6/4から始まったウクライナの反攻作戦についてですが、私が何度かブログ記事でご紹介してきた通り、「得たものは小さく、失ったもの(マンパワー、装備)が大きすぎる」状態となっています。

 

下はトランプ政権時代の軍事顧問を務めていたダグラス・マクレガー元大佐が投稿された地図ですが、ピンクに塗られたロシアが支配下に置いているエリアの中で、緑色に塗られているエリアが ウクライナが3ヶ月にも及んだ反撃で 取り返した部分です。

(合計248.8k㎡)

 

 

そして、ネットに流出した地図によれば、NATOとウクライナ軍が半年近くに渡って計画していた当初の予定では 下の地図のように、1~2週間ほどでアゾフ海沿岸の都市にまでロシアの防御線を「突き抜ける」予定でした。

 

 

ですから、どう見ても このウクライナの反撃作戦は失敗しているわけですが、大手メディアは 小さな小さなラボティノ村からロシア軍を追い出した程度で「マリウポリ、メトリポリ」に向けて"数マイル"進んだ! と、まるで大きな前進があったかのように誤解させる報道をしています。

 

しかし、ウクライナ軍がその数マイル(実際はおよそ6.2マイル=10kmほど)進むだけで どれだけの損失が出ているか ということを考慮すれば、それは「惨劇」と呼んでよい状態になっているのです。

 

 ↓

肉挽き器:ウクライナは先週4,855人の兵士を失う。反撃が少しずつ前進した土曜日だけで785人を失った。

 

上のニュース記事の1週間で4,855人、1日で785人 というのは ウクライナ軍にとってワースト記録クラスの損失の数字を取り上げているのかもしれませんが、とウクライナ軍の損失を分析した方のブログによれば、ウクライナ軍はコンスタントに月に1万人ペースで死傷者を出している とのことです。

 

ですから、欠けていくマンパワーを補うためには毎月1万人を動員する必要があり、ついにウクライナ政府は 事実上の国民総動員令を発出しました。

それには 今まで徴兵を免除されていた学生が含まれています。

ウクライナでは今まで、学生は徴兵を免れていた為、徴兵逃れ目的でに新たに大学等に通い勉強を始めた学生が6万人もいると報じられていました。その6万人も今回動員対象になるということです。

 

 ↓

ウクライナ議会はヒョードル・ヴェニスラフスキー大統領代表から、第二学位、第三学位等を受ける男性に対する動員延期の権利の廃止を提案する法律を受け取った。

ヴェニスラフスキー自身はSMOが設立される前には25歳以上の学生が約40,000人いたと述べた。全面戦争が始まった2022年にはそのような学生は106,000人いた。今年もその数はほぼ同じで約10万人。

これは彼によると、ただ動員を避けるために60,000人が勉強を始めたことを意味する。

 

 

また、ウクライナの各企業から動員年齢対象者の名簿を出させることや、徴兵から逃れるためにEU加盟国へ逃げた、数十万人のの男性をウクライナに送り返すように要請することが決まったようです。

Military Summary チャンネルのこのビデオによれば、すでにポーランドは 賄賂を支払ってポーランドに逃げた動員年齢の男性80,000人をウクライナに送り返す とアナウンスしているようです。

 

そして、驚くべきことに、ドイツだけでも16万人もの動員対象年齢のウクライナ人男性がいるようです。

 

 ↓

戦争から逃げドイツにやってきた16万人以上の動員年齢のウクライナ人男性がウクライナに送り返されるかもしれない。ドイツのBild紙が報道

 

ポーランドに8万人、ドイツに16万人以上もの動員対象年齢の男性が 死にたくない ということで、おそらく賄賂を払って逃げているのですから、これが「EU全体」となると、30万人は軽く超えることでしょう。

 

そういえば、日本にもウクライナからの難民が少なくとも2,000人はいて、日本にいるウクライナ難民の中に徴兵年齢の若い男性が混じっているTV映像を見て、私は「すでに成人男性は出国禁止になっているはずなのに、よく出国できたな・・・」と思ったものでした。(やはり賄賂を払って出国した?) ゼレンスキー大統領は先日リトアニアで開かれたNATO首脳会議で、NATO加盟国に対して各国に脱出した成人男性をウクライナに送り返すのに協力してくれ と伝えていたようですので、そのNATO首脳会議に協力国として参加していた岸田首相に対しても同様の要請があった可能性はあります。

 

 

 ↓

キエフ(ウクライナ政府)は9月に総動員を準備している。

 

・チェルニヒフ、スーミ、ドニプロペトロフスク、オデッサ、ザポリージャ、ハリコフ、ミコラエフ州の軍事政府は将来前線に就く可能性のある従業員のリストを求める要請を企業に送った。

 

・軍事委員らはその義務を無視する者の捜索を強化するよう指示された。目標は前線にできるだけたくさんの人々を送るための迅速な募集を行うことである。

__________

 

そして、戦況では崖っぷちに追い込まれているウクライナ政府は 女性であっても容赦はしません。

女性であっても看護師、医師、薬剤師等の医療従事者は 今回動員対象になり召集令状が送られるようです。

 

そして、少年であっても16歳~18歳はすでに出国禁止になっていますので、少年兵の数も今後増えるでしょう。

 

しかし、すでに外国に逃げた男性や医療従事者の女性、少年まで、必死になってマンパワーをかき集めようとしても、高額な賄賂を支払ってまで徴兵から逃げたような方たちが ウクライナに戻って兵士になったとして、彼らはかなりモチベーションの低い状態で、そして訓練も十分にされない状態で前線へと送り出されて、宇軍総司令官のザルジニー氏ですら認めている、「10:1の火力優勢」があるロシア軍の大砲の餌食になってしまうことが明らかでしょう。

 

最後に、ウクライナがNATOの訓練に、志願兵のようではありますが、なんと71歳のおじいさんを送ったことがニュースになっていますので、その記事をご紹介します。

イギリスのメディア、ファイナンシャル・タイムズでニュースになったものをロシアのメディアRTが8/28に記事にしているものをご紹介します。

 

Kiev sends 71-year-old soldier for NATO training – FT

 

(和訳開始)

 

キエフ、71歳の兵士をNATOの訓練に送る

ヨーロッパに到着するウクライナ軍の年齢と西側兵器の使い方を学ぶ能力は「大きく異なる」と報道機関が報じた

 

フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、西側兵器の使用訓練のためにキエフからドイツに派遣されたウクライナ人新兵の1人は71歳である。

問題の高齢男性はウクライナ軍への入隊を志願していた、とイギリスの報道機関が月曜日に報じた。

ドイツ北東部のクリーツ近郊の軍事基地で働くNATO教官らはFTに対し、ウクライナ人訓練生の「途方もない意欲」に感銘を受けた一方、武器使用法を学ぶために到着する訓練生の年齢や能力は「大きく異なる」と語った。

 

ウクライナの最前線の指揮官は、優秀な兵士を海外で訓練に送るのではなく、塹壕に留めておくことを好むことが多いと教官らは不満を漏らした。

英国の国防・安全保障シンクタンク王立ユナイテッドサービス研究所(RUSI)の陸上戦研究員ニック・レイノルズ氏はFTに対し、西側諸国が提供する軍事訓練は多くの場合キエフの期待に応えていない、と語った。

 

ウクライナは軍隊が実際の戦場と同じ条件で戦車、装甲車両、大砲、無人機を使って訓練することを望んでいるが、これは参加する軍人にとっては危険でもあるとレイノルズ氏は指摘した。しかし、欧州諸国は訓練中の事故に対する寛容性が低く、このアプローチは「訓練生に対する(キエフの)要件とうまく適合しない」と同氏は説明した。

ドイツ人調教師の一人は、旧ソ連時代に軍事教育を受けており「自分たちの方が知識があると思っている」年上のウクライナ人指揮官との間に緊張感があったと報告した。

しかし、ウクライナ軍に西側装備の使い方を教える欧州計画の「一番の課題」は通訳不足だ、と多国籍EU訓練団副団長のオランダ人准将マーティン・ボン氏がFTに語った。

 

「大きな課題は、軍事または技術的な文脈で使用される単語、つまり日常生活では誰も使用しない単語の翻訳です」とボン氏は語った。

言語の問題により、現在デンマークで実施されている米国設計のF-16戦闘機を操縦するためのウクライナ人パイロットの訓練も妨げられていると伝えられている。

国防総省のサブリナ・シン報道官は先週、ウクライナ空軍兵が適切に英語を話せるようになるまでは、米国政府は欧州諸国によるキエフへのF-16の移送にゴーサインを出さないだろうと警告した。

 

ロシア政府は、米国と欧州同盟国によるウクライナへの武器供与は戦闘を長引かせるだけであり、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の直接対決のリスクを増大させるだけだと繰り返し警告してきた。ロシア当局者らによると、キエフ軍への武器供給と訓練、そして情報共有は、西側諸国がすでに事実上の紛争当事国であることを意味している。

 

(和訳終了)