6/4から東部、南部の全ての戦線に対して始まったウクライナ軍の反攻作戦で、まだ目覚ましい成果はまだ挙げられていない中、ウクライナ軍がほんの少し前進できたところが1箇所だけあり、それが南部ザポリージャ州のラボティノ村というところです。

 

下の地図で赤い印がついている地点がラボティノ村の位置です。(Googleマップからのもの)

 

 

今回ウクライナ軍によって「解放された」と華々しく西側メディアでも宣伝されたラボティノ村は 戦争前の人口わずか500人ほどの小さな村で、もちろん、そこに住んでいた住民は ウクライナ軍の反攻前からロシア側の指示で全員南部へ避難している状態でした。

 

そして、反攻作戦開始時(6/4時点)とラボティノ村が解放された と発表された8/28時点で、どのようにウクライナ軍が進軍できたか、比較できる地図を下に乗せておきます。ピンク色の部分はロシア軍の支配エリアですので、反攻作戦開始時と今とのピンク色のエリアの面積を比較してみて下さい。

 

(2023.6.4 反攻作戦開始時のラボティノ付近の地図)

 

(2023.8.28時点でのラボティノ(Rabotino)付近の地図)

 

たしかに、反攻作戦開始時と比較すると、8/28時点での地図は ピンクで塗られたロシア軍支配エリアが ラボティノ付近に凹みがありますので、ウクライナ軍が地雷原を超えて進軍したのが分かりますが、進軍できた距離で言えば、わずか10キロメートルであって、その10キロメートルを85日間かけて、4万人の兵士の死傷者と120台以上の装甲車+戦車の損失を伴いながら進軍したことになります。

 

これが「損失の割に見合う領土解放」だと言えるでしょうか? 甚だ疑問ですが、ネガティブな話題ばかりでポイティブな成果のないウクライナ軍の現在の状況の中で、なんとか宣伝できる材料を探している日本の通信社も含めた西側メディアとしては このラボティノ村の解放が ウクライナ軍が当初目標としていた ドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のメリトポリ奪還へ近づいた! とばかりに、大宣伝をしています。下はアメリカのメディア、Forbesの記事です。

 

 ↓(写真の記事の第2パラグラフ以降の和訳)

 

ここ数週間でウクライナツンと独立突撃部隊がザポリージャのラボティノを解放し、一方、ウクライナ海兵隊はラボティノから60キロ離れたモクリ・ヤリー川渓谷にあるウロジャイノエからロシア軍を排除した。

 

ウクライナ軍の2箇所の勝利により、キエフ郡はウクライナ南部の2つの主要目標に数マイル近づいた。ウクライナ人はメリトポリとマリウポリをロシアの占領から解放することを目指している。ロシア人はロシア占領のクリミアへの陸路での供給ルートを保護し続けることを目指している。

 

「数マイル近づいた」って、1マイル=1.6キロほどなので、10キロだったら6.2マイルほど近づいたのは たしかですので、言っていることは間違いではないですが、上の地図でマリウポリとメリトポリの位置をご確認いただければ分かる通り、まだ100キロ以上先にあるのです。

 

そして、ウクライナ軍が解放したと言っているラボティノ村は ロシアの第一防衛線の3マイル(4.8km)ほど手前にあります。つまり、ようやくウクライナ軍は最初の難関である地雷原をなんとか突破できたものの、次の戦車用の障害物や「竜の歯」がある第一防衛戦の5キロ近くも手前にまだいるのです。

 

戦車の進軍を物理的に食い止めるトラップ「竜の歯」とは ...

(上の写真:代表的な「竜の歯」の写真(ロシア軍が設置しているものではない))

 

下の地図の赤い線の部分がロシア軍が設置した防衛線です。そしてYou're Here という青い矢印の部分が ウクライナ軍が今回解放した と言っているラボティノ村です。

 

 

彼らの目標である、マリウポリ、メリトポリははるかに先にあって、地雷原を10キロ進むのに85日かかっていたら、マリウポリ、メリトポリに達するのは 何百日かかるのか という非現実的な話なのです。

 

ウクライナ軍は この反攻作戦の「期限」を10月までと考えていて、それは 秋になるとウクライナは雨季になり道がぬかるみ、戦車がスタックしてしまうような状況になる為、今年は反攻作戦は 実質10月までしか続けられない ということなのです。

そうなると、10月末まで残りは60日程度しかありません。

 

ですから、ウクライナ側+西側のプロパガンダメディアが言っている 「ロシア本土からクリミア半島への陸路をウクライナ軍が完全に分断する」という計画が 如何に非現実的か ということが分かると思います。

 

 

そして、最近ゼレンスキー大統領は 「我々はイスラエルのように何年でも何十年でも長期間戦う準備ができている」と言い始めました。

 

しかし、これは非常に馬鹿げた話であって、何年、いや、何十年でもロシア相手に戦争を続けるつもりだから、お金と兵器を送り続けてくれ! と、世界有数の腐敗した国の腐敗した大統領が 彼の友好国に対し、要望しているのと同じなのです。

戦争を長く続ければ続けるほど、ウクライナ軍は 国民総動員状態になってますます人口が減少していきますが、その一方で、政治家含めた一部の特権階級には援助金が入ってきて、ゼレンスキー氏をはじめ政府高官の懐も潤う ということではないでしょうか。

 

イスラエルが彼らと敵対するパレスチナ人、シリア、レバノン等と長期間戦闘しているのは イスラエル軍の軍事力がその地域においては圧倒して戦争にも連戦連勝したからであって、ウクライナとロシアの軍事力や兵力の差が ロシア軍が圧倒している状態で どうやって何年または何十年にも渡り「消耗戦」をやって戦闘状態を続けられるのか、考えれば無理だと分かりそうなものです。

 

しかし安価なドローン等を使えば、ロシア本土やロシア軍、ロシア支配地域の民間人に対して「嫌がらせ」程度の攻撃は長期間続けられるので、ゼレンスキー大統領の「イスラエルのような国を目指す」発言は そのようなことを指しているのかもしれません。しかしそのような嫌がらせやテロ行為をロシア国民に対して行っても、ロシア国民や併合された4州の親露派住民の団結力がますます増し、ウクライナの「中立化」「非軍事化」「非ナチ化」を訴えているプーチン大統領の支持率がさらに上がるだけだと私は思います。