緑の党出身のドイツの外務大臣、アンナレーナ・ベアボック女史は 以前から「ウクライナを助けるためにドイツ国民は我慢すべき」とか、一国の閣僚として、とんでもない発言をしていました。今回、ドイツ製のレオパルド2戦車を提供する・しない という”劇場型"の出来レースの中で ついにロシアに対して事実上の宣戦布告をするような発言が話題になっています。

 

 

早速彼女の発言を取り上げてみたいと思います。

 

German FM Says ‘We are Fighting a War Against Russia’

 

(和訳開始)

 

ドイツの外務大臣は言う「私達はロシアに対して戦争を戦っている」

このコメントは、ウクライナでアメリカやNATOと戦っているというロシアの見解と一致している

 

ドイツのアンナレーナ・ベアボック外務大臣は、ドイツとその同盟国は「ロシアと戦争をしている」と述べ、紛争における西側の役割について珍しく率直な発言をした。

ベアボック外相は、フランスのストラスブールで開催された欧州評議会の議員総会で、戦車の派遣をためらう同国政府への批判について議論しながら、この発言を行った。

「ですから、私はすでにここ数日、ウクライナを守るためにもっとやらなければならないと言ってきた。そうだ、戦車に関してももっと頑張らなければならない」とベアボック氏は述べた。「しかし、最も重要で重要なことは、我々は一緒にそれを行うことであり、我々はロシアに対して戦争をしているのであって、お互いに対してではないのだから、ヨーロッパで非難合戦をしないことである。

 

 

 

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ドイツの外務大臣、ロシアに宣戦布告

 

ベアボック氏の発言は、紛争で戦っているのはウクライナ軍だけでなく、米国やNATOも同じだというロシアの見解に沿うものだ。ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相も最近、同様の発言をし、ウクライナは "NATOの任務 "のために「血を流している」と述べた。

NATOが戦争に直接関与しているという考えは、ロシアが報復のためにNATO諸国への攻撃を選択した場合、その口実を与えるものである。ロシアがそうしようと企んでいる兆候はないが、西側諸国はウクライナへの軍事支援を強化し続け、米国がウクライナのクリミア攻撃を支援することを議論しているため、危険なエスカレーションのリスクを負い続けているのである。

 

(和訳終了)

 

 

もはや、ウクライナの防衛大臣も、NATOの事務局長も、ドイツの外務大臣も、「NATOがウクライナを使ってロシアと戦争している」ということを 隠しもしなくなったわけです。

 

私が ドイツのレオパルト2戦車、アメリカのM1エイブラムス戦車を巡る 一連の”劇場”のような駆け引き は 完全に「出来レース」だと思う理由は 本来、製造国であるドイツの承認が必要なはずの他国からのレオパルト2戦車を提供を ドイツが承認する前から、すでにポーランド国内では ウクライナ人兵士をレオパルト2戦車を使ったトレーニングまで行っていたからです。

 

ですから、すでにレオパルト2戦車のウクライナへの供与は水面下で決定していて、それをドイツが「アメリカがM1エイブラムス戦車を送るならば・・・」という条件をつけたりして、ウクライナに「もったいぶって見せる」「恩を売る」ための演出である と、私は見ています。NATOも ウクライナが劣勢の状況なのは十分に分かっているので、負けた後に 「でも、私達はウクライナの為に、出来るだけの事はやったよ」という”言い訳”が必要なのです。

 

それと、ドイツの国内事情に関して言うと、彼らはロシアとの関係を完全に断ち切ることまではしたくないので、表面的に他のNATO諸国からの「戦車を提供せよ」という圧力に対して抵抗しているフリを ロシアに対して見せているのだと思います。

ドイツは まだロシアからのパイプラインでのガスに対して未練を持っているようで、ノルドストリームでのドイツ国内へのガス供給を担っていた、ドイツの公営企業、Uniper は ロシア側が損傷を受けたパイプラインの調査を終える前から、「爆発でダメージを受けたノルドストリームパイプラインは『1年以内に修理可能』。」と発表しているのです。

 

Russia Still Hasn’t Finished Nord Stream Review

(ロシアはノルドストリームの再調査をまだ終えていない)

 

(以下、上記記事の一部を抜粋和訳)

 

Nord Stream 1 と 2 のパイプラインは昨年 9 月に爆発で止まったが、当時はどちらのパイプラインも稼働していなかった。ロシアの国営ガス会社ガスプロムは 8 月にノルド ストリーム 1 の操業を停止し、ノルド ストリーム 2 は操業を開始しなかった。

当時、ドイツはノード ストリーム 1 と 2 が無期限に使用不能になると考えていたが、つい最近、ドイツの公益企業 Uniper は、ノルド ストリーム パイプラインは1 年以内に修理できると述べた。もちろん、これは、ドイツがロシアの天然ガスの購入を再開することに関心があることを前提としている。

 

(記事の一部抜粋の和訳終了)

 

ノルドストリーム2の2本のパイプラインのうちの1本は ほぼ無傷で、ロシアのガス企業、ガスプロムとプーチン大統領は ノルドストリーム2のその1本からならば、ドイツにガスを送ることが可能だ と元々発表していたのですが、ショルツ政権によって承認手続きが停止されたままになっています。今回上記記事のようなことを発表したドイツは 「損傷を受けたパイプラインを修理してでも将来は再開したい」という希望があるのだと思います。ドイツの産業界からもLNGでガス調達コストが上がっていることに対する強烈な不満の声がありますし、大手企業が中国へ工場を移す動きも始まっています。ですから、経済のことを考えれば、ロシアとの関係も 完全に断ち切るようなことまではしたくない というのがドイツの本音なのです。

 

さて、話を戦車のことに戻して、アメリカが送るM1エイブラムス戦車は数も31台と少なく、イギリスが送るチャレンジャー2戦車はたった14台。多くのウクライナ応援団の方は 世界で2,000台も使われていて、今回ドイツ、ポーランド、フィンランド、ノルウェー、スペイン等から200台近くが提供されるこのレオパルト2ならば、今後ウクライナに継続して大量供給ができて「ゲーム・チェンジャー」になれるのではないか・・・と期待されているかと思いますが、それは甘いと言わざるを得ません。

 

どんなに堅牢な作りの戦車であって手持ち式の対戦車砲や地雷には強い戦車であっても 大砲の砲弾が当たると破壊されます。ロシア軍とウクライナ軍では 撃っている砲弾の数が桁違いなのであって、最近はウクライナ側の砲弾不足により、ロシア軍:ウクライナ軍の砲弾数の比率が19:1にまでなっていました。(ウクライナが最も多く砲弾を使用していた時ですら、比率が8:1でした)アメリカだけでは今現在は月間15,000発の砲弾製造能力しかなく、韓国やパキスタンに砲弾製造を依頼、イスラエルにある備蓄を使用しているとのニュースがあります。それに対して、ロシア軍は十分な砲弾やミサイルの製造能力や備蓄があり、ミサイルの製造能力だけでも、年間30,000発と言われます。ミサイルに使われる半導体は「特別軍事作戦」前から、かなり備蓄をしていたようです。それに加えて、ロシアに制裁をしていないトルコから欧州産の半導体を輸入し、中国から中国産のものを輸入したりできているようです。これが砲撃やミサイルの数が 常にウクライナ軍をはるかに上回ることができる理由です。

 

もう1つ、戦車対戦車 という観点で言うと、ウクライナは2/24以前、すでに2,500台以上の旧ソ連製戦車を保有、配備して戦争の準備をしていました。それらの戦車はどこへ行ってしまったのでしょう? また、東欧諸国からも旧ソ連製の戦車を数百台送ってもらったはずですが、それらは何処に行ったのでしょう。 それらがロシア軍の砲撃やミサイルによって、大部分が破壊されているからこそ、ウクライナ軍の総司令官のザルジニー氏が戦車を新たに300台必要だ と言ったのです。今回200台近くがウクライナに行くようですから、ザルジニー氏が要求した数の2/3位近くは供給できる見通しなわけなのですが、ロシア軍の備蓄している戦車の数、10,000台と比べると、はるかに見劣りする数になります。

 

 

 

ウクライナが2500台も保有していた戦車が1年の間に このように激減しているわけですから、たった200台、しかも操縦にも不慣れなNATOの戦車がそれに追加されても どの程度の期間、それが持ちこたえることができることでしょうか?

 

ロシアは1万台以上の戦車を戦争前から備蓄しているだけでなく、月に600台ペースで古いタイプの戦車を新しいタイプへと改修しています。

 

どんなに堅牢な戦車だろうが、使う砲弾の種類が違うとか、操縦法が違うとなると、独のレオパルト、英のチャレンジャー、米のM1エイブラムスと3種類の戦車が操縦できるウクライナ兵士を養成する暇などありませんので、事実上は 数の少ない米英の戦車については 「契約者」として、米英の兵士が操縦することになるのでしょう。しかし、3種類の戦車の砲弾や部品の違いについては 砲弾の補給の上で、現場に混乱しか生じません。

 

よって、ウクライナに今後提供される戦車が 少し戦闘を長引かせる効果はあっても プーチン大統領が言うように、「結果を変える」だけの効果は全くない と私は見ています。

 

もちろん、長い1000キロを超える前線ですので、ウクライナ+NATO軍の あくまで”局地的な”防衛戦の突破ならば起こりえますが、それがロシア軍を2/24以前の位置にまで追い出すことなど、大量破壊兵器を使用しない限りにおいては 出来るはずがありません。