにアップしているのですが、むしろ視覚的な確認では ハマスがIDF軍兵士をかなり多く殺害しているように見えます。しかし、ビデオは同じ戦車の破壊シーンが拡散されたりもしているでしょうから、もちろん、ハマスが殺害したIDF軍兵士の数も定かではないです。

 

しかしイスラエル軍が認めてイスラエルの新聞で発表されている兵士死亡数だけでも1/14時点で523名、そして、重症を負って今後障害年金をもらわなければならない障害者になった兵士の人数だと12,000人以上 と、イスラエルにとって、かなりの痛手にはなっているのは間違いないです。

 

さらに、IDFが失敗している と言える大きな理由は 交渉によって人質を交換した以外の事例では IDFの戦闘によっては たった1人でさえも、”生きた状態”で人質を救出できていない」ということです。

間違って3名のIDF兵士を撃って殺害した事件を見れば分かる通り、予備役だったところを招集された、若くて経験の浅い、トレーニングも十分に積んでいない兵士たちでは 敵と味方を見分けることもできないし、ジュネーブ条約等も関係なく、白旗を上げて裸になって降伏の意志を示していても、パレスチナ人だったら撃って良い というずさんな命令に基づいて行動していたのが分かります。(詳しくは下の過去記事を御覧下さい)

 

 

 

IDFは北部のガザ市内からの撤退を先日発表しましたが、「ガザ北部にあるハマスの中枢部を破壊し多くの戦闘員も殺害して目的を達成したので撤退する」と公には言っています。しかし、実態は ”エリート”と言われていた旅団も含めて、5旅団もの兵士がIDFの軍事作戦から離脱したのです。ガザ南部や中部作戦での作戦は今後も継続するとイスラエルは言っているのですから、本当に彼らの作戦が成功しているのだったら、まだ戦闘は2024年度いっぱいまでほどは続く とネタニヤフ首相は言っているにも関わらず、1万人以上の兵士を撤退させたりするでしょうか? 

 

そして、経済的な打撃では イスラエルからはすでに50万人が国外脱出しました。

(情報源はこちらのビデオ

今後も もし戦況が悪化すればどんどん国民が逃げていくはずで、しかも 逃げるのは ユダヤ教信仰には熱心ではない、いわゆる世俗的で、ユダヤ教のしきたりにこだわらず他国でも順応して仕事も他国で出来る、つまり、能力の高い人たちから去っていくものと思います。

逆にユダヤ教徒のラビのような人たちは 普段働いていなくて政府から生活保護のようなものをもらっていて、兵役まで免除されている という、いわゆる特権階級的な優遇をされていますので、言い方は悪いですが、税金を払う側ではなく、税金をもらって暮らしている側の人たちの多くはイスラエルに留まるだろうと思います。ですから納税者が国を去って税金で暮らす人達が残るというのは イスラエル政府にとっては打撃になるでしょう。

 

そして労働力不足による企業の休業や倒産が深刻になっています。普段は別の仕事をしていた36万人の予備役が招集されたこと、ガザのパレスチナ人が イスラエルの農場や企業で働くことが許されていたのを 10/7以降、全員クビにしたことで 人手不足が深刻となり、主にタイやフィリピン等の東南アジアからの移民の労働者で労働力を補おうとしています。

 

そして、イスラエルは北部のレバノンとの国境近くと南部のガザの周辺から自国民を避難させてますが、この避難した合計30万人はまだ家に戻れておらず、ホテル等の民間の宿泊施設に滞在しており、滞在費用を政府が負担する形になっているので、その費用も莫大になっていると思います。

 

さらに、経済の打撃に追い打ちをかけたのが イエメンのフーシ派による紅海での船舶への攻撃による、輸入品の輸送コスト大幅増や全世界的に起こっているパレスチナ連帯運動やイスラエルを非難する動き、最近南アフリカによって行われたICJ(国際司法裁判所)への提訴等で被った、イスラエルという国家やユダヤ系企業に対する信用度の大幅な低下です。

 

もちろん、ICJはどちらかと言うと、イスラエル寄りの西側諸国が中心になっている国際機関ですので、イスラエルがジェノサイド条約に違反している という判決が最終的に下されるかどうかまでは現段階では分かりません。

 

しかし、ICJでの口頭弁論の前日、ネタニヤフ首相が 「イスラエルはガザの民間人を標的にはしていないし、ガザを支配するつもりもない。」という、今まで言っていた事とは180度違うことを言ったことは イスラエルが 南アフリカからのICJ提訴を非常に深刻に捕らえていて、ある意味、パニックになっていることを示しています。

 

南アフリカ側、イスラエル側、両陣営からの口頭弁論の一部だけを私はYoutubeで見たのですが、南アフリカ側は ネタニヤフ内閣の閣僚の実際の発言やガザを侵攻して「アマレク人(旧約聖書に出てくるユダヤ人の敵)を滅ぼす」という歌をチャントしながら踊っているIDF兵士たちのビデオを出す という確固たる証拠に基づいてイスラエルが意図的なジェノサイドを行っている と述べたのに対し、イスラエルは ”論点のすり替え”ばかりが目立ちました。

 

例えば、「ユダヤ人はナチスとその協力者によって600万人が殺害されており(注:公称”600万人”という数字は過大すぎるのではないかという学者も多い)、ジェノサイド禁止条約に最初に署名したのがイスラエルだ。」とか、「どこであれ、戦争で民間人が犠牲になるのは悲劇である。しかし、元々10/7にハマスがイスラエルの民間人を殺害し、誘拐し、女性をレイプし、子供を殺したので、私達はあくまで防衛目的で軍事作戦を行っている。ガザで民間人を殺さないように慎重にターゲットを選定しているが、民間人が犠牲になるのはハマスが民間人を盾にしているからだ。」というようなことです。

 

しかし、私が過去記事でもご紹介した通り、10/7に殺されたイスラエル人の多くはハマスではなく、IDFのヘリコプターからの爆撃や戦車からの砲撃によるものでした。

 

 

 

また、「ハマスの戦闘員が女性をレイプした」というのも今のところ証拠がない とユダヤ人ジャーナリストのマックス・ブルメンタール氏は言っています。

 

Fact Sheet: Israel’s History of Spreading Disinformation

(ファクトシート: イスラエルの偽情報拡散の歴史)

 

(以下、上記記事の一部抜粋和訳)

 

イスラエル当局は、ハマスの戦闘員が10月7日の攻撃中に女性を強姦したという主張を広めたが、これは米国メディアや国営テレビでの演説中のバイデン大統領を含む米国の政治家らによって広く繰り返された。しかし、10月10日、イスラエル軍報道官はフォワード紙のアルノ・ローゼンフェルド記者に対し、イスラエルは「土曜日の攻撃中またはその余波で強姦が起こったという証拠はまだ持っていない」と述べ、1週間以上経った今もイスラエルは証拠を提出していない。

 

(一部抜粋和訳終了)

 

また、ハマス戦闘員が40人の子供の首を切った というのも嘘だったことがバレています。↓

 

(以下、上記記事の一部抜粋和訳)

 

イスラエル軍とベンヤミン・ネタニヤフ首相事務所は、ハマスの戦闘員が10月7日にクファル・アザの町を攻撃した際、最大40人の子供を斬首したと主張した。この扇動的な主張は急速に広がり、メディアやジョー・バイデン大統領によって広く繰り返された。バイデン大統領は、ユダヤ人指導者らとの会談中に、首を切られた子供の写真を個人的に見たと虚偽の主張をしたが、ホワイトハウスは後にこれを 撤回して、写真は見ていなかったと認め、米国がその主張を検証していないと認めた。 しかし、斬首疑惑の現場を訪れたイスラエル人ジャーナリストらは、  その主張を裏付ける証拠は何も見られず、同行していたイスラエル軍当局者もその件については一切言及しなかった。その後イスラエル軍は この主張の確認を拒否し 、1週間以上経ってもそれを裏付ける証拠は出ていない。

 

(和訳終了)

 

元々、ICJにイスラエルを提訴した南アフリカ政府は ハマスによる昨年10/7の侵略についても非難しており、彼らの犯罪を擁護しているわけではありません。

しかし、イスラエルによるその後のガザへの無差別絨毯爆撃や食料、水、電気の供給ストップ等のジェノサイド条約が禁止している「集団懲罰の禁止」に明らかにイスラエルが違反している と言っているのです。

 

ですから、イスラエルがICJで主張した「ナチスによる600万人のユダヤ人の殺害」とか、「ハマス戦闘員によるイスラエル人殺害、レイプ、子供の殺害」ということ自体、明らかな”論点すり替え”以外の何物でもありません。

 

そのように論点すり替えで苦しい弁明を行わなければならないほど、イスラエルは 今の世界の大多数の国を敵に回した状況に焦っている ということだと思います。