私のブログで時々その発言を取り上げてきた、ゼレンスキー宇大統領の元補佐官だった、オレクシー・アレストビッチ氏についてですが、かつてはゼレンスキーのベスト・フレンドだった人が 今は完全に「反ゼレンスキー」になって、軍の将校と共謀しての”クーデター”もほのめかすようになって、またウクライナのEUやNATO加盟についても面白い発言をしていますので、今回取り上げたいと思います。

 

まず、下のビデオは2019年時点でのアレストビッチ氏の発言です。ロシア軍が国境を超えてウクライナに侵攻したのは2022年2月24日ですので、その3年も前に ほぼ正確にロシア軍の軍事侵攻を予想して、というか、むしろ期待しています。

1:30ほどの短いビデオですので、まだご覧になられていない方はご覧下さい。

 

 

 

そして、アレストビッチ氏が大統領補佐官が辞任したのは 昨年の1月「市民のアパートに着弾したミサイルはロシアのミサイルではなく、ウクライナの防空ミサイルが当たったもの」という本当のことを発言してしまったので、大きく非難されて事実上の解任に近い辞任になりました。

 

 

 

 

辞任の直前には ゼレンスキー政権が行っているロシア語話者への弾圧について、愚かだ、馬鹿だ 等と厳しく非難もしていました。(ちなみに、ゼレンスキー大統領自身も大統領選に立候補してからウクライナ語を勉強した という方で、元々ロシア語話者ですし、アレストビッチ氏のビデオもYoutubeでは ウクライナ語ではなく「ロシア語」だと認識されているロシア語話者です。)

アレストビッチ氏がロシア語話者への弾圧政策を厳しく非難している内容は 詳しくは下の過去記事をご覧ください。

 

 

 

そして辞任後、しばらくはウクライナ国内に留まって、チャンネル登録者160万人以上のYoutuberとなって、戦況やウクライナの政治に関する色々な投稿をしていました。

 

昨年の1月時点ですでに「ウクライナの勝利はありそうにない」という発言を行っています。

 

 

アレストビッチ氏「私は今、オフィシャルの人間ではないので、自分の言いたいことが言えます。もし皆が『私達には戦争での勝利が保証されている』と考えるのなら、それはありそうにないことです。」

 

そして、アレストビッチ氏は だんだんとゼレンスキー大統領への非難を強めていくのですが、一昨年3月下旬にロシアとウクライナの間で和平交渉が妥結寸前までいったことを昨年11月に告白していたウクライナ代表団の一員だったデビッド・アラハムア氏の「ロシアが求めていたのはウクライナの中立性だけだった」という爆弾発言について、下のように反応しています。

 

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ゼレンスキーの元顧問で交渉グループメンバーのアレストビッチ氏:

ロシア側はまだ和平への取り組みを主張していた。そしてイスタンブールの和平への取り組みは非常に優れており、途中の文書だった・・・今ならおそらく、20万~30万人が生きていたはずだ。そうすればウクライナの半分は破壊されたり地雷が撒かれたりすることは無かっただろう・・・彼らはクリミアに関する政治的な議論に同意した。我々は譲歩したが、その譲歩の量は彼らのほうが大きかった。こんなことは二度と起こらない。起こらないのだ。彼らは強く強く押してくるだろう。

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昨年11月にはゼレンスキー大統領との対立が噂されているウクライナ軍総司令官のザルジニー氏の側近が手榴弾で殺害されるという事件がおきましたが、その際には

アレストビッチ氏は下のようにゼレンスキー大統領に警告しています。

 

 

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もう残された選択肢は無いだろう。

最後のチャンスです。

そして最後の間違いをしないで下さい。

ザルジニーには触れないで下さい。

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そして、ついにクーデターを示唆するような発言まで年末には出てきました。

 

 

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私はゼレンスキーに干渉しないと約束した。しかし、最近の彼の行動は論理に反しています。私にはウクライナの地での流血を止める計画がある。私のゴールは大統領が現在行っているように、戦争で金儲けをすることではない。

私達は必ず成功します。私はウクライナ軍の影響力のある将軍たちから支援を受けました。

小さなネタバレ:2024年の初めに、ヴォロディミル・アレクサンドロヴィッチ(ゼレンスキー)が本当は何者なのか、あなた方の目を開かせる情報爆弾を提供します。

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そして、面白いことに、「我々は間違ったサイド(NATO側)を選んでしまった。ウクライナはロシアと同じ陣営につくべきだったのであり、戦争を煽ったNATO側を ロシアと協力して訴えたほうがよい」というような発言もありました。

 

これにはロシア政府側も困惑しているようです。ロシアの通信社RTは下のような記事を出しています。(タイトルとサブタイトルだけで内容が分かりますので、記事の詳細まではご紹介しません。ご興味がある方は直接リンク先でご確認下さい)

 

Zelensky's former top adviser now wants Kiev to join up with Russia against the West – what exactly is going on?

(ゼレンスキーの前補佐官、今はキエフ(ウクライナ政府)がロシアと連携して西側に対峙することを望んでいるが、一体何が起こっているのだろうか?)

オレクシー・アレストビッチの最新の考えは、交戦中の両国が米国主導のブロックを一緒に訴訟すべきだというものだ

 

そして、アレストビッチ氏の最近の発言は ウクライナのEUとNATOへの加盟への発言です。

最近EUからウクライナは「加盟国候補」になった とアナウンスされてゼレンスキー大統領はそれに対して「我々の政治的勝利だ!」と喜んでいましたが、あくまで”候補”ですので、トルコは2003年頃からずっと加盟国候補のままで 事実上、20年以上EUに加盟を拒否されていることを考えれば、「加盟国候補」等、何の意味もありません。

 

これに対してアレストビッチも冷淡なコメントをしています。

Ukraine not welcome in NATO and EU – former Zelensky adviser

(ウクライナはNATOとEUには歓迎されていないーゼレンスキーの前補佐官)

 

(和訳開始)

 

ウクライナはNATOとEUには歓迎されていないーゼレンスキーの前補佐官

国は「現実を認識」し、独自の方向に発展し始めるべきだとオレクシー・アレストビッチは主張

キエフは「自らに屈辱を与えるのをやめ」 、すぐにEUとNATOに加盟するという「幻想」を終わらせるべきだとアレクセイ・アレストヴィッチは述べた。

ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の元側近は金曜日、ジャーナリストのユリア・ラティニナ氏との共同放送でこの発言を行い、その中でウクライナの加盟交渉を開始するという12月中旬のEU理事会の決定についてコメントした。

「我々がどれほどNATOやEUに加盟したいと思っても、我々はそこでは歓迎されていない」と彼は語った。

アレストビッチ氏は、ウクライナがNATOに加盟する「可能性」さえも代償として「ロシアとの大戦争」が始まると述べ、同様のことが他の西側諸国にも当てはまると付け加えた。西側諸国は「この代償を支払う準備ができていない」と彼は言う。

ウクライナの「大きな労働組合に参加する」という目標は「実現不可能」であり、この状況から抜け出す唯一の方法は「自らに屈辱を与えるのをやめる」ことであり、外交・国内政策の問題は「ブリュッセル(EUの本部)やワシントン、モスクワではなく、キエフで処理されることになる」 」とアレストビッチは語った。

したがって、キエフは1991年の国境を取り戻しEUとNATOに加盟するという「幻想」を追い求めるのではなく、「現実を認識」し、独自の方向に発展し始めるべきだと同氏は主張した。同氏はまた、これらの組合に加盟していないが「非常にうまくやっている」国の例として、アゼルバイジャン、イスラエル、韓国を挙げた。

ウクライナのEU加盟に関する正式な交渉開始は12月15日、EU加盟27カ国のうち26カ国によって決定された。キエフのEU加盟の主な反対者の一人であるハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、同国は「この悪い決定に参加したくない」と述べ、投票が行われると退席した。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は2022年9月、自国のNATO加盟申請を加速させていると発表し、「事実上、我々はすでにNATO加盟を果たしている」とし、この申請は「法定承認とするため」に行われたと主張した。

しかし、ジョー・バイデン米国大統領は以前、この考えに冷や水を浴びせたことがあるが、2023年7月にCNNに、加盟申請を検討する前にキエフとモスクワの間の敵対関係を終わらせる必要があると語った。同年11月、ゼレンスキー大統領は、ウクライナがNATOに加盟するかどうかは分からないと認めた。

 

(和訳終了)

 

以上、アレストビッチ氏の発言の数々を取り上げましたが、面白いのは やはり彼の見事なまでの手のひら返しです。

最近の親露的な発言で、アレストビッチ氏の背後にロシアがいるのでは?と疑われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は その可能性は低いと思っています。

 

彼はウクライナからは逮捕状が出ているのでニューヨークにいるようですし、ロシアの通信社RTの報道を見ると、上のリンクでご紹介した、「ゼレンスキーの前補佐官、今はキエフ(ウクライナ政府)がロシアと連携して西側に対峙することを望んでいるが、一体何が起こっているのだろうか?」という論説記事では彼の大統領補佐官時代との発言の豹変ぶりに明らかに困惑しているようですし、アレストビッチ氏のことsmart but psychopathically empathy-less conman(賢いが、精神異常的で共感力のない詐欺師)だと評しているからです。

 

私も アレストビッチ氏のこの変わり身の早さは何なのだろうと思いますが、ウクライナ国内では少なくとも影響力のある人ですし、ロシア側、ウクライナ側に関わらず、このウクライナ戦争の情報を追いかけている人からも 常に発言をチェックされている人のうちのひとりだと思います。

 

彼の年末の発言によれば、3ヶ月以内にウクライナでは大きな動き(クーデターを示唆?)が起こるし、ゼレンスキー大統領が本当は何者であるかの爆弾情報も投下すると言っています。

 

ですから、彼の予告通りだとすれば、暖かくなる春までに”何か”大きなことが起こると思います。