「保守」を自称して日本のTV等に出てくる政治家や櫻井よしこ氏等の評論家のほとんどは 私から見たら”親米保守”というよりも、「米隷属保守」と呼んだほうがよい位、ただ対米追従を主張している人たちです。

彼らの主張は防衛費を大幅に増やして、その増やした防衛費で米国製の兵器をたくさん買って、ロシアと中国、北朝鮮の三国に対峙し、願わくばアメリカの核を「シェアリング」して 日本がアメリカの「核の傘」で守ってもらうことを主張しています。

 

しかし「核シェアリング」は 核のボタンを押す権限は与えられず、あくまでも権限はアメリカが持っているので、日本が中国やロシア、北朝鮮から仮に核攻撃されたにしても核保有国からすぐに反撃されるリスクを犯してまで日本の防衛のためにアメリカが核のボタンを押すとはまず考えられないので、事実上意味がないにも関わらずです。

 

最近立ち上がった作家の百田尚樹氏の新党「日本保守党」にしても そうですが、「価値観外交」等と言っていて、「価値観外交」というのは まさにアメリカの現バイデン政権のようなネオコンに完全に牛耳られて世界のあちこちで戦争をしてきた政権が言っている"Rules-Based International Order" (ルールに基づく国際秩序)と同じ意味なのです。

 

はっきり言ってアメリカが言っているような、その時々によって都合よく変わる「民主主義」のイデオロギーを守るため(ウクライナは民主主義からは程遠いにもかかわらず)とか、「同じ価値観」とやらを共有する国と仲良くしてその他の国を敵対視する という「価値観外交」は 実に下らない論理だと私は思います。

 

大事なのはイデオロギー等の「価値観共有」ではなく、あくまで「日本の国益」なのであって、その点では このウクライナでの戦争で あくまで国益第一の見事な外交をしたインドと、国益を全く考えなかった日本が実に対照的でした。

 

インドは割安価格でロシアから仕入れた原油を精製してEUに転売して大儲けし、一方、対米追従しか能がない日本は 言われるがままロシアに制裁し、結果的にトヨタやユニクロ等、いくつかの企業がロシア事業を撤退や凍結をして損をしたり、北極海でのガス事業を凍結せざるを得なかった三井物産のように、政治が経済の足をモロに引っ張ってしまいました。

 

「米隷属保守」の人たちの主張を TVやネットの動画を見る限り、彼らは 感情論で「ウクライナに侵攻したロシアはけしからん。」「ウクライナには人道援助だけでなく兵器支援も積極的にすべきだ」とか、「ハマスはテロリスト。イスラエルは自国を防衛する権利がある。」等と主張しています。

 

彼らはロシアについては 「日本が降伏した後に北方領土に侵攻したりシベリア抑留は許せない」と、言っていますが、2度の原爆投下や日本の都市への大空襲を行ったアメリカについては 彼らがロシアに対して非難しているのと同じくらい、非難しているでしょうか? 全くそうではありません。

 

アメリカが原子爆弾を2発も日本に落としたり東京大空襲で一晩で10万人の民間人を殺したりしたことへの謝罪を一切していないにも関わらず、また、米軍基地が日本にあって未だに占領されていることには何も言わず、ソ連をロシアと同一視して、ロシアが許せない という主張しかほとんどしないことに、私はとても違和感を感じています。

 

なぜなら、ソ連による北方領土侵攻は 1945年2月の米英露が行った「ヤルタ会談」の時にソ連の対日参戦が決定していたからです。ですからソ連は 米英の了解の下で対日参戦してきました。

 

日本とソ連が結んでいた「日ソ中立条約」を破ったのだから、けしからん!と従米保守の人たちは言いますが、中立条約を破る というのは ソ連もドイツに「独ソ不可侵条約」を破られていますし、戦争中はお互いに侵攻しないという条約を結んでも、破られることは頻繁に起きてきたわけで、そのようなことも想定していなかった日本政府の甘さも反省すべき点があると思います。

 

また、近現代史研究家の林千勝氏によれば、ソ連による北方領土侵攻は 事実上、米ソの共同作戦となっていました。

アラスカで訓練も行われていて、船でソ連兵を送り届けたのは米軍でした。

 

これは非常に興味深い話ですので、林千勝氏のビデオから文字起こしでご紹介します。(下のビデオの46:00位からの文字起こしです。)

 

 

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ちょっと関連した話ししたいんですけども いいですか。 8月15日の一応終戦の日となってますが、その後なんですね北方領土、占拠されたの。 

 

千島列島に侵攻してきたのですね。これもあの一部の方はご存知なんですが、広く国民 に知らされないようにしてるんですけども 北方領土を侵攻作戦、千島列島侵攻、

北方領土侵攻作戦はソ連単独作戦じゃないん ですね。

 

でこれもあの、画像地図1枚だけ置いたんですけども これアラスカの基地がありましたね。

 


青い点がありますけども、ここで アメリカ軍がソ連が北方領土に侵攻できるような準備を整えて、ソ連の将兵を訓練し、ね、で、全部艦船も兵器も貸与して、そしてここを出発点にそれを経由してますけども、千島列島、北方領土に侵攻させたと。

 

でそれが ですね、アメリカにとっては非常にあのソ連と和気藹々ね、これ画像をソ連の将校が ケーキ切ってる画像もありますけどね(上の写真の下段の左)、で周りに見つめてるのはアメリカの将校ですけどね、で右上が広大なこの基地の写真ですが、アメリカは誇ってるんです。

 

ソ連と非常に連携し、うまく北方領土、千島を占拠させることができた と。

占領させること ができたと、で歴史的に 軍の歴史で言えば、非常に画期的なことだと
いうことで、これがですねアメリカの アメリカ海軍のですね、ネイバル ヒストリカルセンターによる資料なんです。


けども、ここにですね、「アメリカ軍の誇る北方領土侵攻作戦」っていう記録があるんですね。(下の写真は記録を示す林千勝氏)

 

 

で、実際に上陸したのはソ連兵ですけど 装備品も船も全部アメリカと。

 

これがあの北方領土問題の本質ですから。で、日本の外務省も多分安倍さんも知ってるしプーチンも知ってるだろうと思いますし、アメリカの指導部は全部知ってると思いますが 知らないの日本国民という状況ですね。

 

だから原爆の話もそう ですが北方領土の話も 何が言いたいかというと、8月15日に

ちなんで とにかく言語空間ね、あるいは 安保・安全保障問題も社会政策にしても、経済政策にしても、実質占領下にあるという認識を持つ ぐらいを出発点にしなきゃいけないんじゃないかなと日本を取り戻すにはね。

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林千勝氏のビデオを見るまで、私も ソ連による北方領土侵攻が 事実上、米ソ合同作戦だった とは知りませんでした。

これは「対米隷属」保守の方にとっては 非常に都合が悪い事実なのではないでしょうか。

 

そして、「ウクライナ頑張れ。ロシアは北方領土を返せ。」と等と言って在日ウクライナ人の方を頻繁に番組にゲスト出演させている日本保守党の百田氏や有本氏に言いたいのは 北方領土の住民の40%はウクライナからの移住者で、ロシア人よりも多い ということを歴史家で評論家もある八幡和郎氏はこのビデオの中でおっしゃっていますが、それが事実なら、旧ソ連が行ったことを ロシア人だけが悪くてウクライナ人は悪くないとみなすのは 私にとっては違和感しかありません。

 

ロシア帝国を倒したレーニンはユダヤ人、ソビエト政権を樹立したボリシェビキのほとんどもユダヤ人、スターリンはグルジア人、ウクライナに「プレゼント」だと言ってクリミアを移管したフルシチョフはウクライナ人という事実を見れば分かる通り、ソ連は明らかに、ロシア人だけが支配していた国というわけではありませんでした。

 

私のブログをご覧になられた多くの方が 私は「親露派」なのだろう とか、ロシアと何か関わりがあるのだろう と思われるかもしれませんが、私は まったく親露派でもないですし、ロシアには行ったこともなく、友人もひとりもいません。

 

ロシア人とウクライナ人、「キエフ大公国」をルーツとするほぼ同じ民族同士で なぜ争うことになってしまったのか ということを調べていくうちに、2014年のクーデター以降のウクライナ政府とそのウクライナを応援しているNATOやG7をはじめとした西側連合に対しては 非難されて然るべき事実がたくさんあることが分かったので、今のスタンスになっただけです。 

 

アメリカとロシア、どちらが信用できる国か というと、どちらも100%信用できる国ではないし、外交はあくまでも自国の国益第一で行うべきもので、「思いやり」とか、相手国を100%信用してしまっては 実質、売●婦と同じだった慰安婦問題のように、謝罪と賠償を半永久的に求められ続けて自国の国益を害することになり、後世にまでツケを残すことになってしまいます。

 

私個人的には アメリカが2度の原爆投下や東京大空襲のことを 一言も謝ったことがないことを考えれば、アメリカに対して基地や思いやり予算を提供して兵器も言われるがままに購入して、アメリカにただ隷属することほど馬鹿なことはない と思っています。

ソ連によるシベリア抑留も酷い話ですが、ロシアはエリツィン大統領時代にシベリア抑留については謝罪しました。

 

北方領土も 1956年の「日ソ共同宣言」に基づいて、まずは2島返還ということで

お金が欲しくて仕方がなかったエリツィン大統領が歯舞、色丹の2島を事実上、日本に売り渡そうという話し合いをしていたわけですが、「あくまでも4島一括返還」だと一部の政治家に主張させることによってそれを止めさせたのは 日露の接近に危機感を感じたアメリカです。

 

ですから、北方領土交渉がストップしてしまったのも アメリカとアメリカに隷属する日本政府のだらしなさに原因があると言ってもよいと思います。