ウクライナが6/4から反撃作戦を行なっていて、もう2週間以上が経過したわけですが、未だに目立った成果は挙げられていません。

 

そんな中、ウクライナの反撃計画の地図と思われるものがネットに流出して話題になっていますので、本日取り上げたいと思います。

 

まずはネットに流出した作戦地図と思われるものです。↓ 米国務次官のビクトリア・ヌーランド氏によれば、ウクライナの反撃計画はアメリカやNATOと共に半年近くかけて準備されてきたもの とのことですので、この作戦地図と思われるものも アメリカかNATOが作ったものの可能性が高いと思います。

 

 

これは反撃作戦が始まるずっと前から言われていたことですが、ウクライナ軍は クリミアとロシア本土の間の陸路のルートを分断することを狙っていました。ですから、クリミアとの間のケルチ大橋を昨年10月、爆発物を積んだトラックで爆破させたりしていたわけですが、上の地図の計画では ザポリージャ州のベルジャンスクはじめ、アゾフ海に面するザポリージャ州の中のいくつかの都市を突き抜け、アゾフ海にまで14日以内で達する という構想図を描いていたわけです。

 

そして、下の地図は 今の現状がどうなっているか ということを示したものです。下の地図は ウクライナでの戦況を毎日アップデートして地図で説明しているWeeb Union というチャンネルの下の動画からキャプチャさせていただきました。(6/17時点のものですが、ウクライナ側の進軍はその後もほとんど進んでいません。)

 

 

 

 

 

上の赤い部分がロシアが支配するエリアで青い部分がウクライナが支配するエリア。その境界線に小さく黄色の線で表示されているエリアは 今回の反攻作戦でウクライナが新たに確保したエリア、そしてその下、ロシアが支配するエリアの内側に赤い線がありますが、これは ロシア軍がウクライナの反攻作戦への準備として設置した「第一防御線」です。

 

上の地図には 「第一防御線」しかありませんが、アゾフ海沿岸にまでたどり着くまでには 4~5段階の「防御線」を超える必要があります。その防御線には 地雷原があったり、軍事用語で「龍の歯」と言われる戦車にとっての障害物や さらに戦車が超えることが難しいような深い溝が作ったりされていて、それは衛星からも見える状態でした。ですから、NATO側は どこに防御線があるか、十分分かっているはずです。

 

(上の写真:「龍の歯」の一例。ロシア軍が設置したものの写真ではない)

 

そして、下の地図で分かる通り、反撃開始から2週間以上がたち、ウクライナ軍は まだ「第一防御線」にも達することができず、その10キロ位手前で 多大な人的損失、装備の損失を出しながら、もがいている状態です。

 

 

そして、なぜ こんなにウクライナ軍が進軍できていないのか というと、当初 ウクライナ軍は 地雷除去車を先頭にして地雷が除去された後ろを 戦車や歩兵戦闘車が列をなして移動する という作戦を取りました。

 

それに対し、ロシア軍は 先頭の地雷除去車、もしくは2番目の戦車を狙って攻撃し、さらにウクライナ軍の戦車・歩兵戦闘車の列の後方にも 地雷をヘリコプターや大砲でばらまく作戦を取りました。

 

先頭車両がやられて動けなくなったことによってパニックになって後ろに引き返そうとしたら、そこにもロシア軍がたった今撒いたばかりの地雷があった ということで、結果的に「戦車の墓場」 と言われる状態になりました。

 

 

さらに、地雷の他に 効果的にウクライナ軍を撃破したのが 通称「アリゲーター(ワニ)」と言われるKA-52ヘリコプターとロシア製のドローン、「ランセット」です。

 

ウクライナ軍は 空から攻撃してくるロシア空軍に備えて、スティンガーミサイルのような手持ち式の対空砲をたくさん揃えてこの反撃作戦を始めたわけですが、今回の反撃作戦で、ロシア軍が多用しているKA-52ヘリコプターを ただの1機すらも撃墜する事が出来ていません。

 

KA-52ヘリコプターは8~10キロ先からミサイルを発射できる というのもありますが、敵の無線をジャミングしたり、全く違うおとりに向かってミサイルが飛んでいくような、撹乱させるフレアーを出す等、敵のミサイルを避けたりミサイルの発射を素早く探知して警告を出す等の様々な高度な機器が取り付けられています。それでも戦争開始当初、ロシア軍はヘリコプターをウクライナ軍の防空やスティンガーミサイルで何機か失いました。その教訓から、最近、さらに装置を進化させているようです。

 

詳しくは下のビデオで説明されていますので、ご興味がある方はご覧になられてください。たった1機で飛行している間に敵側から18発のミサイルを撃たれても無傷で帰ってくるほどに進化しています。

 

 

そして、もう1つは ロシアの企業ZALAが開発した攻撃ドローンの「ランセット」です。ウクライナ軍ももちろん、1日に300機もドローンを多用していますが、この「ランセット」はウクライナ軍が使用しているドローンよりも重い爆弾を搭載できるようです。ランセットが実際に欧米から提供されたM777等の榴弾砲やレーダーシステムを破壊している様子は 下のビデオ等で見ることができます。興味がある方はご覧ください。

 

 

 

そして、カミカゼ・ドローンだけでなく、カミカゼ・タンク(自爆型戦車)も最近使い始めました。これは大量の爆発物を搭載した戦車がリモートコントロールで敵の陣地に行き、そこで大爆発を起こす というものです。これはかなり破壊力のある兵器です。その映像は下のビデオで見れます。

 

 

 

 

 

この反撃作戦での ウクライナ側死傷者:ロシア死傷者は 10:1 と言われています。

圧倒的なロシア軍の火力と航空優勢に勝てるはずがないし、死にたくない と思ったウクライナ軍兵士の投降、戦闘拒否が相次いでいます。そのことは下のビデオで触れられています。(ビデオのタイトル:ウクライナ人、命を救う為に一斉降伏。2023.6.18の軍事概要と分析)