イスラエルとパレスチナのハマスの戦況の状況ですが、10/7から戦闘が始まり、10/8からはイスラエル空軍によるガザ市内への120回以上に渡る空爆、ガザの外でもいくつかの場所で戦闘が繰り広げられ、このブログの下書きを書いている10/9時点で、双方で合計1,000名以上の死者が出ています。

 

10/8からはレバノンの武装組織ヒズボラもイスラエルの軍事拠点にミサイルを撃ち込んでハマスを支援しています。イランはまだ表立って兵器や兵士を送り込むようなことはしていませんが、ハマスの攻撃、パレスチナ人の武装蜂起を称賛するようなコメントを出していますが、直接の関与はイラン政府が否定しています。

 

軍隊でもなんでもない単なる武装組織で兵器を自前で作っているわけでもないハマスが ガザ地区の外に出て戦闘を始めた10/7初日の作戦が 予想以上にうまくいったので、当初からネットでは噂されていたことですが、これは「偽旗作戦」ではないか? という疑惑があり、その可能性について本日は記事を書きたいと思います。

 

まず、ハマスは10/7に5,000発(イスラエル側の発表では2,000発)のロケット弾を撃ち込んで、イスラエルが誇る防空システムの「アイアンドーム」を過負荷によって無力化しました。自前の兵器製造工場を持っているわけでもなく、外から調達しているハマスが多量のロケット弾をどこかからガザへ持ち込み、5,000発も蓄えていた ということに、イスラエル政府や諜報機関は何も気づかなかったのでしょうか? エジプトとつながっている地下トンネルはあると言われていますが、アパルトヘイトのように高い壁に囲まれて移動の自由さえないガザの中で それが出来ている というのが不思議です。

 

そして、一部のハマスの"空軍"戦闘員は ガザから距離の離れたイスラエルの基地に侵入するのにパラグライダーを使用しています。イスラエル軍は パラグライダーですらも撃ち落とせないくらい無能で、誰も空を監視していなかったのでしょうか?(下のビデオのタイトル:ハマスの映像には、部隊がパラグライダーを使ってイスラエル軍基地を襲撃する様子が映っている)

 

 

 

 

この戦闘に参加しているハマスの戦闘員はわずか1,000人と言われています。

ハマスは 230万人ものパレスチナ人が暮らすガザ地区で、民間人のエリアと区別がつかない場所に拠点を持っているため、

イスラエルが「ハマス壊滅の為」という名目でガザを空爆すると、ハマス戦闘員よりも 民間人のほうが 死ぬ人数が 単純計算すれば、2300倍も多くなります。実際にイスラエル軍が10/7以降、1時間あたり100回以上もガザへ空爆を行っていますが、死亡しているのはほとんど民間人です。

 

わずか1,000人のハマスを壊滅させるため、イスラエルは 30万人の予備役を招集してガザへの地上戦を開始する予定です。

地上戦になればイスラエル陸軍にもかなりの人的被害が出ることが予想されますが、ますますガザにいるパレスチナ人の民間人を殺すことになります。パレスチナ人が居住を許されている狭いエリアのガザからまで、彼らを追い出す、もしくはパレスチナ人を殲滅しようとする「口実」の為にハマスの攻撃が利用されたのではないか という疑いがあります。

というのは イスラエルのネタニヤフ首相は ハマスの攻撃をイスラエルにとっての「真珠湾」や「9.11」に例えました。

どちらも戦争をやるための口実に使われた軍事挑発ですから、ハマスの今回の攻撃が それと似た「偽旗作戦」である疑いが出てきている ということです。

 

そして忘れてはならないのは ハマスは 元々対PLO(パレスチナ解放機構)のためにイスラエルのモサドが作った組織 というのは先日10/9のブログで書きました。

 

その10/9のブログ内でタイトルとリンク先だけご紹介した記事の内容を今回あらためてご紹介します。

記事は イギリス発の独立メディアで、The Intercept からです。このサイトは先日もパキスタンのイムラン・カーン首相が解任されたのはウクライナ戦争へのスタンスを巡るアメリカの圧力によるものだった というスクープ記事を発表している優れたサイトです。

 

BLOWBACK: HOW ISRAEL WENT FROM HELPING CREATE HAMAS TO BOMBING IT

 

(和訳開始)

 

ブローバック:イスラエルはいかにしてハマス創設の支援から空爆に至ったか

 

 

ハマスはイスラエルを破壊したいんですよね?しかし、メフディ・ハサンがブローバックに関する新しいビデオで示しているように、イスラエル当局は彼らがグループの設立に貢献したことを認めている。

ハマスについて何を知っていますか?

イスラエルを滅ぼすことを誓っているということか?それは米国と欧州連合の両方によって禁止されているテロ集団だということか?ガザを鉄拳で支配しているということか?ロケット弾、迫撃砲、そして自爆攻撃で何百人もの罪のないイスラエル人を殺したということか?

しかし、ハマス( 「イスラム抵抗運動」のアラビア語の頭字語)は、ユダヤ人国家がなかったらおそらく今日存在していなかったであろうこともご存知でしたか?1970年代後半にイスラエル人がパレスチナイスラム過激派の集団を世界で最も悪名高い過激派組織の一つに変えるのに貢献したということは?そのハマスが吹き飛ばされるのか?

これは陰謀論ではありません。准将のような元イスラエル当局者の話を聞いてください。1980年代初頭にガザのイスラエル軍総督を務めたイツハク・セゲブ将軍。セゲフ氏は後にニューヨーク・タイムズの記者に対し、自分はパレスチナ解放機構の世俗主義者や左派、そしてヤセル・アラファト氏率いるファタハ党(アラファト氏自身はハマスを「反逆者」と呼んでいた)に対する「対抗勢力」としのイスラエルの創造物として、パレスチナのイスラム主義運動への資金提供に協力したと語った。」)(訳者注:故ヤセル・アラファト氏はパレスチナ初代大統領でPLOとファタハの設立者です。)

「イスラエル政府は私に予算を与えてくれた」と退役准将は告白した、「軍事政権はモスクに予算を与えている」

「大変残念なことに、ハマスはイスラエルが作ったものです」と、20年以上ガザで働いていた元イスラエル宗教担当職員アヴナー・コーエン氏は2009年にウォール・ストリート・ジャーナルに語った。1980年代半ばには、コーエン氏は上司への公式報告書で、こうも書いていた。パレスチナの世俗主義者に対してパレスチナのイスラム主義者を支援することで、占領地域で分断統治をしないよう警告した。「この現実が目の前に現れる前に、この怪物を打ち砕く方法を見つけることに努力を集中することを提案します」と彼は書いた。

彼らは彼の言うことを聞きませんでした。そして、ハマスは、ブローバックに関する私の短編映画シリーズ「ザ・インターセプト」の第5回で説明したように、その結​​果でした。明確にしておきたい。第一に、イスラエル人は、ハマスとその先駆者であるムスリム同胞団の形で、パレスチナ政治的イスラムの戦闘的系統の構築を支援した。その後、イスラエル人は方針を転換し、爆撃し、包囲し、存在しないように封鎖しようとした。

過去10年だけでも、イスラエルは2009年、2012年、2014年の3回、ハマスと戦争を起こし、その過程でガザ地区のパレスチナ民間人約​​2,500人を殺害した。一方、ハマスはパレスチナの非宗教的な武装組織よりもはるかに多くのイスラエル民間人を殺害した。これはブローバックによる人的コストである。

「一連の出来事を振り返ると、我々は間違いを犯したと思う」と、1980年代にガザに拠点を置いていたイスラエル軍の元アラブ問題専門家デイビッド・ハッチャム氏は後に語った。「しかし当時は、起こり得る結果について誰も考えていませんでした。」

彼らは決してそんなことはしませんよね?

 

(和訳終了)

 

 

上の記事を読めば分かる通り、イスラエル政府当局者自らが ハマスの創設を認めているのです。陰謀論でも何でもありません。

そして、ハマスが1人でもユダヤ人を殺せば、イスラエルがガザを空爆してその何十倍もパレスチナの民間人を殺すのを正当化してきたのです。

 

今回の10/7から始まった戦闘では ハマスが殺したユダヤ人の人数も多いし、人質に取るなどの大規模なものになったので、ガザへの空爆に対して「イスラエルはいくら何でもやりすぎでは・・・」と今まで同情的だった人まで、イスラエルのガザへの無差別空爆を支持するような世論形成が出来てしまいました。それが彼らの狙いかもしれません。

 

単にイスラエル政府とモサドが無能すぎて ハマスが大量にロケット弾をストックしたりパラグライダーで海岸で戦闘員の訓練をしているのに気づかなかった という可能性も もちろんありますが、それは 考えにくいことかなと私は思います。

 

イギリスの新聞 daily mail は ハマスの"空軍"戦闘員がモーター付きのパラグライダーを使って予行演習をしている様子をビデオ付きで10/9に記事にしています。速くは飛べないモーター付きのパラグライダーをなぜイスラエル軍が撃ち落とせなかったのか、不思議です。

 

How Hamas trained to slaughter from the skies: Terror group shows how it rehearsed deadly Israel paraglider attack, with mock-up buildings marked with Jewish Star of David

(どのようにハマスは空からの虐殺を訓練したのか:テロ組織は、ユダヤ人のダビデの星が描かれた模擬建物を使って、致命的なイスラエルのパラグライダー攻撃をどのようにリハーサルしたかを示している)

 

そして、イスラエルが ハマスの攻撃を事前に、少なくとも10/5には予期していたに違いないと思われる事件があり、それは10/5に起こったユダヤ人入植者800人がイスラエル軍の保護下で東エルサレムにあるアルアクサ・モスクを襲撃した事件です。

 

この事件のすぐ後に、ハマスはこの攻撃は「レッドライン」である と警告していました。

トルコのエルドアン大統領でさえ、「レッドライン」の挑発である と言いました。

 

Hamas warns Israeli regime not to cross al-Aqsa redline

(ハマス、イスラエルの政権がアルアクサの”レッドライン”を超えないよう警告)

"Al-Aqsa Mosque Türkiye's red line, Israel must stop provocations"

(アルアクサ・モスクはトルコの”レッドライン”、イスラエルは挑発をやめなければならない)

 

その超えてはならない「レッドライン」を超えてパレスチナ人への挑発を行ったのに ハマスが仕返しをせず、アパルトヘイトの壁に囲まれたガザからは何もできない と鷹をくくっていたのでしたら、世界一有能との評判もあった諜報機関のモサドやイスラエル政府の能力には大いに疑問符がつきますが、これも非常に奇妙な点です。

 

それと、「レッドライン」であるモスクへの攻撃に加え、イスラエル政府はエジプト政府から、ハマスによる攻撃の可能性が高いと10日前に警告を受けていました。

 

Egypt Claims It Warned Israel Of Upcoming Attack

(エジプトはイスラエルに来たる攻撃を警告したと主張している)

 

(以下、記事の和訳)

 

これでついにネタニヤフ首相の支配は終わるのか?

エジプトはイスラエルがハマスの大規模攻撃を計画しているとの警告を無視したと発表 - Yedioth Ahranoth - 2023年10月9日

エジプトは、テロリストが国境を突破し、軍事基地やコミュニティを掌握し、700人以上を殺害し、女性や子供を含む150人を捕虜にする10日前に、差し迫ったハマスの攻撃をイスラエルに警告した。
「われわれは、事態の爆発が近いうちに、それも非常に近いうちに、しかも大規模なものになると警告した。しかし、彼らはそのような警告を過小評価していた」と、機密情報についての話し合いの内容をメディアと話す権限がないため匿名を条件に話した当局者は、AP通信に語った。


エジプト政府関係者によれば、イスラエルはヨルダン川西岸地区の緊張に集中しており、度重なる警告にもかかわらず、ガザを支配するテロ集団を脅威とは考えていなかったという。

そう願いたい。しかし、この話は確実に否定されるだろう。そして、戦争のためにビビ(ネタニヤフ首相)はまだ議席を維持するかもしれない。

 

(和訳終了)

 

 

エジプトの10日前の警告を無視し、10/5のモスクの襲撃の後のハマスの「レッドライン」超えの警告も無視し、宗教上の休息日だと言ってのんびり休んでいる間に、ハマスは 地上からはガザのフェンスを破り、空からはパラグライダーで、海からはモーターボートを使って数カ所の基地を攻撃されて・・・これがまともに機能している軍とは思えませんね。

ハマスはモサドの創作物ではありますが、今でも関係が続いているかどうかは私には分かりません。

しかし、初日のイスラエル軍の弱さや怠慢ぶり、エジプト政府が事前に警告していたことを見ると、イスラエル政府は ハマスの攻撃を早くに知っていて「わざと」大きな被害が出るまで放置した のではないか という可能性さえあるのではないでしょうか。

 

なお、イスラエルは230万人のパレスチナ人が暮らすガザ地区に対して、電気の供給をストップしていますが、さらに水と食料の供給までストップすると発表しています。

これは完全に包囲された野外刑務所のような状況のガザ地区のパレスチナ人民間人に対する人道上の犯罪行為であって、イスラエルのユダヤ人がパレスチナ人に対して「民族浄化」を行おうとしているとイスラエルが本来非難されなければならないことですが、EU等はイスラエルと連帯するために、パレスチナへの人道援助を一切停止すると言っています。

 

完全に包囲されたガザ:イスラエルはハマスの攻撃の後、水、電気、食料の供給を遮断

土曜日の早朝に起きた700人以上のイスラエルの民間人を殺害、数十人を誘拐し2,100人以上に怪我をさせたハマスによるテロ攻撃に続いて、イスラエルの当局者は月曜日、完全な包囲とガザへの水の供給の即時停止を命令した。

(写真は月曜日の早朝にガザ市内のShati避難民キャンプに対するイスラエルの空爆によって破壊された西のモスクの瓦礫を調べるパレスチナ人たち。)

 

予想できたハマスの攻撃に対するエジプト政府の警告もわざと?無視し、2日目からはガザに対し1時間に100回以上の空爆、1000人程度のハマス戦闘員に対して30万人のイスラエル軍予備役の動員、地上軍も派遣して世界一人口密度の高いガザで大規模な「テロ掃討作戦」を行う と言っているのは ガザの200万人以上のパレスチナ人を抹殺する計画である可能性があると イスラエルに批判的な人たちからは受け止められても仕方がないような状況なので、ネットではそのようなことがささやかれている ということです。

 

もう1つ、これが偽旗作戦である疑いがあるのが 西側メディアやネオコンが 今回のハマスのイスラエルへの攻撃にはイランが関わっている と非難し始めたことです。

 

 

(上の写真:「イランは数週間にわたりイスラエルへの攻撃計画を支援した」というウォールストリート・ジャーナルの記事)

 

 ↓

(米ネオコンのリンゼー・グラハム上院議員の10/8のTweet)

ヒズボラや他のイランの代理勢力による攻撃はイスラエルの防衛システムに壊滅的な打撃を与えるだろう。もしそのような攻撃が起きた場合、イスラエルと米国はイラン経済の生命線である石油精製施設とインフラを攻撃すべきである。

 

もしも次の戦争のターゲットがハマスの次はイラン・・・ということになれば、これは9.11の後にアフガニスタンやイラクが攻撃されたのと同じ展開になりますが、そうなるかどうかは 今後の展開を待ちたいと思います。

 

もしもイランで戦争 ということになれば、ホルムズ海峡の閉鎖によって石油価格が上昇し、中東からの石油に過度に依存しすぎている日本には 壊滅的な影響となるので、そうならないことを私は願いますが・・・。(中東への過度の依存を下げるためにも、ロシアとの関係維持が重要だったのですが、それをぶち壊しにしているのが岸田政権です。)

 

今回の戦争が起こる直前のイスラエルの国内情勢に目を向ければ、ネタニヤフ首相が強引に可決した司法改革はイスラエルでは不人気で、退任を求める大規模なデモが長期間続いていましたが、今回ネタニヤフ首相はハマスの奇襲攻撃を「真珠湾」や「9.11」に例えました。まさに戦争は国のリーダーが支持率を上げるのに最適な出来事で、ゼレンスキー大統領の支持率が昨年のロシアの侵攻直前の30%台から、侵攻直後は一気に90%に上がったことも良い例でしょう。

 

 

 

そして、イスラエルでの戦争に注目が集まる一方で、今後ウクライナでの戦争への注目は薄れていくと思います。

アメリカもNATOもウクライナで明らかに負けている上に、送る兵器も資金も尽きてきているので、注目がウクライナ→イスラエルに移るのは彼らにとって都合が良いことなのかもしれません。下のTweetが秀逸です。